ふぉれすとどわあふ 三羽さんの企画
riraさんと私(歩行者b)のお話が、見事に繋がりましたので、ここからお話を続けていきます。
ではまいりましょう!
場面はどわあふの森の滝の裏の基地。そこにマサコの憧れの男がいました。
本編【966字】
「どうしたマサコ、泣いてるのか?」
「そんなわけないじゃない。滝のしぶきよ」
「ビル、いやボス。ちょっとお話があるんだけどいい?」
マサコとボスの二人は滝の表へ出た。滝へと注ぐ陽光が容赦なく砕け散る。
「ずいぶん頼もしい女性になったんだな」
「それはいいの。今、大変なことになってるの。侵略者が攻めてきて、地球上には私たちと隣の国の十数名しか残っていないの。このままほっておけば、いずれ時間が重なって、ここにも被害が及ぶ」
「どうしろってんだ。時の旅はごめんだぞ」
「どうしたの?勇敢なあなたが。このままだとここには生物は残らないのよ」
「そうなのか?詳しい話を聞かせてくれ」
マサコはこれまでの経緯をすべてボスに話した。神妙な面持ちで聞いていたボスは膝を叩いた。
「どうしたの?」
「俺にいい考えがある。それはおいおい話すとして、俺のことは前のようにビルって呼んでくれ。俺の名前はウイリアム・ドヴェルグ・ハンターってんだ。初めてだろ?本名を聞くの。命を渡してもいい奴にしか言わないんだ」
「私もビル、あなたに渡すものがある。どうしてたの?偵察からあなただけ帰って来なかった」
「俺のミスで敵陣に見つかっちまった。それで本体と離れて森に逃げ込んだんだ。奴らに囲まれたけど、森の戦いなら10人相手でも勝つ自信はある」
「やっつけたの?」
「いいや。捕まった。奴らは30人はいたかな。でも奴らは俺を見くびってた。檻を破壊して逃げてきた」
「へえ、見たかったな。そうそう、渡すものがあるの。あの時あなたが帰ってきたら渡したかったもの。その一部なんだけど」
マサコは胸のポケットから小さな袋を取り出すと、中の羊皮紙を丁寧に広げた。
「なんだ?どういう意味なんだ?」
「バレンタインは知ってるでしょ?」
「いや、知らない。何かのお祭りか?」
「えーっと、あーっと、お世話になった人にお礼をする日なのよ。チョコレートと一緒に」
「チョコレートは旨いって聞いたことがある」
「うん、美味しいと思うよ。でも私が食べちゃった。これはその片割れ。お願いだから受け取って。この十年間ずっと持ってたの」
「そんな大事なもの、俺がもらっていいのか?」
「あなたの、ビルのために作ったのよ」
静かにしていた龍がいきなり空高く舞い上がり、滝のしぶきを撒き散らした。