唐揚げ死なず 毎週ショートショートnote
老兵は死なず 【410字】
食、冬の時代がやってきた。農産物も漁獲量も異常気象のせいで劇的に変化した。ただ家畜は農産物の減少にも拘らず、影響は小さかった。
天ぷら、フライ等の揚げ物は苦難の道に足を踏み入れた。良質な油はほとんど姿を消し、揚げ物を主力にしていた洋食店、弁当屋はメニューの大幅な変更を余儀なくされた。
新橋で話を聞いた。
「この頃の食糧事情?そんなの今さらどうにもなんねぇよ。環境を破壊しちまったんだから、元には戻らねぇ」
「寂しいものですよ。串カツもポテトフライも厚揚げまでないときてる。ビールが進まない。まぁ人口が減少しててよかったと思うよ」
世の中、「煮る」が料理の主流となり、皿から色が失われた。そのことから「蒸す」が脚光を浴び、淡白な味を補う種々のソースが流行ることとなった。
「焼く」は直火焼きだけが気を吐き、なんとか持ち堪えている。
そんな折、唐揚げ協会から突如声明が発せられた。
唐揚げのレシピは守る。唐揚げは死なず、ただ消え去るのみ。
了
えーっと、あの
たらはかにさま
よろしくお願いいたします