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私たちの、長い長い夜
8/26(月)
家具を組み立てる、ということが苦手だ。
手順を守って、ひとつずつ組み立てていく工程にしびれを切らしてしまう。
せっかちは、とにかく説明書との相性が悪い。
こういう時に、家に夫がいると、あっという間に棚ができあがる。
私はクギを渡して、夫を応援して、夜ごはんにバターチキンカレーを作っただけだ。
その点、料理はいい。
ある程度、手順や分量を間違えようと、
(目分量はデフォルトだ)
たいていの料理はそう不味くならない。
和食に関しては、みりんと酒と、醤油。
たまに砂糖を入れるだけで、「和食だぞ」という味になる。
こんな風に、料理を作れるようになったことだし、
棚を作れない自分もまあいいか、という気持ちになる。
2人暮らしというものは、
自分の苦手なことを羅列してしまうような夜に、
「こんな得意もありますよ」と赤ペン先生の添削を入れるようなものだと思う。
不完全なままで生きている自分に、
丸をつけていくような日々。
そうやって丸をつけることに慣れた頃、
勢いあまって、夫の不完全な部分にまで、丸をつけてしまう日が来るといいな、と思う。
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8/27(火)
明日は、夫も私も仕事が休みだ。
華金にビールが飲みたくなるように、なんだか悪いことをしたくなって、久しぶりにラーメンを食べに行った。
私はつけ麺、夫は中華そば。あっさりめの味付けに、心がほぐれた。心もお腹もいっぱいになり、夫につけ麺をシェアする。
「みなみと来ると、替え玉ができたみたいでいいね」と夫はいう。「学生のころ、ずっとしたかったんだよなー」と付け加えて。
そう、私たちは貧乏学生だったから、替え玉どころかラーメン屋に行くことすら、ままならなかった。
100円のカップ麺を夜ご飯にするような、そんな生活をしていた。
そんな時から私は、この夫とともに生活をしてきたのだった。
ラーメンを食べた帰り道、コンビニに寄ってアイスを買った。
「ギルティにはギルティを重ねたいんだよねー」という意味不明な主張をする夫。
たしかに、こんなことが出来るのも大人になった特権だよなとも思う。
家に帰り、今更ながら「逃げ恥」を見る。
昨日組み立てた棚に置いたTVは、いつもより頼もしくみえた。
それだけでは飽き足らず、時刻は23時すぎ、私たちはカラオケに出向いた。
歩いてカラオケに行けるなんて、東京住みはいいなあと、田舎育ちの私は嬉しくなる。
「もう遅いし、1時間くらいにしとこうか」
と言って、ドリンクバーではなくワンドリンクでお酒を頼んだ。
ふむ、なんとなく大人になった気分だ。
Mrs.GREEN APPLEではじまるカラオケは、
フルリモートで働く私の、顔の表情筋をほぐした。
私はここぞとばかりに声を出した。
西野カナのEsperanza(なつかしすぎる)で、全てを出し切ったーというころ、部屋に鳴る10分前コール。
夫の「30分追加で!」という仕草に、なんて楽しい夜だ、と思った。
2人で肩を組んで歌を歌う。
大人の夜は長い。
長いからこそ、私たちは悩み、ときに衝突をすることもあるけれど。
たまにはこうして、ハメを外して、肩を組んで、大声で歌うような夜を過ごしたい。
それはきっと、大人の特権だから。
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