土屋鞄製造所を卒業します。
D2Cマーケターの福知です。
突然の話ではありますが、8月15日を以って土屋鞄製造所を退職することとなりました。
25歳で土屋鞄の門戸を叩きに足立区西新井を初めて訪れて5年が経ち、次なる挑戦に向けて新天地へ移ることを決めました。
自分への忘備録も兼ね、改めて創業55年以上の土屋鞄製造所で経験させてもらったことをnoteで振り返ります。もしよろしければご一読ください🙇
土屋鞄製造所で何やってきたの?
1)25歳の土屋鞄でのチャレンジ
2)ECプラットフォーム「Shopify」リプレイス
3)OMO構築に向けて「WMS・ERP」リプレイス
4)海外組織の再構築と越境EC立ち上げ
1)25歳の土屋鞄でのチャレンジ(〜2019年度)
売上/Webトラフィック解析から始まり、
- POP UP出店
- 店舗ワークショップ企画
- LINE公式アカウント開設
- Instagram UGC専用アカウント開設
- ユーザビリティ調査
- デプスインタビュー調査
- Web定量調査
- EC運営
- 会員ロイヤリティープログラム開発
- ブランドWhy開発
と、自分でも覚えきれないほど手をつけまくってました。
順番はぐちゃぐちゃで、もちろん全ていい結果に転んでいなかったですが、新しくインプットしたマーケティング施策を提案しては実行しを繰り返しながら、
市場/顧客調査〜戦略立案〜スモールスタート〜検証〜再投資/ペンディング
という連続性を勉強し、マーケティングの基本を叩き込んでいきました。
2)ECプラットフォーム「Shopify」リプレイス(2019年12月)
リプレイスの背景に関しては以前の記事・noteに書いてあるので、詳しくは以下より
FRACTA様と構築を一緒にさせてもらった、Shopify EC。
この導入、実は社内では一筋縄とはいかず…笑
当時のShopifyというと、
・Shopify Japanが立ち上がって2年ほど(この年に初めて日本でShopify Uniteを開催)
・Shopifyからの日本語サポートは不足していて、英語での問い合わせとリサーチが基本
・公式Shopifyパートナーが2社ぐらい
・日本国内の事例が少なく、大手事例で参考になるのはUSブランドたち
といった状況で、日本の導入企業としては相当早いアーリーアダプター層でした。
構築前例がないので、社内提案は簡単には行くはずもなく。
本当にできるの?これがベストな選択なの?
現在のShopifyの株価や日本国内GMVを想像するのは難しい状況で、そう思われても仕方がない状況でした。
でも日々のサイバー攻撃は増えるし、売上・ブランド体験を改善するために早くCX/UXプロジェクトも立ち上げなきゃいけないし、と
もう待てる状況ではなかったのです。
社として大きな英断をしたなと実感しています。
世界トップシェアのプラットフォームでいくと判断してからは早かったです。未経験ながら、構築期間わずか半年。
ローンチしてからは、新しいドメイン・SEO・UIには正直苦戦していて難航したものの、結果Shopifyリプレイスを機転に風向きが変わったとは確信しています。
後述するWMS・ERPプロジェクトが1年ほどで公開まで漕ぎ着けられたのも、インハウスの現場主導で1年間で5種以上のマーケティング施策・アプリを導入できたのは全てShopifyだったからこそと感じます。
万能では勿論ないけど、Shopify選んでよかったなと毎度思ってます。
社内のちょっとしたスタートアップチームでPMとして仕事をさせてもらったこのShopify PJが、キャリアの転機だったと振り返ります。
3)OMO構築に向けて「WMS・ERP」リプレイス(2020-21年)
前述のShopify PJの一環というか、延長線にあったWMS・ERPリプレイス。
他社から漏れることなく、土屋鞄でも基幹システムのライセンス契約切れが差し迫っていて、社全体を巻き込む形で2年連続でリプレイス案件を担当することに。
情報システム部を主幹部門として、PMOとして導入システムの要件定義・契約商談・コストシミュレーション・個別開発ディレクション・受入検証・運用実装までを領域として(要するに全部ねw)仕事してました。
約1年という時間をかけ
最終的には、全てSaaSで再構築し、開発初期費用ゼロ・ランニングコスト1/10 のコストパフォーマンスで何とか全てを新システムでの運用置き換えに成功!(実店舗はShopify POS!)
まだまだ運用面でアップデートは必要ではありますが、真の「D2C・オムニチャネル化」の第一歩に貢献できたのかと思っています。
(でもこれは二度とやりたくない…大変だった…😢)
直近2年で六本木・渋谷・日本橋と、アクセス良好な立地にドシドシ新規出店してます。ぜひ土屋鞄のオムニチャネルを見に遊びに来てください!
4)海外組織の再構築と越境EC立ち上げ(2020年)
WMS・ERPリプレイスと同時並行で、担当していたのが「海外展開」。
あまり知られてないのですが、土屋鞄には18年10月にOPENした台北店、19年12月にOPENした香港K11店があり、土屋鞄グループとして台北オフィスで働く現地メンバーが10人ほどいます。
昨年4月に、台湾・香港地域の事業統括および新規市場進出を担当する事業マネージャーへ着任しました。部下は5人体制で、4カ国の国籍が揃った多国籍チーム。(内 新卒2名)
20年7月には台湾チームと一緒に多言語・多通貨のShopify 越境ECを公開。Shopify Plusにて、自分は開発ディレクションと英語翻訳を担当。台湾チームにはデザイン・ページ制作・CSを担当してもらいました。
現在、配送対象国は北米・APAC・中東・欧州まで拡大し、40ヵ国以上の国へ商品を届けることができるようになりました。
※Shopify Plus越境EC構築の話はこちらにて
20年9月、上記と同時並行で中国越境EC「Tmall Global旗艦店」を公開。
約半年で出店商談・契約締結(ここが一番難航w)・ストアパートナー商談・物流構築・商品ページ制作・ブランド名開発をこなし、20年9月に初めて中国進出しました。
https://tsuchiyakaban.tmall.com
国内海外含めて1年間で3つのオンラインストア開店に従事するという何とも刺激的な1年を過ごしていました。
一緒に伴走してくれたプロジェクトチームには感謝しかないです。現場主義で進めていたからこそ、運用フェーズに入っても自立して改善が進められていると実感してます。(忙しいけどね笑)
たぶん自分が退職しても運用には影響ゼロ!信頼できるメンバーです。
(嬉しいのやら、寂しいのやら😢)
30代のマーケターキャリア形成に向けて
20代のうちに到底経験することができない様々な機会をもらえた現職には本当に感謝しています。
しかし自分自身が30代に突入して、ふと「マーケター」としてのキャリアを考えたとき、まだまだ力不足があると感じていました。
・マクロ視点でのマーケティング投資
・マーケティングとは、結局のところ組織づくり
・ハードウェアだけで製造販売する限界
現在国内海外で合計25店舗以上を運営し、「工房系ランドセル」ブランドとして上位シェアを持つ土屋鞄。日本国内で持続的な成長を続けているが、少子高齢化が容赦なく進む日本において、向こう10〜20年間 日本だけで事業を続けるのは難しいのは、誰が見ていてもわかっていました。
事業存続、ましてや成長を望むのであれば「海外」や「新規事業」でのプレゼンスを高めていくことは必須。
この事実は、日本のどの製造業にも当てはまると思う。
しかしながら、限られた人・金というリソースを中長期的視点に立ち続けて継続的に新しい事業へ投資を行うのは簡単ではない。
この投資コントロールをするのはもちろん会社の経営レイヤーではあるが、舵取りを担うのはマーケターの仕事だと考えています。「ブランド」という単位で短期的なPLや日本だけのPL(成績表)を見るだけでなく、ブランドの将来的なBS(資産価値)を伸ばすためのマクロ視点を持ちつつ日々の意思決定を行うことが求められる。小学校6年生の算数は100点の成績(PL)でも、高校の数学でも好成績を取れる知識・ノウハウ(BS)を蓄えておかなければならない。
「ブランド」単位で必要な視点でもあるし、経営観点で「事業」ごとに同じ視点が持つことが求められる。いわゆる「事業ポートフォリオ」の最適化。
だからマーケターは、市場・ブランド・事業・PL・BSという複数要因を総合的に判断して、組織単位で動いて成長を促進させる。
なので、外資系ブランドは以下のような図にて、ブランドマネージャー(BM)とマーケティングオフィサー(CMO)という役割を配置していると理解しています。
(P&Gマフィア記事/書籍と「マーケティングプロフェッショナルの視点」(音部大輔 著)より参考にて作成)
この組織開発と人材配置を現実にしてから、顧客への価値提供が成される。組織づくりを飛ばしてマーケティングをすると、顧客のブランド体験は一気通貫しない。一気通貫しないブランディングは顧客に伝わらない。伝わらないと買ってもらえない。買ってもらえないとブランドの価値は提供できない。
私自身がこれからBMの域に達していくこと、そしてCMOまでの道筋を描くためにマーケティングの組織づくりまで領域を広げていく課題を感じ、「転職」を考えるきっかけとなっていました。
そして最後に転職を決めた要因が、
ハードウェアでの「事業継続」の難しさでした。
新卒で「自動車」・中途で「革製品」と、経験してきた業界はどれも売り切り方式のハードウェアです。メンテナンス・修理・中古二次流通といった、断続的な顧客接点・副次収益は確かに存在するものの、やはり「いい新品を作って売る」というのが利益の源泉です。
LVMH・ユニクロ・ZARA・SHEINなどの製造小売業を代表する業界Disruptorと競合して、5〜10年と継続する事業を起すのは、この新品を作って売るという「ハードウェアビジネスモデル」では限界があり、ダイナミックな意思決定をする難しさを痛感しました。
次世代の製造業はよりテック起点の発想をし、プロダクトをアップデートし続けて、サービスを提供すること・お客様へ価値提供をすること・収益を確保すること。(まるでテスラのように)この仕組みを設計することが求められている。そう強く感じています。
これを満たさないと、未来の競争に生き残れないと思います。
この「ソフトウェア」「テック」発想のビジネス経験をキャリアとして求めたとき、次の修行を決断していました。
大手製造業 → 中小D2Cブランド → 次は?
明日8月16日より、台湾発のペットテックスタートアップの「Tomofun」にジョインすることとなりました。
Furboという、ドッグカメラを製造販売している会社です。
外資系
スタートアップ
ペットビジネス
と、学ばなきゃいけない新しいフィールドがたくさんありますが、ワクワクしています。
しっかりと成果を残せるよう、土屋鞄で学んだことが恥ずかしくならないようにと思い、背筋が伸びる想いです。
Tomofun・Furboでの仕事については、また改めてnote書きます。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。そして土屋鞄製造所のみなさま、大変お世話になりました!
これからも『製造業』×『デジタルマーケティング』の発展に尽力します!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?