[バレ有感想]シン・エヴァンゲリオンと向き合って

シンエヴァ(シン・エヴァンゲリオン劇場版:||)を見てきた。
エヴァの呪縛に囚われた人間ではないつもりなので軽い気持ちで見てきたが、見終わった後、頭が痛くなって寝込んでしまった。
もしかしたら自分の好む作品ではなかったのかもしれない。

ただ四半世紀もの間、紡がれてきた物語に幕が下りたと思うと感慨深いのは確かで見どころ見ごたえが詰まった作品だったのは間違いない。

マリがトラックの運ちゃんばりに、またはザブングルのウォーカーマシンばりにハンドルぐるぐる回しながら敵を蹴散らし、陽電子法にエッフェル塔を突き立てて撃退する姿はカッコ良かったし、村の生活で成長したトウジやケンスケに会えたことや、ぽかぽか綾波の姿を見れてうれしい気持ちになった。
悲しみや苦痛を乗り越えて立ち上がるシンジの姿を見れて感動したし、若い男って…の意味がガラっと変わるマヤさんは見ててニヤニヤするし、押さえつけてきた自分を解放したミサトさんの姿に興奮してしまう。
最後のゲンドウとシンジの戦いの舞台も特撮のセットを踏襲していて源流となる作品への愛と感謝を感じた。
アスカは相変わらずひどい目に遭うが、最後の最後でとてもかわいい姿を見せてくれて眼福だった。
こうして振り返ると楽しいシーンが盛沢山だったなって思う。

さてちょっと昔話になるが、自分がエヴァはリアルタイムでは見ておらず、最初に触れたのはスーパーロボット大戦FおよびF完結編だ。
マジンガーZの兜甲児がシンジの兄貴分兼悪友としてバカやって、アスカとケンカしてるのが印象的だった。
なおF完のゼルエル戦で絶体絶命のネルフメンバーを救援に来るフル改造強化型マジンガーZの活躍を語りたいが余談も余談なので自重する。

そしてその後TVシリーズを見始めたのだが、自分にとってエヴァの世界はとても刺激的だった。
巨大ロボと巨大生物の市街戦という嘘をリアルに描くため、神に等しい超越存在とそのコピーという設定や、アンビリカルケーブルといった制約、第3新東京市という舞台、人類補完計画という中二心をくすぐられる仰々しいお題目、どれも天才的だなって思う。
後々から監督の特撮趣味を知り、怪獣とプロレスで戦う光の巨人(ウルトラマン)のフォーマットを高尚な感じで視聴者に飲み込ませるために苦心した結果なのだろうと思った記憶もある。

「無理が通れば道理が引っ込む」という言葉があるが、これは逆に「道理を尽くして無理を通す」なんだなって理解して感心していた。

そんな風に世界観に魅せられてた自分だったのでTVシリーズの最後や旧劇場版に関しては裏切られた気持ちにはならなかった。
もともとぶん投げエンドとは聞いてたし、風呂敷が広げられたままであっても、畳みようがないほど世界観が広がっていたからこそ楽しかったのもあり、それはそれで納得していた。
旧劇で戦自がネルフ本部に攻め込むシチュは大好物だったしATフィールドを駆使して戦うアスカの姿もカッコ良かった。
そしてしばらくして新劇場版が始まったが、序、破ともに十分に楽しませてもらっていた。

その後、Qを見て、あまりの世界の変わり様、あまりの風呂敷の広げようにビビったが、どうせ畳まれないと思い脳内スルーし、ヴンダー発進シーンのカッコよさに打ち震えたし、ヴィレというレジスタンス組織の雰囲気も好きだったのでこの時は満足していた。

そして先日ついにシンエヴァを見たが、前述のとおり満足したシーンはたくさんあったものの、無限に襲ってくるネルフ勢力は誰が整備してるんだろうとか考えたり、裏宇宙で量子テレポーテーションしまくってるの見ていつのまにかグレンラガンの世界に入ってしまったのかと混乱してしまった。
「道理を尽くして無理を通す」世界が好きだったのだが、それが崩れてファンタジー色が強くなって無理だけが通されてる気分だった。

もちろん四半世紀にわたって広げ続けた風呂敷を畳むのにはこれくらいの無理は必要だったのかもしれないが自分が許容できる範囲を超えていた。
脳内のタシロ艦長が「人類の科学は、技術は、こんな巨大なものを作ることが出来るというのか…」と茶化してごまかしてたが、頭がいっぱいになってゲンドウとシンジの邂逅もあまり深くのめりこめず、そのあたりの感動も受け取り損ねたと思う。

そんなわけでシンエヴァは自分が惹かれていたエヴァの世界からは剥離していた。こんなことで一方的にすべてのエヴァンゲリオンにさよならされても困るという気分でいっぱいだった。

でももしかしたらこれはエヴァをお気軽に楽しんでたツケを払わされただけだったのかもしれない。面倒くさがらずもっと真面目に向き合ってたら飲み込めたのかもしれないと思うと悔しくも思う。

そしてこうやって一通り書いて思ったが、思ったより自分はエヴァに魂を惹かれてたのかもしれない。

見たかったものが見れなくてがっかりしたと書き連ねるくらいには。

思いっきり書き散らしたが、何年か後に気持ちに折り合いがついた後にこれを読んでどう思うかが楽しみなので文章として残しておく。
パリのネルフ職員がメモを残して後を託したように。

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