山深い貴船神社の静けさとボツワナの神聖な丘
京都の貴船神社は、水の神様を祀り、古くから雨乞いの神事が行われてきた長い歴史を持つ神社だ。
山深く、青緑の空気に静かにたたずむその美しさを捉えた写真を見て、いつか訪れてみたいと思っていた。
神秘的で印象深いその写真は、自宅で利用しているウォーターサーバーの会社の小さなニュースレターで見たかけたものだ。(水の神様だものね)
文学フリマ京都に出店する前日に、丸一日をかけて京都の中心部からおでかけすることに決めた。
まずは叡山電鉄に乗り、鞍馬口へ。
少しずつ山深くなり美しい風景が広がる。
義経と天狗でも知られている鞍馬寺の山道を上がっていく。(途中ケーブルに乗車した)
山道を歩きながらいくつものお参りスポットを巡る。
良く晴れた冬の日で景色は美しく、眺めの良い展望ポイントがいくつもあり、心が洗われるようだ。
山道はちょっとしたトレッキングシューズがあった方が良いかもと思うくらいだったけれど、見どころも多くとても楽しめるルートである。
いくつものお社がきれいに整備され、昔から大切にされてきた場所だということが良くわかる。
そしてたどり着いた貴船神社は、とても素敵な場所だった。
歴史を重ね、多くのひとが大切にしてきた神聖な場所は、足を踏み入れると厳かな気持ちになる。
本宮から10分ほど歩いたところに位置する奥宮は、貴船神社創建の地だそう。
大きな杉の木に囲まれ、気持ちがしゃんとする。
この奥宮にたどり着いただけで、身体に神聖なものが満ちたのではないかと思ってしまうくらいだ。
山岳地帯の多い日本という島国では、昔から山と信仰は切っても切り離せないものだ。
山の中に入ると神様がいるのではないかと思う気持ちはとても良くわかる。
もちろん、山岳信仰と一緒くたにして良いかどうかは疑問だが、山を神聖なる場所とする文化は世界中にあるだろう。
そういえば、作家ベッシー・ヘッドが暮らしたボツワナのセロウェには、スワネンヒルという丘がある。ボツワナは国土がとても平坦で高い山はほとんどなく、このスワネンヒルも大きめの丘といったサイズ感だが、セロウェのシンボル的存在で神聖な場所である。
山の上に上ると、伝統的な宗教儀式を行った跡がある。現在でも、民間信仰的に行われていることなのだろう。
ボツワナの山にも神様がいるのかもしれない。
もう一つ、ボツワナのオツェという町の外れにある山は、レンツウェ・ラ・バラタニと呼ばれる別名Lovers Hill「恋人たちの丘」という有名な場所である。ここには、家族に結婚を反対された恋人たちの悲しい伝説があり、この丘もまた神聖な場所とされている。
ベッシー・ヘッドはこの伝説を「The Lovers」という短編にしている。
ベッシー本人が特に気に入っていた作品だ。
きっと世界中に様々な伝説があり神様が祀られている山々があるのだろう。
それはそうとして。
あちこちの神社で世界平和を祈っているわたしであるが、最後に京都の街に戻って護王神社という神社にお参りした。こちらは足腰の神様だそう。
家族が怪我をして入院してしまったので、速攻のご利益があることを期待していたのだ。神聖な場所も世界平和も大切だが、そういうご利益も大切だ。
京都での一日、神様と山のことを考える良き時間だった。
エッセイ100本プロジェクト(2023年9月start)
【41/100本】