ディスクレビュー Borderland/Ryu Matsuyama
幻想的な風景の中に心地いい高音が響く。現実の何気ない風景を、優雅で少しだけ特別な時間に変えてくれる。それが今回のRyu Matsuyamaの新譜『Borderland』にはあった。RyuMatsuyamaはピアノ、ボーカルのRyu Matsuyamaを中心としたスリーピースバンド。ボーカルの名前がそのまま、バンド名となっている。4月にリリースされた今作は、聴きながら夜風に当たるのも似合いそうだし、1人でしっぽりとお酒を飲むお供にしても気持ちいいだろうな、ということを思うほど気持ちいい。
今作はプロデューサーにmabanuaを迎え、よりグルーヴィーなアルバムになったと実感できる。全体を通して楽器の音それぞれが鮮やかに重なり合って、歌声にはっきりとした輪郭を生み出している。
“Go Through , Grow Through”では、希望の歌と本人たちが語るように、曲の向いている方向がすぐに想像出来る。日々の何気ない感情に、彩りを与える力が最も強く感じられたのがこの曲でもあった。伸びいく声の先を追っていけば、光が見えてきそうな気になれる。コロナが収束してから、ライブ中に皆でOhと叫び合いたいな、そんな画を想像しながら聴けてしまう。
塩塚エモカ(羊文学)とのコラボ曲“愛して、愛され”では日本語詞でRyuと塩塚の優しい歌声で、『生きる』ということについて考えさせられる。ベースやドラムの音は力強く、折れない1本の軸を持った人のように強い。だからこそ、Ryuや塩塚の空気のように澄み渡った声の存在感は負けることなく、伸びて届いてくる。楽器の音がどっしりとしているからこそ、歌声に安心して身を任せられる。そして、歌詞の意味を噛みしめることができるのだ。
今作を通してRyu Matsuyamaを知り、その音楽に身を任せる人は確実に増えるだろうな、という確信に近いものがある。それくらい今作には彼らの長所が詰まっている。Ryu MatsuyamaのオフィシャルYouTubeチャンネルでは、アルバム全曲を聴くことができるので、そちらでぜひ一度聴いてみて欲しい。Ryu Matsuyama。覚えておいて損はないはずだ。
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