『トランセル』 #aeuの詩。
「かたくなる」はできるけど攻撃向きじゃない
きみが言ったことばを
何度も何度も思い出すのは
やっぱり「かたくなる」をするこの瞬間
身を守るために
ひたすらひたすら カラを硬くして
嵐が静まるのを待つの
ねぇ知ってた? 実はあたし
どうやら「いとをはく」もできるみたい
ここまで生き延びた日々のなかで
いつの間にかおぼえていた技
攻撃を受けないように
幾つも幾つも予防線を張っておくの
ああされないようにこうしよう
ああされたらこっちに逃げよう
そうやって 目の前が自分の吐いた糸だらけになって
視界がぼやけて 向かう先が分からなくなって
身動きできずに また「かたくなる」
あのときはただ「きみはトランセルだよ」と
言われただけだと思ってた
ああそうか「あたしはトランセルなんだ」って
それだけ、それだけ
硬いカラに包まれて
ひたすらひたすら「かたくなる」
ひとりで内に抱えて 耐えて耐えて
攻撃は「たいあたり」すらヘタクソだよねって
ほんとは もしかして 見透かしてくれてたの
硬いカラに包まれて けれど中身はやわらかくて
かたくなっても 強い攻撃には耐えられない
ほんとは もしかして 信じてくれてたの
さなぎからかえったら
あたしはちゃんと
綺麗な綺麗な 蝶になれるよって
いつから憶病を覚えちゃったんだろう
いつからプライドを覚えちゃったんだろう
あたしはまだ、
たぶんこの先も「かたくなる」をわすれられない
たぶんきっと「いとをはく」をわすれられない
おぼえたままで進化するよ
いつかきっと進化するよ
蝶になれたら
きみにもきっと 伝えたいな
きみがくれたことば わすれられない
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