見えなかった未来、選んだ現在


未来を歩いているけれど、景色はぼんやりしていた

生きている限り、未来は確かにそこにある。けれど、かつての私は、その未来の輪郭が全く見えない状態で生きていました。
日々がただ過ぎ去り、周囲の人々や社会の期待に流されるまま、自分という存在の意味を見失っていました。
未来はあるはずなのに、目の前の景色はぼんやりと霞んでいて、何を目指していいのかもわからない。そんな感覚の中で生きていたのです。

未来という言葉が重たかった頃

未来という言葉が、かつて私にとってどれほど遠いものだったか、今でも思い出します。
幼い頃から学生時代にかけて、私の中にあったのは「普通」の価値観に押し込められる日々でした。自分らしさを見失い、いつも「どうすれば人に合わせられるか」ばかりを考えていました。未来を語る大人たちの言葉は、どれも実感の湧かない遠い世界の話に聞こえたのです。

「あなたはどう生きたい?」
そんな問いを投げかけられるたび、答えが見つからずに立ち尽くしました。
自分の言葉を持てないまま、社会の期待や周囲の価値観に流されていたのだと思います。

けれども、心の奥底では「本当の自分とは何か」という問いが、ずっと燻り続けていました。

第3の選択肢を模索する日々

10代後半から20代にかけて、私の前にはいくつもの選択肢が現れました。
ジェンダーやセクシュアリティ、働き方や居場所――どれも自分のアイデンティティを問われるものでした。

一時期、私は「他者のための存在」になることで自分の居場所を築こうとしていました。
トランスセクシャルとして異性的な外見を追求したり、接客の仕事を通じて他人に寄り添う経験を重ねたりして。
その中で、多くの出会いがあり、多くの「自分ではない役割」を演じました。

でも、それは「自分を守る壁」の薄さを実感する日々でもありました。
表面的な肩書きや見た目で自分を判断されることの孤独。自分が「どこまで他人に見せられるのか」という境界線を守る苦しさ。
だからこそ、私は次第に「表面ではなく本質」を求めるようになり、言葉という手段で自分を探すことを選びました。

未来は選ぶもの

執筆を通じて自分の心を言葉にしていく中で、私はようやく気づきました。
未来は「想像するもの」ではなく、「選ぶもの」だということ。

思い描いた通りにいかない日々も、自分が選んだ選択肢の結果だと受け止められるようになったとき、未来を恐れる気持ちは少しずつ和らいでいきました。
自由とは、「選ぶこと」と「選んだ結果を受け入れること」が一つになったとき、初めて得られるものなのかもしれません。

私が今、執筆を通じて伝えたいことは、壮大な哲学でもなければ派手な成功の話でもありません。
ただ、「あなたが見ている景色は、あなたが選んだ証そのものだ」ということです。

想像していなかった未来

かつて、「自分には未来がない」と思い込んでいた私が、今こうして言葉を重ねています。
それ自体が、「未来」というものがどれほど予測不能で、なおかつ希望に満ちたものかを示しているように思えます。

もし、今の私が過去の自分に一言伝えられるとしたら、こう言いたいです。
「未来はまだ見えなくていい。ただ、今日を選び続ければ、それで十分だよ」と。

外見的セクシャルの固定観念に挑む

人々は「外見」というフィルターを通じて他人を判断しがちです。
私がトランスセクシャルとして外見を追求していた頃、それは自分の居場所を得るための必死の努力でもありました。
でも、どれほど「理想的な外見」に近づいても、心の孤独は埋まりませんでした。
社会の「見た目で判断する文化」が、私たち一人ひとりの本質をどれほど軽視しているか――その矛盾に気づいたとき、私は表面的なものではなく、言葉や思考という深い部分で自分を表現する道を選びました。

排除の社会が失うもの

「排除」は一見すると単純な選択に思えます。
でも、それは社会全体の可能性を狭め、自分たちの首を絞める行為です。
多様性を否定することで、私たちは本来享受できるはずの新しい視点やアイデアを失っています。
その結果、最も傷つくのは他でもない、私たち自身です。

あなたに伝えたいこと

未来は「想像するもの」ではなく「選び取るもの」。
そして選び取った未来をどう活かすか、それがあなたの人生の証になるのです。
だから、恐れる必要はありません。今日という一歩を選び続けることで、未来は自然と形作られていくから。

未来は選び取るもの。
その選択肢の中で、私が紡いだ一つひとつの言葉が、誰かの未来の光になれば嬉しい。
未来を恐れず、今日を生き抜くすべての人のために、この言葉を贈ります。


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