もう見捨てられるという恐怖と戦いたくない
先日、彼から
「あなたは僕の言った言葉を
読み上げられてるようだ」
といわれた。
*
事の発端は、わたしが
彼の家具の組み立てを断ったこと。
これに彼は嫌味で
「俺はあなたの家具の組み立ては
手伝ってあげたのに」と言った。
その言い方に腹を立てた私は、
『そんなことをいってくるなんて
恩着せがましい。そう言われるなら
頼まなかったのに、男性としても
カッコ悪い』と伝えた。
彼は冗談のつもりだったと弁明したが、
私には理解できなかった。
『私はそんな冗談言われたことがないし、
品のない連中といつもいるんだと思う。
発想もしない単語は、
私ならばでてこない。
それも人を傷つける言葉を選んで言うのが
信じられない』
「いつも何気なく言った言葉が怒られる。
何が沸点かわからなくて、僕は怖い。
そんなつもりはなかったのに、
いつも何気ない言葉を読み上げられているようだ」
そう彼は言った。
*
言われてすぐに、
自分の殻に閉じこもってしまったのがわかった。
過去にも何度も言われたことがあったからだ。
過去に刺された言葉と
思い当たる自分に思いを馳せて、
黒い感情に包まれていった。
そうだ、
私は昔から言ったことしか
わからないとずっと家族に言われてきた。
両親のしてくれたことへ素直に感謝できず、
言われた悪口ばかりが気にかかり、
前に進めない。
そんな時、
家族がなにかをすると、
私はすぐに激情した。
『あれもこれもしてくれなかった』
『この前はお前は嫌われていると言ってきたのに、
許されると思うな』
『どうせ私のことが嫌いなくせに』
まさに風が吹けば泣くようなぎりぎりの状態が
続いていたので、
少しのことですぐにズタボロになって、
そのスイッチを押した人をひどく責め立てた。
家族は、そんな私を
さも不思議そうに、
面倒臭そうに扱った。
私は、「お前のことを見捨てない」と
誰かが言ってくれるのを
ずっと待っていたのかもしれない。
だけど、言ってくれる人はいなかった。
腫れ物のように扱われ、避けられるだけ。
そしてその度、
家族は、いざという時には
私を見捨てる存在だと認識した。
両親からしてみれば、
見捨てる気などなかっただろう。
当たり前すぎて言葉にしない、
そんな感覚だったと思う。
しかし、言葉にされなかった私は
一切わからず、
見捨てようとしていると過度に反応した。
これが私が
「お前は言葉にしないとわからない人間だ」
と罵られる所以だ。
それから
その家族と距離を置いて今に至る。
平穏は取り戻しつつあるが、
見捨てられると怯え続けた経験は
私のトラウマとして心に重く残っている。
*
彼に言われて、パンドラの匣が開いた。
また見捨てられる
そう直感として思った。
彼も私を見捨ててしまうのだろう。
それが私が少しの言葉で激情する原因だ。
『ノンバーバルコミュニケーション。
知っているよ。
わたしは何度も言われてきたよ。
でもわたしは言葉でも表されないとわからない』
彼は何も言わなかった。
*
あと何回、
他人の言葉に刺されたら、
あと何回、
勝手に傷付いたら、
こんな自分とうまくさよならできるだろうか。
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