【職人調査を行いました!】「年内に廃業の危機」約4割 コロナ影響で伝統が途絶える恐れ
「工房を休業せざるを得なくなってしまった」
「オンラインで販売するやり方がわからない」
「百貨店での催事が3ヶ月先までなくなり、準備していた在庫の売り先がない」
新型コロナウイルスの影響が幅広い業界に広がっている今、伝統産業界も例外ではありません。
伝統産業界にどれぐらい影響が出ているのだろう?
これをきっかけに廃業する方が増えてしまわないだろうか?
どのようなサポートが、いま必要なのだろう?
きちんと現状を捉えるため、和えるでは伝統産業に携わるみなさまへのアンケート調査を2020年5月9日〜15日の期間に実施し、日本全国から367件のご回答をいただきました。
その結果わかったのは、
2020年4月の売上が、 前年と比べて50〜100%減となってしまった方が過半数。
このまま需要が回復しない場合に、廃業の危機に陥るのは「~9月末」までが約2割、「~12月末」までを含めると4割に上り、年内に多くの方が存続の危機に直面する…...
という厳しい現状です。
このnoteでは、アンケート調査の結果わかったことと、この難局を乗り越え次世代に伝統をつなぐために、私たち一人ひとりにできることについてお伝えできればと思います。
◆調査結果の詳細(PDF版レポート)は、こちらからご覧ください。◆
伝統産業にどのように影響するの?
今回アンケートに回答してくださったのは、伝統産業の製造・卸売・小売に携わる方々です。
呉服関係や、陶磁器・漆器などの食器、木工品、和紙、お仏壇などの仏具といった商品を、伝統的な素材や技法で製作し、販売されている方々を対象としました。
さて、新型コロナウイルスによる経済活動の自粛が、伝統産業にどのように影響するのか想像がつかないという方も多くいらっしゃるかと思います。
例えば…...
・百貨店やインテリアショップなどの専門店、ギャラリー等での催事の中止
・観光客へのお土産物販売の減少
・体験教室の中止
(物販だけでなく、体験教室を主軸にされている方も多いです)
・ホテル、飲食店などの業務用食器の発注控え
(個人への販売だけでなく、法人への販売も大きな割合を占めます)
・結婚式、入学式、法要など冠婚葬祭の延期や中止
(冠婚葬祭は、着物を購入したり贈り物をしたりする機会です)
・ホテルや一般住宅建築工事の延期、中止
(和紙や竹など、伝統の技術は建築にも使われています)
といった回答が寄せられました。
これらの回答から、職人さんたちが生み出すものが、観光・宿泊・小売・建築などの幅広い業界を少なからず支えていることを感じていただけるのではないでしょうか。
伝統の技術が失われることは、伝統産業界で働く人や伝統文化が好きな人たちだけではなく、観光・宿泊・小売・建築など、他の業界にも影響を及ぼすのです。
売上への影響と、廃業のリスク
Q:2019年4月と比較して、2020年4月の売上がどれぐらい減少したかお教えください。
A:4月の売上・受注が、前年同月比で50%以上減少したと回答する事業者が過半数となりました。
オンラインでの販売が伸びているというニュースがあるように、実際に「ECでの売上は伸びている」という回答もありました。
しかし、やはり「手に取って購入したい」ものが多い伝統産業の分野は、まだまだ対面での販売が中心です。
売上が「減少しておらず5月以降も通常並か増加」を選択した回答者は2%に留まりました。
他の業界で一般的に言われているのと同様に、店舗休業の影響がすぐに現れる小売業・卸売業に比べ、製造業へは影響が遅れてやってきます。
そのため「これから売上が急減する見通し」とのコメントも多数寄せられました。
また、緊急事態宣言は解除されましたが、私たちの日々の暮らしは元どおりにはほど遠い状況。
高価なものも多い伝統産業の分野で、需要が回復するまでには時間がかかる…...と考えておられる回答者が多かったのも特徴です。
・5月以降の売上が激減予定
・受注製作に時間がかかるためまだ注文がたまっている
・着物は贅沢品なので1番最後なので年内はこの状況が続いてしまうと思う
・伝統的工芸品は不要不急のものが多く、景気の回復が遅く、それに伴い職人の高齢化による加速度的な廃業が予見されます
Q:売上が通常並に戻らなければ、廃業を検討せざるを得ないタイミングをお教えください。売上が戻らない場合でも廃業されない方は「2021年以降」をお選びください。
A:このまま需要が回復しない場合に、廃業の危機に陥るのは「~9月末」までが約2割、「~12月末」までを含めると4割に上りました。
また、実態はこの調査結果よりさらに深刻である可能性も。
今回の調査は、緊急事態宣言下に行ったため、インターネット経由のみのため、メールやSNSにアクセスできる方が回答してくださっています。
パソコンを使わない職人さん方の回答は得られておらず、そういった方が多くいらっしゃるのも伝統産業界の実情です。
助成金などの色々な支援策を調べることや、申請書類の作成、オンライン販売への切り替えなど、パソコンに慣れていない方が厳しい状況に直面することは想像に難くありません。
大変な状況下でそのような事業者が残っていけないのは仕方がない…...という声も聞こえてきそうですが、職人さんがものづくりと会社経営の両方を担っておられる小規模な事業者が多いのもこの業界の特徴です。
アンケートの自由記述では、下記のようなコメントも寄せられました。
経営という観点では、変化に対応する力が試される時であり、何かに頼るだけではいけないと思います。一方で職人の技術は経営という側面だけでは割り切れず、存続のための支援が必要だと感じます。
職人さんは、会社経営や書類の作成といった事務仕事、IT化への対応などが必ずしも得意な方々ばかりではありません。
ご自身の腕を磨き、伝統を継承してこられた方々の技術がここで途切れてしまわないよう、できる限りのサポートを行う必要があるのではないでしょうか。
いま、必要なサポートとは?
もちろんこの事態を乗り切るために、給付金の活用やオンライン販売の強化など、みなさま様々な取り組みをされています。
その上で、今後さらに必要な支援についても尋ねてみました。
Q:新型コロナウイルスに対するさらなる支援策として、必要なものがあればお選びください。(複数回答可)
A:廃業リスクの高さ(このまま需要が回復しない場合に、廃業を検討せざるを得ないタイミングがいつ頃か)によって、必要としている支援策が異なる結果となりました。
①廃業リスクの高さによらず、助成金の拡充や新たな販路開拓へのニーズは高い。
②すでに廃業を検討している事業者が求めているのは、経営相談。事業承継の方法の模索や、連鎖的な廃業を防ぐための支援など、廃業が避けられない場合も視野に入れて取り組む必要がある。
③売上が減少していない事業者が求めているのは、他産地や他業種との交流。次の一手を今から幅広く検討できるよう後押ししたい。
また助成金の拡充に要望が集まる一方で、補助金に頼りすぎず抜本的な変化への支援を求める声も。
そういった点では現在、官民問わず、オンラインでの販売やPRをサポートする取り組みが立ち上がってきています。
例えば和えるでは、オンラインで職人さんの作品を販売する場として「aeru gallery」を立ち上げました。
職人さんからは「オンライン販売をやらないと…...とは思っていたものの、どのようにしたら良いかわからなかったのでありがたい。」といったお声が上がっており、取扱商品を少しずつ広げているところです。
その他にも、4〜5月に開催した「オンライン工房訪問」のイベントは好評で、お客様に楽しんでいただきながら職人さんを応援する方法として、これからも企画したいと考えています。
和えるの取り組みを一例として記しましたが、この事態を乗り越えるため、様々な方々が、それぞれの立場で試行錯誤をされています。
メディアのみなさまへ
本調査の内容や、現状を乗り越えるための前向きな取り組みについて、ご紹介いただける媒体を探しております。
<ご要望があればお知らせください>
・伝統産業従事者の方々へ、直接のインタビュー等が必要な場合のご紹介。
・弊社にて用意している職人の写真や動画のご提供。
・感染対策を行った上での撮影協力や、リモートでの取材対応・ラジオ収録等。
・新型コロナウイルスによる打撃についてだけではなく、現状を打開するための取り組み事例についてお話しすること。
まずはお気軽にお問い合わせいただけますと幸いです。
伝統産業界の現状が広く伝わるよう、どうぞよろしくお願いいたします。
◆調査結果の詳細(PDF版レポート)は、こちらからご覧ください。◆
行政(地方公共団体など)のみなさまへ
現時点で、複数の自治体様から、調査結果の提供をご依頼いただいています。
京都府京都市、福井県庁、福井県鯖江市、佐賀県有田町など、都道府県別の回答結果を無償にて提供し、施策の立案や国への提言にお役立ていただく予定です。
都道府県別での情報が必要な自治体様がいらっしゃいましたら、下記よりお問い合わせください。
一般の方ができること
この内容を受けて「自分にも何かできることはないか?」と考えてくださったみなさま、どうもありがとうございます。
職人さんが作っておられるものは、私たちの日々の暮らしに心安らぐ時間を提供してくれます。
まずは、ほしいなと思ったものを実際に何か一つ買ってみて、暮らしに取り入れることから始めてみていただけるとうれしいです。
各地の職人さんたちは、それぞれにオンライン販売やSNSでの発信、クラウドファンディングなどに取り組んでおられます。
営業を再開した百貨店などで、うつわや小物、浴衣などを新調してみるのも良いかもしれませんし、ふるさと納税の返礼品には各地の工芸品がたくさんラインナップされています。
和えるでは、先に例として挙げた「aeru gallery」でのお買い物券をお贈りする「aeru電気」も立ち上げました。
今、各地の職人さんをはじめ多くの方が試行錯誤され、みなさまに楽しんでいただくための新しい工夫がどんどん形になっています。
これからの伝統産業に、ぜひご注目ください。
ご回答いただいたみなさまへ
大変な中で本調査にご協力いただいたみなさま、本当にありがとうございました。
アンケートの締切日となった5月15日夜には、KBS京都テレビのニュース番組「京bizX」にて、京都府の調査結果をご紹介いただきました。
また現在、他の複数のメディアの方々とも、発信に向けて進めております。
先行きが見通せない厳しい状況ですが、これまで受け継がれてきた日本の伝統を次世代につなぐことができるよう、私たちも精一杯取り組んでまいります。
これからもどうぞよろしくお願いいたします。
和える(aeru)の公式Twitterでも、最新の取り組みや記事の更新情報などについて発信を行っています。ぜひご覧ください!https://twitter.com/aeru_