雇用調整助成金について概要と申請のポイントを分かりやすく解説します
雇用調整助成金の申請のハードル
雇用調整助成金では、新型コロナウィルス感染症により影響を受ける事業主を支援するため、休業や一時帰休の対応を取っている事業者に支払った給与のうち対象労働者1人あたり1日上限※8,330円(教育訓練は別途、上限2,400円)が支給されます。
※5/27に上限額が15,000円に引き上げられることが決まりました。
雇用調整助成金は最寄りの都道府県労働局またはハローワークにて申請できますが「何回電話しても繋がらない」「直接出向いても何時間も待たされる」という崩壊状態になりつつあり、また専門家である社労士に相談したくても抱えている顧問の対応で精一杯で「スポットの案件を受けてもらえない」といった状況になっています。
そのため、仕方なく事業主自らが作成するしかなく、手続きが簡素化されたとはいえ、まだまだ複雑なため悪戦苦闘されている経営者の方が多いなという印象です。
そこで、この記事では雇用調整助成金に自ら申請を行われる経営者の方の申請マニュアルとなるために、制度の概要と申請手続きについて情報共有したいと思います。
※注意点
雇用調整助成金は事業および雇用を守るために設けられていますが、一度給与を支払い翌月に支給申請(実施計画などの届出は別途必要)を行い認可された場合に最短で1-2ヶ月ほどで給付されます。そのため、すぐに資金繰りを改善させる制度ではない点・万が一申請を行っても認可されない場合、資金繰りの悪化を招く可能性がある点に注意が必要です。
対象事業者(既にご存知の方は「申請手順」からお読みください)
コロナの影響でやむを得ず従業員を休業させた場合、雇用を維持するために休業手当を支払う事業者も多いかと思いますが、雇用調整助成金ではその休業手当の一部が支給されます。雇用調整助成金の申請対象になるのは大きく次の条件に当てはまる事業者です。
<対象要件>
・売上要件:直近1ヶ月の売上高などが前年比5%以上減
・規模要件:中小企業の場合1/40の休業が必要
・休業手当:平均賃金の6割以上支給
特例の内容
感染拡大防止のため、4月1日~6月30日の緊急対応期間中は、全国で全ての業種の事業主を対象に、雇用調整助成金の特例措置が実施され、要件の緩和と制度の拡充、申請手続きの簡素化などが行われています。変更になる条件などは下表にまとまっており要件や支給額がかなり拡充されていることがわかります。
(参照:厚生労働省)
<緊急対応期間中(令和2年4月1日~6月30日)の上乗せ特例>
・助成率の拡大
助成率は中小企業では2/3→4/5、大企業では1/2→2/3(解雇を行わなかった場合、中小企業では9/10、大企業では3/4)。1日1人あたり8,330円の上限あり。
・教育訓練の加算額の引き上げ
教育訓練を実施した場合の加算額(対象被保険者1人1日当たり)を、中小企業については1,200円から2,400円へ、大企業については1,200円から1,800円に引き上げる。
・教育訓練の範囲の拡大
自宅でのインターネットなどを使った教育訓練もできるようするなど教育訓練の範囲を拡大。さらに教育訓練の受講日に教育訓練を受けた労働者を業務に就かせてもよい。
・生産指標の要件緩和
生産指標は3ヶ月10%以上低下が条件だったが、1ヶ月5%以上低下に緩和された。
・支給限度日数にかかわらず支給できる
支給できる日数には1年100日、3年150日という限度があるが、今回の緊急対応期間はそれに含まれない。そのためすでに限度日数に達している場合でも利用できる。
・雇用保険の被保険者でない労働者も対象
本来は対象にならないアルバイトなども対象となる。
<雇用調整助成金を利用しやすくするための運用面の特例>・事後提出が可能な期間を延長
以前は計画書の提出は事前に提出する必要があったが、現在は休業等を実施した後に提出することが認められている。また、その提出期限は6/30まで延長されている。
・短時間休業の条件緩和
以前はすべての労働者が一斉に休業する必要があったが、部門ごとや支店など施設ごとの休業も対象となり、大幅に緩和された。
・休業規模の要件緩和
小さい規模の休業でも助成されるようになった。
・残業相殺制度の当面停止
支給対象となる休業等から時間外労働等の時間を相殺して支給すること(残業相殺)を当面停止する。
<申請書類の大幅な簡素化>
申請書類についても大幅に簡素化されています。
・記載事項の半減
・記載事項の簡略化
・添付書類の削減
申請手順
本来休業を実施する前に計画届の提出が必要でしたが、特例措置により休業を実施した後に提出することが認められています。これにより雇用調整助成金を利用しやすくなりましたが計画届の作成に不備があったり、資料の有無を事前に確認できず計画届が受理されない事例が出てきているので注意してください。
<雇用調整助成金受給までの流れ>
以下は雇用調整助成金の手続きの流れです。事業主が提出する必要のあるものは「計画書」、「支給申請書」の2つです。
①事業活動の縮小
②労使間の協定の締結
③休業などの実施
④計画届の提出および支給申請書類の提出
⑤支給・不支給の決定
※※労働者に休業等を実施することを伝え、合意を得ること
(参照:厚生労働省)
必要書類の作成
<計画届提出時に必要な書類>
・休業等実施計画(変更)届
6/30(火)までは事後提出(申請時に提出)が可能になっています。判定基礎期間は任意の期間でよく、3か月まとめての申請も可能です。その際に、先の予定が不確かな場合は休業を実施する可能性のある日程をすべて含んで申請しておいたほうがいいです。
※判定基礎期間・・・賃金締切日の翌日から次の賃金締切日までの期間
記載例)
・雇用調整事業所の事業活動の状況に関する申出書
事前に提出できない場合には、支給申請書と同時に提出します。確認書類は「売上」が分かる既存書類のコピーで可能 (売上簿、営業収入簿、会計システムの帳票など)。
記載例)
・休業協定書、教育訓練協定書
(労働組合がある場合)組合員名簿
(労働組合がない場合)労働者代表選任書※
※事後提出の場合、実績一覧表の署名または記名・押印があれば省略可 。また、労働者代表選任届に添付を求めていた個別の委任状が不要になりました。
記載例)
・事業所の状況に関する書類
既存の労働者及び役員名簿のみで可。
中小企業の人数要件を満たせば、資本額を示す書類は不要。
<計画届提出時の資料まとめ>
以下の表のように、揃える書類が大幅に簡素化されました
<支給申請時に必要な書類>
・支給申請書
自動計算機能付き様式とし、記載事項が大幅に削減されました。事業所の所在地等の記載は省略可能です。
記載例)
・助成額算定書
自動計算機能付き様式とし、記載事項が大幅に削減されました。残業相殺の停止より、残業時間の記載は不要。
記載例)
・休業・教育訓練計画一覧表
日付毎の記載は不要とし、日数合計のみで可能。残業相殺の停止により、残業時間の記載不要になりました。
記載例)
・支給要件確認申立書
「はい」「いいえ」を簡易に回答可能な様式に変更されています。計画届に役員名簿を添付した場合に別紙の役員等一覧は不要。
・労働、休日の実績に関する書類
ア.出勤簿、タイムカードの写しなど (手書きのシフト表などでも可)
イ.就業規則または労働条件通知書の写しなど
・休業手当・賃金の実績に関する書類
ア.賃金台帳の写しなど (給与明細の写しなどでも可)
イ.給与規定または労働条件通知書の写しなど
<支給申請時の資料まとめ>
こちらも記載不要の箇所が増え、簡素化されています。
◎雇用調整助成金の様式ダウンロード
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyouchouseijoseikin_20200410_forms.html
◎雇用調整助成金 ガイドブック
https://www.mhlw.go.jp/content/000611773.pdf
最後に
雇用調整助成金について申請方法の大まかなを説明してきましたが、申請方法が難しく対応してくださっている窓口も激込みなのが現状です。そのため、スピーディな対応は期待し辛く他の融資や補助金・助成金と並行して資金政策を練られることをおすすめします。
他にも非常に多くの種類の支援策があり、すべての制度を把握するのはとても大変ですがAerial Partnersでは、コロナの影響を受ける中小法人・個人事業主向けに、融資など資金繰りに関する相談・申請のサポートを無料で実施しています。
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