まだ実感しきれていないコロナウイルスの経済影響と私たちにできること
はじめまして。Aerial Partenrsという会社で普段はブロックチェーン事業者のバックオフィスや経営管理の支援を実施している岡田です。
今回、ブロックチェーンからは少し離れ、もう一つの肩書である公認会計士という視点で、今回のコロナウイルスの経済的な影響について思うところを記載しました。
ネガティブな分析も含まれてしまっているのですが、少しでも現状を知っていただき、私たちにできることがあればと思い、今回記載しているので、温かい目で見守っていただければと思っております。
2020年4月8日、緊急事態宣言が発令され、2020年5月6日までは外出を自粛するという流れとなっております。また2020年4月11日は東京都では様々な施設に対し休業要請も出ています。
これらの発令による営業自粛や休業の経済的な影響は少し遅れて本当の意味では伝わってくるので、まだどれほどのインパクトがあるのかは定かではありません。
そのため、多くの人にとって本当にコロナウイルスの影響を意識し始めたのは、3月の終わりごろだったのではないでしょうか。
しかし、これからお話しさせていただく業界では、1月ごろからその兆しは見え始めており、すでに影響を受け始めてからおよそ3か月もの月日が経過しているのです。
ホテル業界のケース
ディズニーランド、USJ、ハウステンボスなど様々な施設が3月以降閉鎖しており、インバウンドの流入も見込めないということでホテル業界も相当な苦境に立たされています。
ここではJ-REIT最大級のホテルREITであるジャパンホテルリート(JHR)を例に考えてみます。JHRは直近でいくつかのプレスリリースを出しており、そのコメントを抜粋すると以下の通りです。
2020 年2月の訪日外客数は、新型コロナウィルス(COVID-19)の影響により、前年同月比 58.3%減となり、東日本大震災直後の 2011 年4月に次ぐ過去2番目に大きな減少幅となりました。
3月度の RevPAR は、全国的なイベントの自粛や大型テーマパークの営業中止、さらには諸外国による日本への渡航制限やわが国における海外からの入国制限対象国の拡大等の影響を大きく受け、前年同月比 70%弱減少する可能性があると考えています。
現時点では、新型コロナウイルスの問題が与えるホテル収益への影響を見積もることが困難なため、収益予想の算定を行うことができません。
このように、2月時点でのインパクトはすでに非常に大きく、3月でも前年比で70%程度の減少、これに加え4月以降は外出の自粛などの影響がより濃く反映されるでしょうし、収益予測が立たない状況となっています。
そもそも、ホテル事業では、その不動産の規模が大きくなるため、不動産としてのホテル物件には、REITや不動産ファンドのようなオーナーがおり、実際のホテルの営業・運営についてはオペレーターと呼ばれる会社がしていることがほとんどです(アパホテルのように自社でほとんどの物件を保有・運営するスタイルの会社ももちろんありますが)。
オペレーターである会社はホテルという不動産を借りていることになるので、ホテルの収益に合わせて賃料が変動する変動賃料形式をとっている場合が多いのですが、この仕組みであると、ホテルが好調の場合でも収益の多くは不動産オーナー側に吸い上げられ、オペレーター側には多くの収益が残らない仕組みとなっているため、今回のコロナ禍のような状況となった場合に収益の下落に耐えられる能力がないことが多いのが実態であるかと思います。
世の中では、2014年から2019年までのホテルバブルの時期にたくさん稼いだのであるから大丈夫だろうというような論調もありますが、構造上そのような仕組みになっていないことや、固定比率の高いビジネスモデルゆえの、営業ができない状況での苦しさは計り知れないものがあります。
そして、オペレーターである会社の苦しさは、ホテルオーナーにも影響があります。実際に、4/9にはJHRの信用格付けはA(ポジティブ)からA(安定的)に引き下げられてしまっております。
多くの資金力を持つ、J-REITを代表するホテルREITですら苦しい状況なのですから、地方など各地にある旅館等の状況は推し量られます。
今すぐ、私たちがホテルや旅館に対してできることはなかなかないのですが、ぜひコロナの心配がなくなった時には気分転換にホテルでリモートワークをするなどしてみるなど利用できる機会を増やしたいなと思っています。
飲食業界のケース
飲食業界、こちらも、このコロナ禍の影響が最も色濃く出ている業界ではないでしょうか。
人の命より優先すべきものなどありません。そのため、お客様の健康のためには基本的には自粛という選択肢をとるしかなく、多くの飲食店関係者の方は苦悩されているかと思います。
何よりも苦悩するのは、雇用の面ではないでしょうか。
飲食業界の多くのお店では、人の入れ替わりが激しく、せっかく根付いてくれたスタッフについて雇用をできる限り維持したいと考える一方で、自粛が続くとなると、固定費を抱えるのはつらい、そんなジレンマを抱えている状況でしょう。
多種にわたる飲食業態で多数のレストランを展開する、クリエイト・レストランツ・ホールディングスの事例を見てみると、飲食業界の利益率の水準というのが営業利益率は5%前後であり、高くないことがわかります。
この例の場合(2020年2月期)、仮に売上がゼロとなってしまった場合に、家賃などの固定比率が20%程度あるとすれば月間の支出額は2,000百万円であり、この分だけでも、3か月で想定される営業利益をすべて食いつくしてしまう計算になります。加えて、人件費など、その他の固定費もかかってくるのでこれまでに積み上げた利益がいかにすぐ吹き飛んでしまうものかということがわかります。
今回、様々な融資も実施されていますが、あくまで借入は借入であり、返済が発生します。この利益率の中から返済を実施していくのは非常に苦しく、先の長いものであるように感じるでしょう。
また、コロナ禍の影響は今現在、いつまで続くのか誰にも予想がつかない状況です。借入を実施しても数か月分のキャッシュフローにしかならず、借入金だけが負担となる心配をされている飲食店の方も多いのではないかなと思っています。
飲食店の苦境は派生する
飲食店が苦境に陥るということは、飲食店に食材を卸している会社、酒類を卸している会社にもインパクトがあります。
基本的には以下のような流れで食材やお酒は流れていきます。
生産者 ⇒ 卸業者(問屋)⇒ 飲食店
生産者から直接買い付けを実施している飲食店ももちろんありますが、その多くは卸業者を介して購買が実施されます。
これには実は意味があり、個別の飲食店ごとでは、倒産リスクや支払についてリスクがあり、そのリスクを小さい生産者などは負いきれないため、卸業者を介し、そのリスクを軽減するようにしている役割があります。
通常時であれば、飲食店の倒産率は平均で5年で20%程度であるが(それでも十分に高くはありますが)、コロナ禍の影響によってこの倒産率は劇的に上昇することが想定されるでしょう。
そうすると、卸業者が連鎖で倒産する危険性がでてきます。生産者よりも大きな規模である場合が多い卸業者が破綻した場合、その影響は生産者を直撃します。
このような連鎖が起き始めると、日本経済への影響は計り知れないものとなっているでしょう。
ネガティブな話ばかりになってしまいましたが、私が言いたいことは一つです。
こんなことは現実になってほしくない!
ですので前置きが長くなりましたが、以下で本題である、「飲食店側でできる対応について」と「私たちがやっていくこと」について記載していきます。
事業者側でできる対応策(融資・助成金以外)
①さきめし (https://peraichi.com/landing_pages/view/sakimeshi)
お店側は登録が必要ですが、お店には手数料はかからず、将来の来店分の売上を先に得ることが可能です。
利用期限が6か月となっており、期限がある点は要注意です。
今を乗り切るために、自分の大好きなお店を支援するには最もわかりやすい方法です。
同様のサービスでKitchHike(https://kitchhike.com)というものもあるようです。
また前売り食事券の販売という形で、FacebookやHP上での告知のみで、100万円分の食事券を販売したうなぎ屋さんなどもあり、前売り食事券という形態は非常に有効な今を乗り切る手段の一つですね。
②CAMPFIREのクラウドファンディング
クラウドファンディングを提供するCAMPFIRE社は新型コロナウイルスサポートプログラムとして、通常クラウドファンディングの実施にかかるサービス手数料が無料となる支援プログラムを実施しています。
https://help.camp-fire.jp/hc/ja/articles/360040309611
苦しい期間に支援をしていただき、コロナ禍が過ぎ去った際にはリターンを返せるような仕組みを検討してみるのはいかがでしょうか。
③テイクアウト
多くのお店がすでに始めているテイクアウトですが、テイクアウトを始めていることを認知されていないケースも多いようです。Facebook、Twitter、Instagramなどでの発信は不可欠であり、これを機にSNSの運用を開始してみることもよいかもしれません。
④宅配
Uber Eatsや出前館に登録を行い、実施することが可能です。どちらのサービスでも宅配自体を依頼することも可能ですので、費用対効果が見込める場合は導入の検討はしてみるべきかもしれません。
Uber Eats(https://www.ubereats.com/jp)
出前館(https://demae-can.com/)
⑤通販
クラシルストア(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000107.000019382.html)
新型コロナウイルスの影響で予約や来店客が減少している飲食店様のサポートとして、この「クラシルストア」への無償出店ができるというものです。
お店の至極の一品を世の中に発信する良い機会でもありますね。
簡単にですが、融資や助成金以外の方法でこの環境下で少しでも売上があげられるようにする方法をご紹介しました。
またそれぞれの事業所で融資を受けることやコストカットを実施するなどの方策をとられると思いますが、キャッシュフローサイクルの改善についても実施すべき事項です。
具体的には
①家賃の減額や支払期日の交渉
この状況下ですので退去された後の長期での空室リスクを考え、貸主も家賃を一時的に減免してくれることや、敷金等で埋め合わせをすることを検討してもらえる可能性があります。まずはお話しすることから始めてみましょう
②キャッシュインを早く、キャッシュアウトを遅くする
前払いや一括支払いでの売上を増やす努力をし、支払いはクレジットカードなどを極力使用することで実際に支払うタイミングを極力ずらすことで、キャッシュフローの波をコントロールし、資金繰りを改善することが可能です。
③納税を遅らせる
新型コロナウイルス感染症の影響により、国税を一時に納付することができない場合、税務署に申請すれば、法令の要件を満たすことで、原則として1年以内の期間に限り、換価の猶予が認められます。こちらの申請は納税期限前からも行えるので今のうちに行っておきましょう。消費税の中間納付や、法人税の中間納付についても仮決算を実施することで減免できる可能性もありますのでこの点も税理士などに相談することがおすすめです。
④在庫を減らす
当たり前ですが、通常時の売上予想が難しい場合は、在庫を減らすことでキャッシュフローの改善が見込まれます。特に酒類などの在庫はいったんキャッシュに変えてしまうことも検討の余地があるでしょう。
以上のように、事業者側でもできることというのはたくさんありますので、まずはできることからこなしていくことが重要です。
個人ができる支援
また旅館や地方のお店を助けるサービスとして、最近展開されているサービスとして、すごく良いなと思ったサービスについて軽く紹介します。
①TASTE LOCAL(https://taste-local.stores.jp/)
宿泊施設が本来提供しているおいしい食事を家庭に直接届けてくれるサービス
こちらで提供されている、浜の湯さんの金目鯛の煮つけは個人的にも大好きなのでとてもうれしいです。
②ふるさとチョイス(https://www.furusato-tax.jp/feature/a/corona-virus_support_trave)
新型コロナウイルス被害事業者向け支援プロジェクト~観光事業者~として、「今すぐには行けないけど落ち着いたら訪れたい」という旅館や施設を選んで寄付をすることで、今経営が危ぶまれている事業者にお金が届くサービスを提供
このようなサービスを利用することで、今、直接行くことはできないけれど、素敵なお店を支援し、将来につなげていくことができます。
制度上の支援
次にその場しのぎの策となってしまうかもしれないですが、融資や支援についても簡単にご紹介します。
①融資
まず、最初に検討すべきは日本政策金融公庫と商工中金の融資になります。
対象となるための要件はざっくり「直近月の売上が前年同月比などで5%以上減少」であり、非常に基準が緩めになっています。
その他、信用保証協会の制度融資や各都道府県、市区町村にもコロナ対策の融資が設定されていますので、まずは情報を検索してみましょう。
現在は借入についての利率を一定期間、実質ゼロにする特別利子補給制度も一定の要件を満たす事業者には用意されていますので、利子負担もしばらくは生じず、借入をすることが可能な場合もあります。
ただ1点、注意点があるのは、現在窓口は非常に混みあっております。特に初めて借入をする場合には1か月~1か月半程度は借入の実行までにかかる可能性も踏まえて動きましょう。
②雇用調整助成金
雇用調整助成金とは、経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、労働者に対して一時的に休業、教育訓練又は出向を行い、労働者の雇用の維持を図った場合に、休業手当、賃金等の一部を助成するものです。
新型コロナウイルス感染症の影響を受ける事業主が対象であり、助成される内容は以下の通り。
・助成率 大企業2/3、中小企業4/5
→解雇等を行わない場合は大企業3/4、中小企業9/10
・支給限度日数 1年間の支給限度日数100日
今回のコロナ禍においては2020年4月1日~2020年6月30日については、過去の利用状況とは別で、雇用調整助成金を利用可能)
ただし1日の一人当たりの上限額は8,330円までと上限があることにご注意ください
③持続化給付金
新型コロナウイルス感染症の影響により、売上が前年同月比で50%以上減少している者が対象となる給付金。
給付額は、原則、法人:200万円、個人事業者等:100万円となっており、非常に大きいです。
ただし、上限は前年からの売上の減少分(計算式は以下のとおり)を超えないものとなっており、以下の計算式によって上記の金額とは別途計算されます。
■減少分=(前年の総売上(事業収入))-(前年同月比▲50%月の売上×12か月)
※2020年1月から2020年12月のうち、2019年の同月比で売上が50%以上減少したひと月について、事業者の方に選択いただきます。(任意の月を選択できるので対象となる方は非常に広いです)
昨年創業した方などに合った対応も引き続き検討するとのことで、対象となる方の幅も広く、絶対に抑えておきたい給付金です。
④その他
東京都では休業補償が発表されており、収入の減少した世帯には30万円の給付があるなど、様々な給付等もございます。
私は、この苦境を乗り切ることができれば、必ず素晴らしい事業者は輝きを取り戻せると信じています。
そこで、微力ながらでも私たちに今できることを実施していきたいと考えています。
Aerial Partners社として実施すること
現在、本当に様々な支援策が日々発表されており、情報があふれています。融資・助成金に関して自身で精査するのが非常に難しいと感じている法人・個人事業主の方も多いのではないでしょうか。
・融資を受けた方が良いのでしょうか?
・対象となっているんだろうか?
・どの制度が一番あっているのだろうか?
など、お悩みの方がいれば、微力ながら判断のサポートをさせていただきます。株式会社Aerial Partnersでは、LINE@にて融資・助成金に関する無料相談を実施しております。そのほかにも助成金の申請のお手伝いも実施させていただいておりますので、まずはお気軽にご相談下さい(詳しくは弊社プレスリリースをご覧ください。対象は飲食店に限りません)。
▽LINE@でのご相談はこちらから▽
https://lnj.aerial-p.com/?utm_source=notel&utm_medium=vol.1&utm_campaign=note-textlink
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また、グループ法人であるAerial税理士法人にて、税務顧問への支払という固定費の圧縮のお手伝いをさせていただきたく、コロナ禍の影響を大きく受けている事業者様については、当面の会計・税務顧問を無償で実施させていただこうと思っております。特にキャッシュフローサイクルの改善についてのご相談についてお役に立てることが多いかと思いますので、まずは一度ご相談ください。
(お問い合わせはこちらへ)
もちろん、これらすべてオンラインで対応いたします。
我々にできることは微力ではありますが、またすぐに、外食・旅行などもとの日常が戻ることを信じて、我々ができることを実施していきます。
長くなりましたが、コロナが一刻も早く収束することを心より願っております。