銅の腐食具合を予想するための水質調査手法
こんにちは。
表面技術2022年5月号に銅の腐食診断方法に関する論文が掲載されていたので、学んだことや思ったことを書きたいと思います。
電気化学測定は実際にはやったことがないので間違って理解しているかもしれません。
未来の自分がもっと勉強していたら直してもらおうと思います。
掲載されている論文は、『銅を参照極に用いたセンサープローブによる銅の腐食診断法の開発』という表題で、名古屋工業大学、東京理科大学、日立ビルシステムの方が著者になっています。
タイトルを見ると、銅材の腐食に対する診断かと思いましたが、銅を腐食させる淡水の水質診断の方法を開発したという内容です。
同じ研究グループの従来技術をベースに改良点について記載されているので、詳しく理解するためには、既往研究を読み込むべきかもしれません。
が、そこまではできてないです。
少し検索してみましたが、従来技術として書かれている手法は以下の論文の方法かと思います。
定電位分極で得られた電流値、定電流分極で得られた腐食に起因した電位、pHを軸に取った3次元グラフ(「腐食マップ 3D」と呼ぶそうです。)を作るところが、この研究の特徴だと思われます。
腐食マップ3Dでは、銅の腐食形態ごとにプロットされる位置が変わるので、水質を調べたい淡水でこれを作成することで、銅がどのように腐食するか推定することができるようです。
ポイントは電極の改善
今回の論文を簡単にいうと、「市販の電極は作りにくいから、丁度よいケーブルを使ってシンプルかつ利便性の良い方法を開発したよ」ということだと思います。
アセンブリ工程で部品を内製化してコストダウンするようなイメージを思い浮かべました。
通常の電極の欠点として挙げられているのが、メンテナンス性です。
ここで使われるような電気化学測定では、下記URL内の写真にあるような、専用に近い形の電極を使っています。
特に、参照電極は電極内部にKClなどの液体が入っているので、へたってきたら内部液を交換する必要があります。
pH計とかで内部液を交換するのがめんどくさいと感じているならイメージしやすいかと思います。
この産業電極を、作用極(腐食させる極?)と同じ銅材にしています。
VVFケーブルという銅線が3本束になったようなケーブルを使い、3本それぞれを参照電極、作用極、対極とすることで、ケーブルを淡水に挿入するだけで測定できるというのがポイントのようです。
https://miraie.me/articles/334/
各電極の説明は、下記URLを参考にしたら何とかなる気がします。
構造的にシンプルだし、内部液の交換作業もいらない、測定環境によって電極長さを自由に変えられるというのが特徴です。
著者は、内部液の作業がないだけでメンテナンスフリーと書いてますが、測定毎に新しい銅線を出さないといけないので、線切断や長さ調整、被服をはがす作業を如何に簡単にできるかによって、”フリー”という言葉をつかえるかどうかが決まってきそうです。
現場の作業者的にはめんどくさそうなイメージが少しあります。
銅の参照電極
メンテ以外で従来の参照電極の課題としてあがっているのは、淡水の水質によって腐食電位が変わると、過電圧が変化してしまう点です。
過電圧が高すぎると、電気化学的に反応が起こる電位が高くなってしまったたり、過電圧が低すぎると想定より反応が早かったりして、評価するに値するデータを得るために複数回の測定が必要になります。
過電圧の変化は、対極に対する作用極の腐食電位の変化によるのですが、銅を参照電極にすると、作用極と同じ挙動を示すので、過電圧が安定するらしいです。(理解できていない)
感想
この内容が、腐食評価にどのくらいインパクトがあるのか、いまいち理解できていませんが、従来方法に比べれば、だいぶ安上がりで出来るような気がします。
測定作業自体はそれほど変わらないかもしれませんが、データを解析する段階でやりやすくなっているように感じます。
日立ビルシステムの方が著者に入っていることを考えると、現地調査の作業員がて、測定場所のその場で結果を判断することが容易になるシステムを構築しようとしているのかもしれません。
電気化学測定自体は必要でありつつも、これまで人任せになっていたので、もう少し勉強して口出しできるようになっていきたいと感じました。