【学会誌】表面処理の種類でアルミニウム合金の水素脆性が変化する
こんにちは。
『表面技術』2022年12月号を読んでいるので、備忘録的に記録しておきたいと思います。
12月号の特集はカーボンニュートラルに貢献する表面技術です。
今回読んだ記事のタイトルは『6061-T6アルミニウム合金の水素脆性に及ぼす表面処理の影響』で、著者は広島大学の日野さんと他数名の方々です。
記事の内容
アルミニウム合金の水素脆性が表面処理で変化するかどうかを検証した、という内容です。
元々、アルミニウム合金6061-T6は水素脆化に強い材料のようです。
耐水素脆化の理由は強固な酸化被膜によるものです。
それでも、水素脆化しないわけではないのですが、酸化被膜があるせいで上手く評価できないというのが課題でした。
この記事では表面処理を変え、相対的な評価をすることで、アルミニウム合金の水素脆性評価の可能性を示しています。
記事の中では、以下の表面処理が評価されています。
ダブルジンケート
ダブルジンケート+無電解NiPめっき
ダブルジンケート+電解亜鉛めっき
(表面処理なし)
ポイント
表面処理を行うと疲労強度が低下するため水素脆化が起こっていると考えられる
ダブルジンケートによって酸化膜が除去されるとアルミニウム合金の素地に水素が吸蔵され、更にめっき析出時に発生する水素によって吸蔵量が増えると推定
鉄鋼材料とアルミニウム合金で、表面処理後の疲労強度低下の傾向が異なることから、材料と表面処理の組み合わせによって脆化機構が異なる可能性がある
高圧水素用タンクの材質評価
水素を保管するためには高圧タンクを用いますが、タンク材質が水素脆化すると困りますね。
アルミニウム合金は水素脆化に対する耐性が高いとはいえ、定量的な評価ができないと、どのくらいのリスクがあるか評価できなくて不便なので、このような取り組みも大切だと思いました。
しかし、複数の表面処理をして結果を比べるのだと、実運用できる評価方法にするには時間がかかりそうです。
文中にあるように、脆化機構を解明することができれば、もっと良い方法が出てくると思うので、頑張ってもらいたいです。
今日は以上です。
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