【学会誌】インプランタブルデバイスと表面技術
こんにちは。
『表面技術』2023年1月号を読んでいるので、備忘録的に記録しておきたいと思います。
1月号の特集は「ウェアラブルデバイス及びインプランタブルデバイスと表面処理」となっていて、人が装着するデバイスや人体内で動作するデバイスに関する内容です。
今回読んだ記事のタイトルは『インプランタブルデバイスと表面・界面技術』で、著者は奈良先端科学技術大学院大学の太田淳さんです。
インプランタブルデバイスとは
体に埋め込むデバイスというのは実用化されているものの、個人的にはSF感を感じてしまいます。
記事の内容
インプランタブルデバイスの例として人工視覚を紹介し、そのあと人体内で動作するデバイスに必要な表面技術について説明されています。
人工視覚デバイス
人工視覚には眼球のどこに設置するかで分類されるようです。
網膜上方式:網膜の内側に設置するもの
網膜下方式:網膜と脈絡膜の間に設置するもの
脈絡膜上方式(STS):脈絡膜の外側に設置するもの
この中で網膜上方式と脈絡膜上方式は体外にカメラを設置して、その映像を信号化したものを電磁誘導を使ってデバイスに送信します。デバイスの電極から網膜に刺激を与えることで、視神経から脳へとイメージを届けます。
一方、網膜下方式は、眼球から入ってきた光を光電効果により電力に変えて動作します。そのため、体外カメラや電磁誘導用のコイルが不要になるなどの利点があるそうです。
ただ、現状では発電量が十分ではないため実用化までは至っていないようです。
生体刺激電極
インプランタブルデバイスに必要な表面技術として、生体へ刺激を与えるための電極に関する技術が紹介されています。ポイントは材料選定と表面積です。
まず、電極の材料ですが、これによって刺激効率が変化するそうです。この記事では、CDC(Charge Delivery Capacity)という指標で評価した結果が掲載されています。PtのCDCは~0.4mC/cm2なのに対して、IrOxは1~4mC/cm2と1桁程効率が良くなるようです。
生体内のデバイスは電解液に囲まれているので、イオンとの相互作用を考慮した材料選択(およびデバイス設計)が必要になるようです。
次に表面積ですが、刺激効率は表面積が大きいほど良くなるそうです。
記事では、フェムト秒レーザで加工したPt電極の結果が掲載されています。
表面積が増えた分、CDCの値が大きくなっています。
表面保護膜
生体内で使われるデバイスは、デバイスと生体が余計な干渉をしないために保護膜を必要とします。
生体適合性のあるチタンやステンレスを使った金属ケースを用いればいいのですが、より小型化するために有機薄膜やALDなどの技術が紹介されています。
ここで求められるのは気密性と生体適合性です。パリレンCが良く使われるそうです。
今日は以上です。
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