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散文詩 鍵っ子の行く道

鍵っ子が道を尋ねてきた
僕の帰る方向はどちらですか
僕は少しいじわるをして
適当な方向を指差した

鍵っ子はありがとうとお礼を言って
その方向へと歩き出した
僕は面白そうだったので
鍵っ子の後をそっと追いかけた

鍵っ子はたくさんの鍵を持っていた
道行く先々でいろんな物を開けていった
お腹が空くと適当な家のドアを開けて
台所で夕飯のおかずをつまみ食いした

食べることに飽きたら
鍵っ子は二階へ上がって
その家の子どもの部屋らしい部屋のドアを開けて
きっと女の子だろう机の引き出しの鍵を開けて
少女の日記を読んで

ゲラゲラ笑った

日記を読むのにも飽きたら
そっと鍵を閉めて家を出て
また鍵っ子は歩き出した
僕はそっと後をつける

大分歩いて
鍵っ子はやっとこの道が
自分が帰る方向ではないことに気がついた

鍵っ子は途方に暮れたようだったが
しばらくじっとして
そして決心を決めたように
近くにある家の中へ入った

鍵っ子はその家を今後のすみかに決定したようだった

その家は
僕の家だ
僕の家にいた家族は
鍵っ子を歓迎していた

鍵っ子は僕の家の子になった
僕は帰るところを失った
僕には鍵はない


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