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マグマの痕

 腕の裂傷のことなのだが、凄い数、ある。
 皮膚がでこぼこしている。
 今まであまり違和感無かったし、あるようで見えてなかったからか、鏡に映ったのを見て、
「あれ?こんなにあった?」と思った。

 そりゃあひどい精神状態が続いた頃があった。
 傷がなかなか塞がらなかった時、「腐っちゃうよ、とりあえず診せてみようよ」と薬剤師さんに言われても、腐るのかぁ…ととにかくぼんやりしていたから、すぐそこだから、と紹介された医院に寄った。
「縫うと、抜糸しなきゃだからまた1週間後来れる?」ような事を言われて来れない場所だから、来れない、1ヶ月後なら来れる、と答えたら応急処置になった。
その応急処置がかぶれて痒くて(笑)
テープの周りが、蕁麻疹みたいになって、痒いのが我慢できない(笑)
裂傷は痛くないのに、痒いのはわかるからなんだコレ、と思っていた。
 たまに行ってた内科医師に事情を話し痒いのをなんとかしたい、と言うと、すぐ出来るから縫っちゃうか、それで痒くならないよう薬を塗ろう、というような処置になった。
縫われながら
「自分で切っておいて処置して矛盾がある、矛盾は嫌だ」と内心モゴモゴして、口に出てた。
 先生も看護師さんも責めないし怒る事もなく、ただ穏やかに処置してくれた。
 これも不思議だった。

本当にその頃は、ただ、探してた気がする。
血液なのか、マグマなのか、確かめる。
赤い血液なら人間、他の色なら人間じゃない、みたいな。
人間のフリをもう止めたくて、何かないか、みたいな、見える何かが、あればいい。

意味はあるが、理解されない。
最初の頃は、長い服で隠せとか傷を消す薬を塗れとか言われたが、従わなかった。
意味がないから必要性が感じられなかったし、なにより、それを言う人に対して猜疑心が強かった。
 
 ある年、草木染めの体験中、テキパキと作業してる私に対し、「腕、どうしたの?」と偶然同じ班になった見ず知らずのおばさまに、尋ねられ「これは自傷痕です」と、ディスイズ、ア、ペン、と言うように答えたら「そうなんだ」と言われ、そうです、という顔で作業を続けていた。

そうです。
それ以外になんもないんですよ。
誰かを責めるためでもないし、誰かに心配されたいわけでもない、ましてや、他人の気を引く為ではないのですよ。

だだ、可視化する為だけのもの。
吐き出せない何かの代わりだった。
自分からの、何かなので、その頃の唯一、
私と自分とのやり取りのひとつの手段だったのだなぁ、と、いまは、位置付けてある。
 地質や地層、化石と同じように、以前こんな事があり、こういう様相を呈している、といった感じ。
 
 
 最近になって、子供の自傷に関して、「目に見える自分でつけた傷の奥に、自分で付けたくなかった目に見えない傷があるから、ねぎらい、優しく手当てしてあげてください」という投稿を読み、ようやく、あの内科医師は、それをしてくれたんだ、と理解した。

 


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