盗まれた自転車

青春よあの盗まれた自転車は今もどこかで走ってて欲しい

高校に合格した際に自転車を買ってもらいました。中学校で使っていたのはホームセンターで売っているような安いのでしたが、自転車通学になるという事で変速機が付いた少しいいやつでした。自転車で15分前後のところに高校があり、3年間なんとか自転車で通うことができました。高校の3年間この自転車で友達と色んなところに行きました。告白をしてフラれ、自転車を押して帰ったこともありました。

高校卒業後電車で1時間半ほどかかるところの予備校で浪人する事にした私は、駅まで高校の青春を共にしたあの自転車で通う日々が始まりました。私は田舎に住んでいたので、高校を卒業する春休みに免許を取り卒業後、車が移動手段になります。そんな中、浪人をして自転車に乗る自分が惨めだとも思いました。

そんなある日、予備校が終わり電車に乗って地元の駅の駐輪場に戻るとあの自転車が無かったのです。青春を一緒に過ごした自転車が無くなるのは、ゴーイングメリー号との別れを思い出すぐらい悲しかったのを覚えています。駅から自宅までの距離が長く、怒りや悲しみは自宅に近づくにつれて増えていきました。

親になぜ鍵をかけなかったのか怒られつつ、警察に盗難届を出しに行く事にしました。もうかれこれ7、8年前の事ですがその時に質問された一つに腹を立てたのを覚えています。それは盗まれた物の価値を聞かれたことです。自転車の価値なんて所有者じゃない人からしたら安いものかもしれませんが、私からしたら高校を共にした思いでがいっぱいな自転車。警察の人にとっては盗難届がいっぱいあり優先順位をつけるかも知れませんが、値段で判断しないで欲しいなと思いました。

そんな自転車をふと先日自転車に乗っている時に思い出しました。盗まれた事に対する怒りや悲しみはもうなく今もどこかで走っていてくれていたら、私の青春もどこかで続いていると思えるのです。

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