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月刊プレイリストボーイ2022年12月号

【12月のプレイリスト】

1.All I Want for Christmas Is You/
ジャスティン・ビーバー&マライア・キャリー
2.People Have The Power/パティ•スミス
3.こらがし•えれじぃ/加川良
4.Fairytale Of New York/ポーグス
5.ゲルニカ/中村一義
6.Sabaku/ZAZEN BOYS
7.千年紀末に降る雪は/キリンジ
8.Merry Christmas Mr.Lawrence(ライブ)/
坂本龍一
9.Amen/オーティス・レディング

【メモ】

12月のプレイリストを作るといって一度もこの曲を選ばないとするとそれは嘘になる。毎年毎年毎年毎年。好むと好まざるにかかわらずリフレーンされるこのメロディ。街中で聞くよりも頭の中で鳴る回数の方が多いメロディ。どうせならジャスティン・ビーバーとのジョイントバージョンで思いっきり芸能界臭を漂わせてやる。好むと好まざるにかかわらず。

ジョン・レノンは「民衆に力を」と歌った。パティ・スミスは「民衆は(既に)力を持ってる」と歌う。何ができるというのか。本当は防衛やら外交やら物騒なことは全部任せてさ、のほほーんと暮らしていたいのだけど、世界は、日本は、捨ておけぬ泥沼にあるようだ。力はあるのか、こんなオレにも。

「恋人たちのクリスマス」で浮かれるのと寒さと飢えのなか己を自嘲するのと、どっちが表でどっちが裏ということはないが、歌の世界ではどっちも虚構。街の景色が少しちがって見えるだけ。20円の焼きそばはすぐに冷めてカピカピに干涸びてしまうのだろうが、25円の焼酎はせめて湯割りであってくれ。

クリスマスイヴのニューヨーク。酔って留置所に入れられているアイルランド男が彼女のことを思い出すシチュエーションは「こがらし・えれじぃ」に劣らぬ寂寥。夏にシェインのドキュメンタリー映画が公開されたこともあり、今年はポーグスをよく聴いた。

スペイン内戦時、反政府軍に加担したナチスドイツが爆撃したゲルニカを表現したピカソの有名な絵。「新世紀だろうがさ、根本は何も変わりゃしない」と歌うこの曲が発表されてからでも20年と少し経つ。今もやっぱり変わらないのか。

向井秀徳が講談師っぽい調子で語る東京が自分の思い描く東京にいちばん近いかも知れない。憧れと虚しさとどこか間の抜けた可笑しみ。この曲はオケがエレクトロなので、いっそう都会の荒涼とした冷たさが際立って良い。

悲しげな善意の使者=サンタクロースを「赤い鬼が来たよと洒落てみるか」とおちょくり、「玩具とひきかえに何を貰う?」と問う。高樹さんの才気走ったアイロニー全開の名曲。筒井康隆の短編を読むような感触の曲。

侵略戦争が起き、世界で最も有名と思われる我が国の音楽家がステージ4を明かす。2022年の12月ほど、この旋律がジンと来た年はない。メロディを「旋律」という時は真に厳かな時。

キリスト信仰がなくてもクリスマスにははしゃぐし、世界平和を祈る時はこう言うのかも。EverybodySay!Amen!



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