「シン・エヴァンゲリオン劇場版:||」その②〜シンジが再び×××に戻ったワケ〜
どうも、安部スナヲです。
前回に引き続き、シン・エヴァ劇場版の解説&感想その②です。
前回の記事(その①)はこちら。
この記事は、映画の核心となる部分は伏せながら内容に触れつつ感想を述べるというネタバレポリシーのもとに書いています。
なのでまだ映画を観ていない人が、これを読んだあとに観ても、おいしい部分は楽しめると思いますが、内容を一切知りたくないという方はご注意ください。というか、そういう人はそもそもnoteなんか見るのやめなはれ。
ちなみに本作を語る上で必要な、エヴァ過去作の内容に関してはネタバレ100%です。
さて、前作「Q」までの経緯により、心に深いダメージを負い、廃人同然になってしまったシンジくん。
しかし、ずっと廃人のままでいる彼ではありません。
何やかんやゆーて、やる時はやる男です。
さもなくば映画が前に進みません。
そんなシンジに再び力を与えるのは、やはり彼女たち、ともに第3村に来たアヤナミとアスカです。
シンジが沈み切っている一方で彼女たちも、こののどかな村で、それぞれ静かな日々を過ごします。
アヤナミ(仮称)の心。
エヴァきっての「キュン死」ポイントは、なんといってもアヤナミに心が芽生える瞬間を見た時です。
自分はネルフの命令のまま、エヴァに乗るだけ…
そんなアイデンティティしか持ち得ず、どこまでも受け身に見えるアヤナミが、時に意表を突く行動をとることがあります。
そして、その行動の動機となった衝動や本心を言葉にします。
第16使徒アルミサエルを抱き込んで自爆する直前、初めて涙を流した時。(TVアニメ版)
「碇くんと、いっしょになりたい」
シンジとゲンドウ父子の確執を解く為に、食事会を企画した時。(新劇場版「破」)
「碇くんといっしょにいるとポカポカする。
私も碇くんにポカポカして欲しい。
碇司令と仲良くなってポカポカして欲しいと思う」
第10使徒に苦戦する2号機の援護攻撃に出た時。(新劇場版「破」)
「碇くんがもう、
エヴァに乗らなくてもいいようにする」
碇くん、碇くん、碇くん、碇くん。
これが庵野氏の抑圧された女性依存の顕れであると捉えるとゲップが出そうですが、これらの言葉を聞くたび、アヤナミが空虚ではないことがわかります。
しかし、本作のアヤナミはその綾波レイではありません。
前作「Q」からの黒いプラグスーツを着たアヤナミは、また別の複製体なので、上述の心温まるエピソードとは無関係。あれほど碇くん、碇くん言ってたことも、当然知りません。
シンジはそのことにショックを受け、例によって拗ねますが、観ているこちらも、折角彼女の中に芽生えかけた人格が摘まれたような哀しさを覚えます。
だけど、人格が芽生え切っていないということは、子供の様に無垢であるということ。
私は本作でのアヤナミを見て、それに気づきました。
第3村で農作物をつくるおばさんたちに加わって田植えをしたり、鈴原トウジとヒカリの間に産まれたツバメ(子供の名前です)の子守りをしたりする内に、幼な子がひとつひとつモノを憶え、成長していくように、アヤナミの中で人間らしさが育まれていきます。
そうしていく中でシンジに言った、これこそ無垢であるが故のあるひとことが、彼を立ち直らせるきっかけとなります。
…と、そんな心温まる展開のあとには必ず奈落の底に落とされる…それがエヴァです。
第3村の人たちと触れ合いながら、ずっとここで暮らしたいと願う一方、自分がネルフでしか生きられないことを悟ったアヤナミレイ(仮称)は、また無情な運命に…
アスカの苦言。
惣流さんでも式波さんでも、シリーズ全編を通して、誰よりもしんどい戦いをして来たのはアスカだと思います。
第3村でのアスカは、相田ケンスケの住まいに身を寄せながら、また次なる戦いに備えていました。
相変わらず、ずっとゲームをしながら笑
そんなアスカに、農作業に携わるようになったアヤナミがこう尋ねます。
「あなたはこの村にいて、仕事をしないの?」
すると、アスカはこう答えます。
「あんたバカぁ?ここは私がいるところじゃない、
守るところよ!」
なんてオトコマエな台詞でしょう。
引きこもりのニートがこんなことを言ったら、シバきますが、アスカが言うと説得力があります。
なあなあを拒み、エヴァパイロットとしてのプロ意識、使命感への迷いのなさがこの言葉には込められています。
本作のアスカは、いつにも増して刺さる台詞が多いです。
特に腑抜けたシンジを激励する為に、殆ど罵倒に近い言葉を浴びせまくりますが、それらはまるで映画を観てる自分に向けて言われているような、辛辣で教訓めいた重みを持ってグサグサ刺さります。
「そうやって心を閉じて誰も見ない。こいつの常套手
段でしょ」
「どうせ生きたくもないけど死にたくもないって
だけなんだから」
「どうせやることなすこと裏目に出て、取り返しがつかなくなって、全部自分のせいだから、もう何もしたくないってだけでしょ」
「そんな精神強度だったら、そもそもエヴァに乗らな
いで欲しかったわ、一人で拗ねてろ、ガキ」
なんちゅう耳の痛い言葉(T . T)
まさかツンデレアニメキャラの14歳少女の苦言に、48歳の私がここまで身につまされるとは。
だけどアスカはもう少女ではありません。
「エヴァの呪縛」により、見た目は14歳のままですが、ニアサードインパクトの後、シンジが初号機内で眠っていた14年間も、彼女は戦い続けていました。
そんなこんなでアヤナミ(仮称)、アスカ、そして第3村の友人たちの支えにより、徐々に生気を取り戻したシンジは、ケンスケの仕事を手伝うようになります。
それからニアサードインパクト後の14年間、彼らが必死で生きて来たことや、あらためて親子について考えさせられるいくつかの出来事を経て、シンジは自分も大人にならなくてはいけないという気持ちになって行きます。
そして遂に、ミサト率いる反ネルフ組織「ヴィレ」に再び捕らわれることを決意し、アスカとともに空中戦艦A A Aヴンダーに乗ります。
というワケでこの続きは「その③」にて。
さいならごめん。
出典:
「シン・エヴァンゲリオン劇場版」特報3【公式】