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「トップガンマーヴェリック」超人トム・クルーズの映画を超えた「超映画」

どうも、安部スナヲです。

その昔、私にとってトム・クルーズはチャラいアイドル俳優でした。

致命的だったのは「カクテル(1988)」で、同時期の「レインマン(1988)」がいくら大名作でも、彼に対しては天才ダスティン・ホフマンの尻馬にうまく乗ったコバンザメのような、サメが馬に乗るとか無茶苦茶なことを言ってしまうほど、イケ好かん印象は根深かったです。

だがしかし!そのようなやっかみめいた偏見は「ミッション・イン・ポッシブル(1996~)シリーズで覆され「マグノリア(2002)」「マイノリティ・リポート(2003)」に至った時には、一生着いて行こうと誓っていました。

それくらい、この人には有無を言わさぬ実力があります。

そして本作「トップガンマーヴェリック」を観た今、この人は本当に人間ではなくて超人か何かではないかと思えてなりません。

この映画はストーリーも製作過程もメイキングもあり得ないことだらけです。

それも「奇跡」ではなく、すべての「あり得なさ」が実力なんだから、たまったもんじゃありません。

こんな人が同じ人間だなんて信じたくない。

だから超人なんです。

そうゆうことにしておきます。

【驚愕!ホンモノの飛行アクション】

某「ならずもの国家」の「ある施設」を破壊するというミッションを遂行するべく、ピート・“マーヴェリック”・ミッチェル大佐(トム・クルーズ)が、トップガンの若きパイロットたちを訓練し、ことに挑む…というのがこの映画のあらましのあらすじです。

これはほとんどドキュメンタリーでもあります。

というのも前作「トップガン(1986)」の飛行シーンにおいて、実際に飛行機で空へ飛んで撮影したものの、訓練経験の浅いキャスト達は空の重圧に耐えることができずシッチャカメッチカ、演技どころではなかったといいます。そらそうなりますわな。

結局、映画にまともに使えたのはトムのわずかな映像だけで、あとはスタジオで別撮りした映像をつぎはぎしたりして仕上げたので、何だか不自然で陳腐な飛行シーンになってしまいました。

そこで悔しい思いをしたこともあり、2作目をつくるなら「すべて実際に撮影する」ということがトムの譲れない信念でした。

なので今回は本物の戦闘機F/A-18で実際に飛びながら、ちゃんと演技ができるよう、ベテランパイロットであるトム自身が若いキャスト達を訓練したそうです。

キャストひとりひとりのトレーニングプログラムを作り、インストラクターを雇って飛行を学ばせ、G(重力加速度への耐性)を引き上げる心身の強化といった過酷なプログラムを5ヶ月かけて行いました。

そうして撮影に挑んだ飛行アクションのクオリティと臨場感は、前作とは雲泥の差です。

まず機体がアクロバティックに旋回したりする様子と、コックピット内のパイロットの必死な様子がバッチリ連動しているので、見ているこちらも力が入らずにはいられません。

そしてパイロットが身体に受ける重圧もより体感的で、こんな顔の歪み方は実際の空でしかあり得ないんだろうなと感じさせられます。

とにかくあのような飛行アクションは味わったことがありません。 

【火の玉ロック】

マーヴェリックが指導する若きパイロットのひとりにブラッドリー・“ルースター”・ブラッドショー大尉(マイルズ・テラー)がいます。

彼はかつてのマーヴェリックの親友で、飛行トレーニング中に事故死したグースの息子です。

事故の原因は「ジェット後流」といって、別の飛行機の排気ガスを吸い込んだことで、エンジンが止まってしまう現象によるものでした。

事故が起きた飛行機に同乗していたマーヴェリックには過失はなかったとされていますが、彼はずっと自責の念を抱えていました。(ライバルであるアイスマンが乗る飛行機をムキになって追従したのが原因ともとれますが)

今作の序盤、海軍御用達のBARでルースターがピアノを弾き語りする姿を、マーヴェリックが見ているシーンがあります。

マーヴェリックの脳裏に、かつてのグースの姿が重る…。

あの頃のグースと同じようなサングラスにアロハシャツという出立ちで、グースが歌っていた「火の玉ロック」を、今目の前で大人になったルースターが歌っている…。

この時の懐かしさや慈しみと後悔がない混ぜになったマーヴェリックの表情にグッと来ます。

そんなマーヴェリックに対して、ルースターはやはり遺恨のような蟠りを抱いているのですが、その本当の理由は父の死ではなかった⁈

と、それは映画を観ればわかります。

それはそれとしてこの「火の玉ロック」最近あまり見なくなったアメリカ映画特有の、酒場でバカ騒ぎする若者の熱気がムンムン漂っていて、大好きなシーンです。


【アイスマンの心意気】

そもそも軍上層部からは煙たがられているはみ出し者のマーヴェリックを、トップガンパイロットの教官に推挙したのはこの男です。

前作でマーヴェリックのライバルでありトップガンメンバーでは実力ナンバーワンだったトム・“アイスマン”・カザンスキー(ヴァル・キルマー)

「氷のように冷静な男」と呼ばれる武闘派キャラです。(コールサイン“アイスマン”はそこから来てると思われる)

「キャプテン翼」でいうと日向小次郎みたいな存在でしょうか。

あれから30年を経た今、彼は司令官になっています。

このあたりのマーヴェリックとの関係性の妙も今作のポイントで、実はマーヴェリックがこれまで煙たがられながらも軍でやって来られたのは、出世したかつての同僚アイスマンのおかげだったりします。

そんなアイスマンとマーヴェリックのごく短い再会シーンが、私は今作でいちばん泣けました。

2人の演技も素晴らしいのですが、アイスマン役ヴァル・キルマーの今作への想いや、今の彼が「演じる」ことの困難をどう乗り越えたのかを知ると、さらに感慨が増します。

これについてはネタバレに配慮し、ここでの詳しい記述は避けますが、興味のある方は下の出典元リンクから該当記事を読んでみてください。

その背景を知っていると、よりこの映画を好きになるかも知れません。

私はそうでした。

【トップガンの戦闘機といえば!】

もうひとつ、この映画で意外に盛り上がったポイントは、F-14トムキャットの登場です。

前作「トップガン」によって、ミリタリーマニア以外の人にも広く知れわたった戦闘機。

プラモデルでも人気です。

最新鋭のイカつい戦闘機に比べ、何処かいなたく、クラシカルな魅力のある機体に加え、「可変翼」という特徴が男の子の飛行機好きゴコロをくすぐらずにはいられません(劇中でも翼がウィーンとが動いた時にはニンマリしました)

実質的には2006年にアメリカ海軍での運用を終えていて、今作でマーヴェリックたちが搭乗している機種も基本は現行のF/A-18スーパーホーネットですが、やはり「トップガンといえばF-14」というポップアイコン的なアイテムなので、これが出て来た時には「よ!待ってました!」と声をあげたくなりました。

007でアストンマーチンが出て来た時みたいな感覚といえば、映画好きの人にはわかってもらえるでしょうか。

ただ時代設定が現代の今作に、わざわざ退役したF-14を登場させる為のストーリー運びはかなり強引で「んな阿保な!」とツッコミを入れたくなったのも事実です。

ま、そういうご都合主義こそハリウッド超大作の王道!この際オールOKです。

あー楽しかった。

出典:

映画「トップガンマーヴェリック」公式劇場パンフレット

映画『トップガン マーヴェリック』公式サイト

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