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誰が最後に残るのか?仕手戦の結末とは

4月30日  午前9時

「株式部の場電状況だ!全員聞けよ!!」

「えー株式部です、現在東急電鉄にN証券300万株の成り行き買い、続いてD証券500万株の成り行き、続いてN証券500万株の成り行き」

「聞いたとおりだ全員、東急電車が発車する前に全員乗りこめ!いいな今月は東急一本で行くからな!わかったか!」

「はい!わかりました!」

ご存じの仕手株戦の実況中継である。

この時の東急電鉄は1000円近辺でウロウロしていた株であったのが、あれよあれよの間に5500円までいった事は記憶に新しいと思う。

株というものはそもそも永久にあがり続けるものであれば誰も損する者はいないのである。

しかし現実はそうではなく、悲しい事に神様は同じ東急株を1000円で買う者と5500円で買う者とに分けてしまうのである。

仕手株とはその会社の業績が上がるとか将来性などまったく無視して、あるネタをぶち上げ(ネタ無しでやる場合もあるが)、単に需給戦に持ち込むものである。

上手にやれば短期間に何倍も儲かって、結構ドキドキものの動きをする。

よって根っからの仕手株ファンというのも結構存在する。

この仕手株ファンというのは阪神ファンと共通するところがあって、「やられてもやられても、懲りずに向かってくる」性質を持っている微笑ましい集団である。

仕手を仕掛ける方(仕手筋)からすれば、一年に一回相場をつくれば何十億と儲かるので決してその行動はアセらずにやる。

まず水面下何ヶ月間もでジワジワと目立たないように安い値で1000株、2000株とコツコツと買い集めていってついに手持ち玉が何百万株になった時に、適当な材料などを発表して舞台の幕を一気に上げるのである。

この時の幕上げ係が俗に言う「提灯買い」である。よく「あの銘柄にちょうちんが入った」とかいうあれである。

とにかく一旦提灯がついたら、各証券会社はそれに乗り遅れまいとして必死に成り行き買いをいれてくるものだから、相場は当然連日の「板寄せ」状態となり値段がつかないまま株価はドンドン上がっていく。

登山でいえば七合目か八合目かにきたころに仕手側はそろそろと動きだす。

すなわち手持ち玉のいくらかずつを先程の大手証券会社の成り行き買いにぶつけていって売り捌くのだ。

株価がどんどん上がっても仕手側としては、持っている株を全部売りぬけなければ勝った事にならない。

まして相場の需給に影響を及ぼすだけの大きな株数を自分で抱えているだけに「売り」に関してはとくに慎重にやる。

なぜなら御本尊(仕手筋本体)が売ってるとわかっただけでその相場は終焉を迎えることになるからである。

そういった理由からどこから売りを出しているかわらないように、売り注文を出す証券会社を分散させる。場合によっては支店まで分散させる気の配り方である。

そして全部売り切ったあとでまだ世間がワイワイ騒いでいる相場をどこかのリゾート地でニンマリ眺めているのである。

何にせよ損するのは一番騒ぎが大きい八合目近辺で飛び乗った一般投資家である。

当然被害者の数ももたいへんな人数であるし金額も相当なものだ。

このたびの東急電車は高いキップ代であった。


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