筑波大大会を熱く振り返る
先日行われた第39回筑波大大会の実行委員長を務めさせていただきました、筑波大学3年の谷野文史と申します。まずは、たくさんの方にご参加いただきありがとうございました。皆さんが会場で楽しそうに自分たちが作り上げた大会を楽しんでいる様子を見ていると本当に、ここまで準備をしてきてよかったと感じていました。
さて今回の筑波大大会、様々なチャレンジをしてきたと各方面で言ってきたのでこの場をお借りしてどういうチャレンジをしてきたのか、どのような狙いがあったのか、そう言ったものを説明していけたらなと思います。
1.なぜ筑波大学体育会オリエンテーリング部にチャレンジが必要だったか?
我が部は44年、筑波大大会は今回を含めて39年という長い歴史を持つ団体です。数字だけ見ると土台がしっかりとした安定感のある団体のように感じるかもしれませんが実はそんなことはありません。我が部は10年程前、衰退期に入っており各代が2-3人しかいない状況がずっと続いていました。筑波大大会もこの時期は開催されず、歴史が途絶えてしまいました。このため、これまで受け継がれていた大会運営ノウハウも途切れてしまいいよいよ部として窮地に立っていました。他大のOBさんが、「あの頃の筑波大を見てもう部が潰れると思っていた。」とおっしゃっているのを聞いて本当に危機的な状況だったんだなと思います。
この部の窮地を救ったのが、野本さん、後藤さん、小柴さん、田中さんらの世代です。彼らは部を愛好会から体育会へと昇格させたり、筑波大大会を復活させたりと様々な策を打ち、部の基盤を作り直したのです!大会運営面でみると大会運営ノウハウをまとめたマニュアルができ、それは今でも受け継がれています。その基盤を楠さんや鈴木さんと言った歴代主将がより強固なものにしていきました。
では、主将のバトンを、実行委員長のバトンを受け継いだ自分には何ができるのか?そう考えたときに、しっかりとした基盤ができた今新たなステージに自分が導かなければならないと思うようになりました。団体の維持だけではなく、部外から認められる団体へ、オリエンテーリング界を引っ張っていく団体へ、成長するための一歩を踏み出そうと考えたわけです。
では、ここからは行ったチャレンジについて具体的に説明をして行きます。
2.広報と大会
広報の大切さについては小柴さんとAsJYOC運営でかなり学ばせていただきました。オリエンテーリング界を見ていて広報するという意識がまだまだ薄いように感じています。Orienteering.comに載せてさえすればなんやかんやくるだろう、テレインやコースさえ面白ければ来てくれるだろう、そんな意識がどこかにはありませんか??経済学的に考えても、これは非常にナンセンスだと思います。毎週開催されるオリエンテーリングの大会の中から、貴重な休日、貴重なお金(特に大学生にとって)を使って行く価値のある大会であるということを我々は消費者に訴えかけていかなければならないのです。「この大会はどこが他の大会と違う価値があるのか(差別化)」、これを広報で伝えていかないと消費者は申し込みをしません。
これを達成するため色々と手を打ったのですが一例として、プログラムのこの広告をあげておきます。一見冴えないこの広告(デザインの時間が足りなかった...)、しかし私はなかなか攻めた広告だと思います。何が攻めているかというと「筑波大大会にお昼を持ってこないでください!!」という謳い文句です。出店が出るよ〜とは色々な大会でみられている広告ですが、何が売られるのか、その量はレースに適切であるかというものがあまり伝わってこないことが多いと感じています。そのため結局はコンビニでお昼を買って持ってきてしまいます。しかし持ってくるな!と言い切ることで他の大会と違って種類も多くて選べる、量もありそうだとある種の安心感を与えることができたのではないかなと感じています。
商品の差別化のための広報の準備ができたら次は広報の対象と、それに対する広報媒体を考えます。今回は参加者数増を目指したため、様々な層をターゲットにしていました。自分の中では4つくらいに分けて広報をしていました。1.競技派層 2.ライト層 3.35歳くらい以上の熟練層 4.初心者およびトレイルランナー層の4つです。まず競技者層には、Newテレインとテクニカルなコースということを動画やテレイン内画像を押し出して行きました。次にライト層ですが、この層を取り入れることが参加者数を増やすためにはとっても大切であり、大会成功の鍵を握ると考えています。競技だけなく何か+αとなるものを作り伝えていかなければなりません。これにはかなり苦心しました。面白い協賛や運営者の様子、筑波の売りの演出を前面に押し出すことでなんとかうまくいったのではないのかなと考えています。また、この2つの層への広報の主戦場はTwitterでした。オリエンティアはTwitter大好きなので。動画であっても、2:20以内におさめてTwitter上で動画を公開することで嫌でも筑波大大会の広報が目に入るようにしました。35歳くらい以上の熟練層については、先ほど述べた2つの層に向けた広報を丁寧でスッキリとした文にまとめFacebookにて広報を行いました。そして今まで筑波では取り組まれてこなかった、初心者やトレランランナーに向けてはそれぞれビラを作って色々なところにまきました。もう少し早くまけば効果がより得られていたのかなと感じています。
さて、頭の中で考えていても意味がないので実際の効果があったのか見て行きましょう。ワクワクですね。
これを見てまずわかることは実はM21A1・2の参加者数(層1)はそんなに増えていないのです。実は今回の参加者数の大幅な増加は女子や他のクラスの増加が要因なのです。(層2・3)。この効果を広報だけによる結果だと断定するのは間違いですが、何らかの効果はあったと感じています。感じているだけでなく、ネット上で取りまとめられているアンケートを見てみると初参加と回答された方が5割以上、一番魅力を感じた点で広報をあげた人は2割という結果が得られました。この結果を見ていると広報戦略がうまくハマったのではないかと感じます。
実は東北大学という毎年の大口の顧客を欠くことがわかっていたため運営者の中では参加者数減が心配されていたのですが、このチャレンジにより上位クラスでの参加者数の維持と他のクラスでの参加者数増を達成することができたのではないかと考えています。
この他にも話したいことはあるのですが、長いので割愛。いうとするならば、「要項をしっかりとデザインしましょう」「視覚的・聴覚を刺激するような広報物を作りましょう」くらいですかね。特に前者についてはThe Ward みたいな要項はダメだと思いますね。見たときにワクワク感がないですもん。
3.谷野式渉外
タイトル嘘です。気にしないでください。今回の大会新たな渉外にチャレンジしたというお話です。そもそも渉外頑張れなければなと感じたのは某スポーツ用品メーカーとの決裂です。(Uから始まるとこですね)体育会のスポンサーとしてうちの部のイベントにも協賛をいただいていたのですが、そのメーカーがオリエンテーリング用品を扱っておらず、双方メリットなしということでお別れしました。そこで私はこれを契機に渉外をしっかりとやっていこうと考えました。
まずはどのように渉外を行なっていこうかと思案しました。その結果、渉外先を3つのレベルに絞ってそれぞれ渉外を行っていくことを決めました。その3つというのが1.大企業 2.地元大企業(県レベル) 3.地元企業(市レベル) です。
オリエンテーリングの大会は地元の土地を借りて行うという性質故、3については過去様々な取り組みが行われてきました。一方で大会の格をあげたり規模を大きくするのに必要な1や2については今まであまり取り組まれてこなかったように感じます。どこかでオリエンテーリングなんかに協賛するわけないだろうという先入観があったのだと思います。その先入観を取り払いチャレンジしたのが私、そして筑波大大会です。
順番が逆ですが、まずは直感的にわかりやすい3から。これはやり方とやる気次第で必ずといっていいほど上手く行きます。3のグループに属する企業は、地元に若い人達が入ってくることを基本的には望んでいます。そのため、渉外の際には全面的に「レースにきた方に地域の魅力を感じてほしい」というスタンスを貫きます。食事関係なら舌で地域の魅力を感じてほしいとか、色々協賛したいと思わせるワードを出すことで協賛していただけると思います。後ポイントとしては、地域の商工会の協力を得ることです。商工会から企業に依頼をしてもらえると、協賛や協力が得やすいです。大会会場にきていた出店は商工会の協力がないとできなかったと思います。
次に2について。2については後援やオリエンテーリングという競技を普及させたいということをカードとして使いました。県レベルの企業だと、地元の魅力を伝えたいという言葉だけでは押しが弱いと思います。ではどうすれば良いか。例えば市の後援や教育委員会の後援を得ることでイベントが格式高いものであると理解してもらうこと、また無料の体験会により子供達にオリエンテーリングを普及したいんだという気持ちを伝えること、こうしたことにより協賛を得やすい状況へと引っ張って行くことができると思います。これは、AsJYOC運営で濱宇津さんや国沢さんから学び、盗んだことです。なるべく上の組織(地域で考えると県や市、教育委員会や商工会)に認めてもらい、格とイベントとして優れていることをアピールすれば協賛をを得やすいと思います。
そして一番興味があるであろう、大企業について。これについては双方のメリットを明示しないと協賛をしてくれないので大変です。企業一つ一つに合わせたメリットを考えなければなりません。もうこれはビジネスです。例えば、ドリンクを提供していただいたR社とのやりとりについて。R社が協賛することのメリットとして一番大きいと考えたのは、メインの消費者に当たる大学生に効果的に製品を配り普及できるということです。オリエンテーリングの大会のメインの参加者は大学生であるという強みをぶつけたのです。では大学で配ればいいのではという話ではありますが、R社は製品をスポーツと掛け合わせたいと考えていたためこれもマッチしました。こうしたメリット提示を各企業に行い上手くいったものが2割、失敗が8割でした。成功例ばかり目につきますが、ほんと失敗だらけでした。例えば、P社(最近ゲームの売れ行きが絶好超、イヌヌワン)にP社のストーリーは地図を見ながら冒険することである、これは我々の競技と似ているというほぼ暴論のようなことをメールして長文でお断りメールが来たり、運営者のレンタカー安くしたいと考えてT社にメールしたらその日のうちに断られたりと、行き当たりばっかりでした。でもチャレンジしたおかげで新たな道を切り開くことができたと私は考えています。
協賛のための資料
その次のポイントは...しつこさと熱さです。...は?とお思いでしょうが社会人の方なら少しわかっていただけるのではないでしょうか?結局、最後協賛していただけるかどうかは渉外している人の態度によると思います。私は運よく、熱くてしつこい奴だったので結構話だけは聞いてもらえることは多かったと思います。世の中、チャレンジする人・一生懸命な人を雑に扱わないのだなとは感じました。
4.後書き
ここまで読んでくださった方ありがとうございます。大会の競技ではないところのチャレンジを今回紹介させていただきました。今回私がこのようなチャレンジをする余裕があったのは同期である43期のみんなの仕事ぶりの素晴らしさのおかげだと思います。特に競技は地図・コースチェックやポ確で色々意見をいったぐらいですんで、ほとんど競責の和奏とマッパー・コースセッターの小牧のおかげだと考えています。大会運営しんどいこともありますが、ぜひ色々チャレンジして楽しみながらやってみたらどうでしょうか?
そして私ごとではありますが、JOAのコントローラーの資格をとりました。公認大会開けます。お声がけお待ちしております。
5.苦労話
ここからは読みたい人だけ!メンヘラモードで書きますのでお許しください。今回の大会運営ほんとに楽しかったのですが、苦しんでいた今年の3月頃の話をします。
この頃は本当にしんどかった。大会まわりみちにも書きましたがこの頃は自分を見失っていました。自分のやりたいこと、改革したいことに対して果たして部員のみんなにそれを求められているのか?もう少し自分のことに関していうと、自分はこの部にとって果たして必要な存在なのだろうか。こんなにも頑張っているのになぜ認めてもらえないのだろうか。わからなくなってしまいました。わけがわからなくて、怖くて、さみしくて。後夜祭の時に一気にそんな気持ちが爆発して、泣いていたのが今でも鮮明に覚えています(S先輩、I君あの時はごめんなさい)
でもそれをきっかけに自分の気持ちを話すようになって、こんな自分の話を聞いてくれる人がいてくれて。本当に人には恵まれたのかなと思います。今ではそんな人や部が大好きです。だからその人たちに喜んでもらえるように頑張りたいと思っています。
こうやって文章に書くのも自分のやったことに対して認めて欲しいからです。めんどくさい性格ですが、これからも谷野をよろしくお願いいたします。頑張るので。