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実業家と銀行家(365夢Screen116)

シルビオ・ゲゼルの偉大な洞察は、
全物質がエントロピーの法則に抗し得ない世界で
通貨だけが劣化しないという
従来の通貨の詐術を見破ったことだった。

そして彼がその詐術に対抗して打ち出したのが
劣化する貨幣「自由貨幣」の概念だった。

彼自身の生涯ではこの「自由貨幣」を
地上に実現することは叶わなかったが、
この「減価通貨」の実験は
後に実践された何度かの実験で
驚くべき成功を収めている。

しかしこの通貨の成功は
地上の支配層が確立していた
各国の中央銀行群が許容できるものではなく、
最初の成功の段階で押しつぶされた。

かくてこの「減価通貨」の概念は
一国の法廷痛通貨として活かされる道は閉ざされ、
わずかに辺域での「地域通貨」の試みとして
受け継がれてきただけだった。

しかし、シルビオ・ゲゼルが
彼の「自由貨幣」として夢見たのは、
一国の法定通貨としての可能性だった。

「自由貨幣」にインスピレーションを受けて
多呂ご兄弟が発明した「FBS通貨」での工夫は、
「自由貨幣」に通貨の3つの基本機能、
①「交換媒介」機能、
②「価値尺度」機能
③「価値保蔵」機能のそれぞれに
個別の媒体を用意して、
各媒体に固有の機能を分担させることだった。

この内、
①「交換媒介」機能と③「価値保蔵」機能の
固有媒体については先に触れた。
https://note.com/advaita/n/n1f9704cdabee

では、
②「価値尺度」機能はどのような形態で
どのように実現されるのか?

現在の地球の経済社会が
これほど不安定化しているのは、
流通通貨の発行量と
価値保蔵通貨の発行量の規模が
極端に偏っていることに起因している。

端的に言うなら、
実体経済の規模とマネー経済の規模の
極端なスケールギャップということだ。

なぜそうなるのか?
もともと現在の各国の国際金融通貨は
金の両替商が預かった金の「預り証」として
発行されたものだった。

やがて金の両替商が金貸し業を専門とするに及んで、
実際は存在しない金の預り証が発行される
詐欺的な事態が起こるまで
さして時間はかからなかったことだろう。

実際は存在しない金の借用証書を発行して、
預かり賃(利子)を受け取るわけだから、
この取引は一方的に両替商の設けだけが膨らむ。

やがて両替商は
銀行家という金貸し(融資)専門業となって、
金の「預り証」だったものの発行は、
いわゆる「信用創造」という詐術に化ける。
銀行家は望むがままの金額を書いて、
それを借金証書として借り手に押し
つけることができるスーパーパワーを手にする。

いわゆる「実体経済」とは、
この「銀行券」(借金証書)を受け取る者たちの
経済活動の世界だ。

「実体経済」圏の経済活動家(実業家)は、
その経済活動のすべてがマイナスから始まる。

たとえば、ある実業家がある年度初頭に
銀行家から100万円を借りたとしよう。
実業家はー100万から活動を開始する。
そのとき銀行家は、ただ「100万」という
数字を相手の口座に書き込んだだけだ。
つまり実際は0から始まっている。

1年後に実業家が200万円を稼いで、
80万円で生活し、元利合わせて
120万円を銀行家に完済したとする。

実業家は1年間働いて、
200万円の価値を生みだし、
80万円で生き延びて、
結局1年後の現在、元の木阿弥の0円に戻る。

その間銀行家は、信用創造で書いた100万が
どのような成果を上げるのかを待ちながら、
1年後の現在は、めでたく120万のプラスになる。
今年もまた信用創造は100万にしておこうか?

これが銀行家の世界(マネー経済圏)と、
実業家の世界(実体経済圏)の違いだ。

これで「マネー経済圏」と「実体経済圏」が
対等な規模を維持できるわけがないのが
わかるだろうか?

「FBS通貨」の「Balance」機能については
また稿を改めよう。

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