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Advanced Squad Leader (ASL) 勝利への道:Cold Crocodiles(攻撃側の視点から)
(For English speakers, DeepL translator app is useful. -> https://www.deepl.com/translator)
シナリオの概要
45年1月、オランダのシント・ヨースト。英第12軍団によるブラックコック作戦の一コマを描いたシナリオ。そばに運河のある村を攻略しようとするイギリス軍と、村を死守せんととするドイツ軍の激戦です。
プレイエリアは以下のとおり。右が北です。防御側は赤点線より右に初期配置可能。
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イギリス軍の勝利条件は、ゲーム終了時にドイツ軍よりもVPを得ていることです。両軍ともVPはCVPに加え、石造建物1棟ごとに4VPを獲得します。
防御側のドイツ軍の初期戦力は以下のとおり。SANは5、ELRは3です。
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運河の西、V列から北に初期配置できます。
ドイツ軍は第4ターンに増援があります。盤外で6MPを消費した状態で、東側(以下「下」と呼ぶ)盤端の(3か所ある)道路ヘクスより進入します。
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攻撃側のイギリス軍の初期戦力は以下のとおり。SANは2、ELRは4です。南側(以下「左」と呼ぶ)盤端より進入します。
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攻撃側のイギリス軍は第4ターンに増援があります。西側(以下「上」と呼ぶ)盤端より進入します。
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SSRは以下のとおり。
1. ECは普通、風は無し。築壕は禁止。水障害は結氷している。
2. 全建物は平屋。橋は23P7にしか架かっていない。谷は存在せず、それはレベル0とみなすが、地形はそのまま存在する。
3. イギリス軍は80+mm OBAが与えられ、運河西の南端のレベル3(場所は初期配置前に決定)にいる盤外観測員が管制する。
4. ドイツ軍は、1個分隊(相当)とそれにスタックするSMC/SWをHIPで初期配置できる。
5. JgPz IVはシュルツェンを装備している。
初期配置の考察
今回は当方が、攻撃側のイギリス軍を担当。防御側のドイツ軍の初期配置は以下のとおり。
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どれが本物で、どれがダミースタックか、見当も尽きませんが、陣容は予想の範囲内でした。
どのような陣容であれ、こちらの腹づもりは決まっていました―運河の向こうの4つの建物と(4ターン目に進入する)2両のIV号駆逐戦車を討ち取る、です。
海外のAARをいくつか読みましたが、橋を渡って運河を越える発想をもったイギリス軍プレイヤーは皆無でした。ドイツ軍側も、相手が橋を渡ってくるとは想定していません。
それに挑戦します。
具体的には、第4イギリス軍ターン終了時の時点で、以下の状況を目指します。
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戦車4両が橋を渡って、続く第4ドイツ軍ターンに入って来るIV号駆逐戦車を、即撃破できる状態を確立します。
待ち構えているとはいえ、命中率は高くはありません。短時間の照準と小さい目標のため+5 DRMあり、5以下の出目が必要です。
あらかじめ入口に地域目標の捕捉マーカーを付けておけば6以下となりますが、それで6ゾロが出ると悲劇。主砲が故障では、ブラフにすらならないので、それはしないかなと。
またクロムウェル戦車の75mm砲では、IV号駆逐戦車の正面装甲を貫通できません。真ん中の道路を2両続けて入ってくれば、1両は取り逃がす可能性が高いです。
そこは、後からやってくるPIAT隊に頑張ってもらいたいところ。
運しだいですが、2両を速やかに撃破すれば7CVP×2両=14CVP。
後続の歩兵(あるいは戦車を降りた戦車兵)によって4つの建物を占拠すれば4VP×4=16VP。
併せて30VPです。
また、運河の外の建物は18棟(×4=72VP)あります。うち、ほぼ確実にたやすく占領できるのは、ドイツ軍初期配置エリア外の3棟(×4=12VP)。
さらに、クロコダイルの脅威効果で、3棟(×4=12VP)はさほどの損害もなく確保できるでしょう。
さしあたり、彼我のユニットのCVPは無視して、30+12+12=54VP。
この場合、ドイツ軍の確保している建物は12棟(×4=48VP)。
6VPのアドバンテージでイギリス軍の勝利となります。
もちろん、この胸算用どおりいかないでしょう。戦車のCVPは大きく、パンツァーファウストや88ミリ砲のラッキーヒットで、余分に建物を奪取せねばならない可能性は大。その場合の対策は、その時に立てるとします。
また、今回の対戦では、1つの課題を設定しました。 CVPが絡んでくるシナリオは、どうしても長考になりがちですが、あえて早指しを目指します。これは今回のシナリオに限らずですが、対面戦の場合は1日のプレイ時間がおのずと限られ、納得のゆくまで長考してるとあっという間に日が暮れます。プレイの精度を落とさず、早く指す。今回からそれを意識してのぞみます(早指しのコツについては、経験を積んで、いずれコラムでまとめるでしょう)。
さて、こちらの初期配置は以下のとおり。
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先に進む前に、ASL Scenario ArchiveのYouTubeチャンネルをざっと見ておくとよいでしょう。後で読んでいって、全然プレイスタイルが異なることに、ちょっと驚くかと思います。
第1イギリス軍ターンの考察と進行
プレイはこちらのOBAのチット引きから始まります。無事、黒チットを引けましたが、観測弾は、観測員の死角に落ちました。
後は全員を単純に右側に侵入させるだけです。
特に何もなくこのターンは終わりました。
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第1ドイツ軍ターンの考察と進行
ドイツ軍は1個分隊を展開したのち、こちらの進撃路を多少は意識した移動を行ないました。つまり、運河側にいくばくかのユニットを動かしてきたのです。
こちらのアクションはOBAだけ。観測弾を敵のいる方向に修正しましたが、そこはあいにく観測員の死角ヘクスでした。
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第2イギリス軍ターンの考察と進行
このターンもひたすら前進あるのみ。最前線でへばりついているドイツ軍のユニットはおそらくダミーでしょう。これらを踏み潰して行くことに腐心します。
PFPhに最初のOBAが炸裂。石造建物にいた5-4-8分隊にMCを強いますが、これはパス。
続くMPhとAFPhでダミースタック2個を消しました。
MPhに10-2指揮官のスタックが、(ダミースタックのいる)木造建物に進入した際、遠くからMMGの攻撃を受けました。果樹園が2つかかるも、砲腔照準のおかげでDRMは低く、一瞬ヒヤリとしましたが、無事でした。
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第2ドイツ軍ターンの考察と進行
このターンの敵の動きは想定の範囲内でした。OBAを意識して前線のユニットが下がっていき、上にいたユニットたちは、運河方面の戦力増強のため、そして、やがてやってくるクロコダイルの脅威を避けるため、こころもち集結し始めています。
OBAは着弾をずらし、最後のダミースタックを消しました。
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第3イギリス軍ターンの考察と進行
さらに各ユニットを進めます。次のターンに戦車たちは運河を渡るので、(そうする意図があることを気どられない位置まで)接近し、機動状態でMPhを終えます。歩兵も、運河をのぞむ場所まで歩度を速めます。
ここまで淡々と―あたかもテンプレ通りのように―プレイは進んできましたが、次のターンから、いよいよ地獄の釜が蓋を開くのです。
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第3ドイツ軍ターンの考察と進行
PFPh、ドイツ軍のヘビースタック(9-2指揮官と2個分隊)が姿を現し、こちらの10-2指揮官スタックへ射撃をかましてきました。
20FPの出目はピンゾロ。10-2指揮官と1個分隊がKIAで倒れ、残る2個分隊も散々な目に遭います。
しかし、このことで確認状態となった敵へ、OBAが(追加チットなしで)砲弾の雨を降らせることができ、8-0指揮官が負傷、3個分隊が混乱(うち2個はELR超え)します。
OBAは次のターンにFFE:2となって持続砲撃するので、これは向こうにとって災厄以外の何物でもないでしょう。
このターンは、一番重要な歩兵スタックの双方痛み分けに終わりました。
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第4イギリス軍ターンの考察と進行
このターンに、いよいよクロコダイルを含む増援が侵入し、そして4両の中戦車(と可能ならPIAT部隊)を運河の向こうへと渡らせて駆逐戦車を迎え撃つ手筈を整えます。
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まずOBAのFFE:2。5-4-8分隊を混乱させるとともに、回復できなかった9-2指揮官のスタック分隊を損耗・DMさせます。
準備射撃はほかになく、MPhへ。陽動で若干の歩兵を動かして、5-4-8+LMG分隊の射撃をよそへと誘い、PIAT隊を橋に渡らせます。そして4両の戦車も。
盤外からの増援も、ほぼ妨害もなく進入できました。例外的に、右端の2-4-7HSが、HIPの2-3-8HSユニットから臨機射撃を受けましたが、セーフ。そして、88mm対戦車砲も1つ姿を現し、目の前の2-4-7HSに射撃を行ないましたが、効果がなかったうえに、追加射撃で故障しました。
DFPhとAFPhは特筆すべきことは起きず、RtPhに9-2指揮官スタックは匍匐後退するも、FFE:2に再度さらされて壊滅的な打撃を受けます。
ここでドイツ軍プレイヤーは、継続は不可能と投了しました。
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今回の対戦を振り返って
今回の対戦は、自分でも想定しないくらいOBAが活躍し、ドイツ軍の最重要な前衛を壊滅させました。これはOBAがすごいというよりも、ドイツ軍が成り行きから不必要なまでに密集してしまったことが、大きいでしょう。また、仮にここまでOBAが炸裂しなくても、海外の対戦記録を研究したうえでの、常道を覆した(しかしリスク大の奇策でもない)作戦行動は、さぞやドイツ軍を翻弄したに違いありません。学ぶものが大きい対戦でした。