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山の日に「あざみの歌」を偲ぶ

「山の日」(8月11日)は、平成28年から始まる最も新しい祝日です。

山に親しむ機会を得て、山の恩恵に感謝する──制定の主旨ですが、他人はともかく私の気持ちは「余計なお世話だけど休みが増えるからOK!」。

誤解のなきよう前もって言うと、私は「山の恩恵」には感謝しています。子供のころから六甲山を眺めて生きてきた私にとって「情緒の安定」こそ最大の「山の恩恵」です。

故郷の岩手山(姫神山?)を詠んだ、石川啄木の有名な歌があります。

ふるさとの山に向かひて言うことなし
ふるさとの山はありがたきかな

こんなわかりやすい歌はない、というくらい、何の解説もいらない、100 %同意できる内容です。


芦屋川から見える六甲山

この啄木の歌に新井満さんが作曲した「山に向かひて」が公開されています(CDも)。東日本大震災からの復興を支援する「復興支援音楽祭 歌の絆プロジェクト」の一環として。

S 02 70 (youtube.com)

私が「山の日」から連想するのは「あざみの歌」です。

まことに唐突な話なんですが、オカリナを始めた当初から練習曲のひとつとして私の楽譜ファイルに入っています。

いまでは園芸品種として人気のあるアザミ、私の子供のころは野山や川の土手などいたるところで見かけた野草です。紫色の愛らしい花姿とは裏腹にトゲトゲしい葉っぱで、安易に手を伸ばすとチクッと刺されます。

遊びに夢中のガキどもは当然のことながらこの花には見向きもしなかったし、思い出のなかに接点はありません。

にもかかわらず、当初から「あざみの歌」に親しみがあったのが不思議で、遠い昔の記憶を辿っていくと、亡くなった父親がよく口ずさんでいたことに突き当たりました。

「あざみの歌」は、昭和20年に復員してきた横井弘が、疎開先の長野県霧ヶ峰にある八島ケ湿原に咲いていたあざみを見て書いたもの。作曲は八州秀章で昭和24年(1949)、NHKラジオ歌謡で発表され大ヒット。

亡くなった父親は山が好きで、子供の私を連れてよく六甲山へ行きました。横井と同じ大正15年生まれですが、共通点はそれぐらい。同世代として何か通ずるものがあったのか、いまでは知るよしもありません。

あざみの歌(オカリナ演奏) (youtube.com)
(豊蜂さんのオカリナ演奏。歌詞付きです)

「あざみの歌」は、綺麗な日本語で書かれた、これぞ日本の歌。私が好きなのは2番目で、

高嶺の百合の それよりも
秘めたる夢を ひとすじに
くれない燃ゆる その姿
あざみに深き わが想い♪

この詩人は“雑草のけなげさ”を持つ、あざみのような女性を理想としていたようですね。そのあたりを父親が好きだったのか、そして片思い専門家の私にも引き継がれているのか…。

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