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「春一番」にワクワク
季節が冬から春へと変わるころ、気になるのが「春一番」です。
春一番は、立春(2月3日)から春分(3月20日ごろ)の間に初めて吹く強い南風をいいます。春の訪れを告げる風物詩ですね。
全国の気象台で観測され、気象庁が毎年発表しています。今月3日には北陸地方で春一番の発表があり、観測史上もっとも早い記録を更新しましたが、いまのところ、近畿地方ではまだのようです。
吹く風に季節を感じる感性は日本人特有のものでしょう。日本海に低気圧が発達したとき太平洋から吹く春一番とは逆のケース、つまり、晩秋から初冬にかけて吹く冷たい風は「木枯らし一号」と呼ばれます。
もっとも、春一番が吹いたからといって、すぐに春がやってくるわけではありません。次の日には厳しい寒気が戻ってくることが多く、でも、そうやって「三寒四温」(この言葉もすてき)が続いて春が来るのです。
期間が限られていることで春一番のない年もあり、いま私が来ている沖縄や北日本ではそもそも春一番は吹きません。
春一番にはワクワクさせる語感があるのは事実で、それはおそらく、1970年代に活躍した女性3人組のアイドルグループ「キャンディーズ」の ヒット曲によるものでしょう。
昭和51年(1976)に発売された「春一番」(作詞・作曲、穂口雄右)はキャンディーズの9枚目のシングル曲。当時、芸能に疎かった私でも、「もうすぐ春ですね♪」というサビはよく口ずさんだものです。
春の風としての「春一番」をとてもポジティブに描いています。たとえば、1番の歌詞、
雪がとけて川になって
流れて行きます
つくしの子が恥ずかしげに
顔を出します
もうすぐ春ですねえ
ちょっと気取ってみませんか♪
メルヘンちっくな歌い出しから、風の描写が続きます。
風が吹いて暖かさを
運んできました
どこかの子が隣の子を
迎えにきました♪
全体に女の子目線の明るくてかわいい歌になっています。
(ポコ’s roomさんの軽快な演奏)
ただ、この歌の大ヒットでその後、気象庁に問い合わせが殺到。気象庁は春一番の定義を決め、昭和26年(1951)までさかのぼり、春一番が吹いた日を特定し平年値を作り、「春一番の情報」を発表するようになったそう。ある意味、歴史的な歌となったわけです。
旋風を巻き起こしたキャンディーズは2年後の1978年4月4日、人気絶頂のなか解散。突然の解散宣言で出た「普通の女の子に戻りたい」は、当時の流行語になりました。
多くのファンに惜しまれながら姿を消したキャンディーズは、いまも思い出深い存在になっています。当時、追っかけをしていた私の知り合いは、この時季になると「春はやっぱりキャンディーズだよね」(知らんがな=私)。