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近くにいた「地上の星」
恩師のさくらいりょうこさん(オカリナ教室リーナ★リーナ主宰)が、昨年暮れ、新著『幸せを向いて生きる。』(星湖舎)を出版されました。
さくらい先生が闘病生活をしながら演奏、講演活動をされていることは当ブログでも取り上げましたが、今回、新著を読んで思ったのは「クローン病」の大変さを半分どころか10分の1も理解してなかった、ということ。
クローン病とは「大腸及び小腸の粘膜に慢性の炎症または潰瘍をひきおこす原因不明の疾患の総称」(難病情報センターのHPより)。日本では難病のひとつに指定されていて、発症率は10万人に27人程度とのこと。
21歳で発症したさくらい先生は、医師からこう言われたそうです。
「一生治らないけど、この病気で死ぬことはない」
フルート奏者をめざし、目前に迫っていたフランス留学はキャンセル。以来、今日まで“終わりなき闘病生活”は続いています。それにしても“死なないけど治ることはない”って…まさに病魔ですね。
出版にいたったきっかけは、闘病記専門の出版社「星湖舎」から「クローン病患者と、その家族のために書いてほしい」との依頼があって。
本が出る前、先生は教室のグループラインで生徒さんたちにメッセージを送っているのですが、以下はその一部です。
クローン病と向き合った日々や、その中でどのようにして前を向く力を得たのかを綴りました。(中略)困難な状況にあっても、自分の心の向きを少し変えるだけで未来が変わる――このメッセージが、本書の中心です。
重要なのは後半の部分でしょう。クローン病だけでなく病気のこわいところは、患者の生きる希望を奪うことなんです。先生はこうも述べています。
「一番つらかったのは、夢も目標も持てない時期でした。病気になったことではないのです」
凄絶としか言いようのない闘病生活を知るとそう思います。ですが、同時に「それでも生きている。生きるなら、幸せに向おうじゃないか」と先生は気づくのです。最大のポイントは「選択のチカラ」でした。
幸せを向く生き方の基本は、日常の小さなことから「楽しい」を基準にして選ぶこと。朝起きたら何を食べるか、どんな服を着るか。些細なことでも、「自分で決める」練習を積み重ねていくことで、徐々に「自分が本当に望む選択」を見つけられるようになります。
もちろん、簡単なことではありません。しかし、幸せになるかどうかを決めるのは自分、「自分の人生を変えられるのは自分だけなんです」と。
先生が最終的に辿り着いたのは「断薬」で、クローン病の症状を劇的に変えたレミケードなどあらゆる薬をやめる決断しています(推奨しているわけではありません)。
これからも講演や音楽活動を通して「選択をする勇気や幸せに向かうヒントを伝えていきたい」というさくらい先生もまた「地上の星」なんですね。
一世を風靡したNHKの番組「プロジェクトX」の主題歌。中島みゆきさん、不朽の名曲です。世の中には、人知れず、ひっそりと公になることもなく、誰かにとっては大きな仕事を成し遂げた“名もなき戦士”がいる…。