愛しからずや「芭蕉布」
先週は仕事でずっと東京。休みの日、滞在先の近くにある「芭蕉庵」(松尾芭蕉記念館)に行きました。
隅田川のほとり、深川の地。訪れた日は、企画展「野ざらし紀行の旅340 周年記念」が行なわれていました。芭蕉が着用していた袈裟や、直筆の紙なども展示されていて、芭蕉ファン、俳句愛好家にはたまらないのでは?
現在の三重県伊賀市に生まれ、本名は忠右衛門宗房。芭蕉は俳号です。
芭蕉とはバナナのこと。最初、この事実を知ったときは江戸時代の人がなぜバナナをと思いましたが、正確にはバナナ(実芭蕉)の仲間である糸芭蕉(イトバショウ)で、観葉植物として庭に植えるのが当時流行していました。
草庵には門人たちの寄贈したイトバショウが生い茂ったところから芭蕉庵と呼ばれ、俳号にしたとのこと。ちなみに、記念館の入り口には芭蕉の木が植えてあり、秋の風に葉を揺らしていました。
イトバショウの正式な名称はリュウキュウバショウ(琉球芭蕉)で、日本の南西諸島から東南アジアにかけて分布する常緑多年草木です。
高さ4~5mに成長し、沖縄では「芭蕉布」の材料となります。琉球王国時代、芭蕉布は王族から農民の作業着まで、幅広い用途に使われていました。近代化の波で衰退していたのを有志により復活、現在は伝統工芸として名産品となっています。
芭蕉布に託して沖縄の素晴らしさを歌いあげたのが「芭蕉布」(作曲・譜久原恒勇、作詞・吉川安一)です。
昭和40年(1965)に発表され、倍賞千恵子、森山良子、夏川りみら多くの歌手がカバーしています。音楽の教科書にも採用され、一昨年のNHK朝ドラ「ちむどんどん」で上白石萌歌さんが歌っていたのも記憶に新しい。
個人的にもとても思い入れのある歌で、社会人になったばかりのとき、カラオケに連れて行ってくれた先輩が歌っていました。
「芭蕉布って何?」。そのときの私の気持ちでしたが、いまやカラオケでの十八番であり、オカリナでも“持ち曲”のひとつになっています。
『芭蕉布』 オカリナ 茨木智博・フルート 沼畑香織【リモートアンサンブル】Ocarina: Tomohiro Ibaraki & Flute: Kaori Numahata (youtube.com)
沖縄県民歌といわれるほど、沖縄の素晴らしさを歌いあげており、とりわけ、私が一番好きな歌詞は一番です。
海の青さに 空の青
南の風に 緑葉の
芭蕉は情けに 手を招く
常夏の国 我した島沖縄♪
芭蕉の木の葉は手のような形に見え、風に揺れる様子がまるで誰かを招くような風情で、そこから「芭蕉は情けに手を招く」となっています。
沖縄(宮古島、石垣島も含む)は、仕事でこの2年間に10回も行っており、訪ねるたびに脳裏に「芭蕉布」のメロディーが浮んでくる…。
と書いているうちから、また沖縄に行きたくなりました。