ハノイへ-7泊8日/最終日は待ち望んだソンべ焼きのお店へ そして、離れがたい味と街を堪能しよう
1月5日,2024
ハノイ7日目の朝9時すぎ
帰国したらきっとすぐに恋しくなってしまう
Phở Gia Truyền へもう一度。
最高の朝食を味わいに行こう。
明日の午前便での帰国になるので
丸一日ハノイで過ごせるのは今日が最後。
美味しい味も、
不思議と耳障りではない
いつも聴こえているクラクションの音も
曇りが似合う街並みも
たくさん感じて過ごそう。
滋味というのはこういうことなのかな、
きっとそうなのではないだろうかと
スープを口に運び身体がほっとするような
しみわたる美味しさに悶えながら
料理家の辰巳芳子先生が書かれた
「あなたのために」
という、心尽くしの日々のスープやおつゆものを作るための本を思い出していました。
この本を手にした当時、
自分と家族の為のお料理を始めたばかりの私には
しっかりおやりなさい、と
厳しめの祖母から背中をパンっと叩かれたような
難しい教科書を手にしてしまい、ごめんなさいとそっと本を閉じたくなるような
そんな気持ちになる本でした。
それでも
これは圧倒的に正しい本。美しい本。そして何よりも全部が美味しそう!というのはわかり、
いいですか、これは大事ですよ、
大事なことですよ、と
私の心の忘れてはいけないことを入れておく場所に普段は目立たず収まっています。
食べる人を想い
よくなるようによくなるようにと
鍋中を見守り
人の目に触れぬ内心の仕事を正直にやる
そのように作るべきようにして作られたつゆものは、一口飲んで、肩がほぐれるようにほっとするものです
人を思えば出来ぬはずはない
Phở Gia Truyền のひと口のスープが私に沁みるにつれて浮かび上がってきた
背筋の伸びる正しさが1ページ1ページ書かれている本の中のこれらの言葉。
人を想って作られているからこそ感じる滋味。
そうか、そこに国が違うなど関係あるはずもない。思い出されて当然だ。
温かなスープがなみなみのフォーを前に
様々な国の方々の言葉が聞こえてきます。
私も含めヴェトナムの言葉を話せずに並んでいても優しい笑顔で応じ、誰にも等しく心尽くしの食を1人1人の目の前で作って下さる。
この幸せに国境など無く、皆おなじに。
嬉しいな
またひとつ好きな場所を知ってしまった。
また必ずここに帰ってこよう。
名残惜しく Phở Gia Truyền を正面から眺め、あ、夫はどこかな?と振り返ると
Phở Gia Truyền を右手に見て同じ通りを真っ直ぐ歩いて行くと右側に大好きになったチェー屋さんが現れます。これは行かずにはいられないコースです。
5日目と6日目の昨日に続いて今日で3回目の本当に美味しいチェー屋さん Xoi Che Ba Thin 。
ごちそうさまでした。
さぁ行こうっと、思ったのですが
この感謝のホテル前からGrabをお願いし、
この旅の大きな楽しみのひとつだったソンべ焼きのお店へ
この旅はじめての川向こう
車を降りると静かで空が広い。
お店の開店時間より少し早めの到着。
こちら側はどんな感じなのかな
ひと回りぐるりとお散歩をしてみよう
まだ少し時間があるな
違う道でもうひと回りしようかな
ん?
びっくりしました。
しかも いかにも美味しそうなチェー屋さん。
色とりどりの具材がこんなに沢山並んで、
なんて綺麗!
美味しいチェーを頂きながら
ソンべ焼きのお店の開店を待つなんて
こんな幸せがあるのだろうか…
ソンべ焼きを知ったのは
10年以上前に初めて行ったホーチミンでのこと。
隠れ家的な雰囲気のなかでヴェトナム家庭料理が頂けるという記事を見て楽しみに伺った
Cuc gach quan の2号店。
素朴な藍色の線が引かれた器と
柔らかいアイヴォリーの地の器。
アイヴォリーの平皿は美味しいおかずを食べ進めていくと可愛すぎない色合いの優しいお花が現れます。
手を添えると馴染みも良く
安心する茶色のおかずも鮮やかなお野菜の色も
穏やかに受け止め
幸せはそこにある、と
いつもの食卓を静かに美しく佇ませる器のちから
なんて素敵なのだろうと、
感動するほどに美味しかった一品一品と共に
心に沁み入り
これが私のヴェトナムに大きく惹かれた瞬間のひとつとなり、こちらのお店に伺うのも楽しみに
ホーチミンへの再訪を重ねました。
今のように翻訳アプリなどがあれば少しは違ったかな、どうかな、とも思うのですが当時の私には
なおさらお店の方との意思の疎通が難しく、
とても美味しいです!や
ありがとうございます!
などは、怪しいヴェトナム語プラスのジェスチャーも込みで何とか伝えられていたのではと希望するのですが
この器の名前は何というのですか?や
これらの器を購入出来るところはありますか?
などの細かいやり取りはとても出来ませんでした。
どうしたらあの器を見つけられるかな
何ていう名前なのかな、とそんな事を思いながら
当時Pasteur通りにあった日本人の方がオーナーをされている ZAKKA と言うお店にオーダーメイドのワンピースを仕立てに伺いました。
その時にいらしたオーナーの方のご子息と話が弾んだなかで Cuc gach quanでの出来事をお喋りすると、その器はソンべ焼きと言ってヴェトナムで古くから使われている家庭的な食器なのですが今はほとんど生産されていないようです、などとオーナーの方も加わって下さりながら教えて頂きました。
そしてあるレストランの一画で少しだけれど販売もしているはず、と電話をすぐにかけて確かめても下さいました。
その夜に早速伺い、ソンべ焼きで供される美味しいご飯の後に有難く購入する事が叶ったこの時の古いソンべ焼きの器は、思い出深いとても大切なものになりました。
その後、市場でも注意深く見ていると出会える事があると知り、見つけては少しづつ買い足していましたが Cuc gach quanで心惹かれたような優しいお花の器には出会えず、またソンべ焼きのお店というのは当時まだ私には見つけることが出来ませんでした。
そしてコロナ禍の間に調べ事をしていると、
ホーチミンにソンべ焼きのお店がいくつか出来ていることを知り、NHKの「世界はほしいものにあふれてる」でもソンべ焼きが紹介されたのを大興奮で見ながら、嬉しくて嬉しくてコロナ禍が明けたらぜひぜひ行こう!と楽しみにしていました。
今回数年振りに海外へ行ける機会が訪れたのですが急に決まったこともあり、ホーチミン行きの便は満席で残念ながら取ることが出来ませんでした。それでもハノイが何とか取れ、これはこれで嬉しい!
ソンべ焼きはヴェトナム南部の器だそうなので、
北部のハノイでは見つけることが更に難しいようでした。もしかしたらの週に一度開かれるという骨董市も私たちの日程とは合わずこちらも残念。
ですので今回はソンべ焼きの事はちょっと置いておいて、嬉しいことにギリギリで席を取れた初めてのハノイを、せっかくなのだから沢山楽しもう!と心を切り替えました。
そんななか、とても行きたかったホーチミンのソンべ焼きのお店がハノイでもお店をオープンするという記事を見たのです。そしてそれは私たちの日程にもぴったりでした。
この長い長い気持ちが先ほどの、
美味しいチェーを頂きながら
ソンべ焼きのお店の開店を待つ幸せに
繋がっています。
嬉しい…
美味しいチェーに
清潔な店内、
お店の方々もとても親切にして下さり
思いがけずの嬉しい時間を過ごすことが出来ました。ごちそうさまでした。
チェー屋さんを出るとお目当てのソンべ焼きのお店 em Mèo hanoi はすぐそこに!
2階建ての em Mèo hanoi 。
1階は「世界はほしいものであふれてる」でも紹介されていた若いソンべ焼き作家さんの作品。
2階にはヴィンテージのソンべ焼きが置かれています。
まずは念願の古いソンべ焼きのある上の階へ。
お2階には誰もいらっしゃらず私ひとり。
静かな美しい空間に想像以上の数の
ソンべ焼きがずらりと並び、
この状況に自分の嬉しさの容量がついて行かず
室内に一歩足を踏み入れたそのまま
少しのあいだ動くことが出来ませんでした。
さあ、選ぼう。
私は何を好きだって思うのかな
少し経つとお店の方がいらして
私の好みを聞くとストックの方からも出して来て下さり、本当に幸せな選ぶという時間を過ごしました。
絶対に割ってはいけない大切な袋を抱え、
Grabをお願いしホテルへ。
安全なクローゼットにそっと置きました。
大切なものをホテルに置けてひと安心。
時刻はもう13時すぎ
お昼ごはんにハンザ市場へ行ってみます。
6日目にパンダンリーフ茶を求めてハンザ市場へ行った時に、
地下でヴェトナムの家庭料理が味わえる食堂 Com Binh Dan コムビンザンが目に入り気になっていたのです!
ホーチミンでも楽しみに通ったCom Binh Dan。
ハノイの食堂も楽しみです。
旧市街を名残惜しむ気持ちも込めて
ドンスアン市場までお散歩へ。
ここ歩いていないよね、の道を見つけては進み楽しくなる。明るいホーチミンとは又違う魅力が
街にも食にもハノイにはありました。
明日の帰国が寂しくとても時間が足りません。
4日目に出会ったこのビアホイ。
旧市街の中にあり音はいつも聞こえているのですが、何故だか静けさを感じるような落ち着きがありとても居心地が良いのです。
ネムチュアを食べているのを地元の方が喜んで下さったビアホイもここでした。
嬉しかったな。
ホーチミンを思い返すと、ハノイのように歩いていると自然にビアホイが数多く目に映ると言う風景ではなかったのではないかと思います。確かバックパック通りで入ったビアホイも、わざわざ探して行った記憶があります。
まるで空気のように数多く佇むカフェへ入ることと同じように、気楽に大人が寛げるビアホイは、今回私が体験したハノイの大きな魅力のひとつです。
時刻は17時まえ
今夜はナイトマーケットが開かれる日なので
もう一度ホテルへ戻り、少しお休みをして備えることに。
今朝の朝食 Phở Gia Truyền のお店前で
夫が笑顔の素敵なおばさまから購入していた
葉っぱに包まれた何だか美味しそうなものを頂いてみることに。
テーブルで開くと大きな葉の中から綺麗な緑色!
ひとくち頂いてみると、
葉っぱのグリーンな香りと穀物の何とも素朴な良い香りが もわんと鼻と口を包み、食感はパラパラだけれどモチん。
調べてみると
これはコムと呼ばれる成熟していない餅米で、
未成熟の為に緑色をしていて
バナナと一緒に食べるととても美味しいと書かれていました。
そういえば!
ホテルのお掃除の方から5日目に、お手紙と共に頂いた嬉しいエクストラのバナナがありました。
最高!最高!と2人で盛り上がり
早速…
バナナの甘さとねっとりが緑米のパラパラだけど気持ちモチっに香りと共に合わさり、こーれーは美味しい!バナナ自体も少し青い香りがあり、
固めだけれど粘りもある感じが緑米ととっても良く合います。何の葉っぱなのかな、バナナなのかな、緑米を包んでる葉も良い香り。
美味しかった〜
時刻は19時すぎ
さあ、ナイトマーケットへ出かけよう!
ホテルの方々とのリラックスした挨拶と軽い会話で笑いながら出発。
ホアンキエム湖までの道のりもすっかり慣れて
ホテルも自宅感が出てきています。
こうなると帰国がますます寂しい…
賑やかなナイトマーケット。
沢山の方たちが楽しんでいますが
大晦日に脅威的と言っても良いであろう
人の数を経験したおかげか、
心に余裕があるのを感じます笑
特に何を買うわけではなくとも
歩いていて楽しい。
沢山の方々の楽しそうな声と
お祭りの目に賑やかな色彩が
明日のお別れへの寂しい気持ちを
また来るね!の楽しみな気持ちに変換させてくれます。
そして、
1日目に出逢ってからもう何度頂いたでしょう。
今夜も沢山の方を喜ばせています。
美味しい美味しいサトウキビジュースのお店へ。
サトウキビジュース屋さんからホテルへ向かって進むと何だか美味しそうな
21時まえにホテルへ戻り、
楽しい気持ちでおやすみなさい。
そして早朝5時まえに、
出発の為ホテルのフロントへ降りるとスタッフの方々がキャンプのようにマットで眠っておられて可愛いやら申し訳ないやら。
心地の良い滞在への感謝を伝えると
スタッフの方々からも嬉しい言葉と共に
朝食のパッキングバックまで下さって。
暖かい気持ちでホテルを出発しました。
今回の旅の中心だった旧市街がこの7日間の思いと共に車窓から流れて行きます。
曇り空の似合う、アジアとフランスが合わさった美しい建造物が連なる街中は美味しいものと緑に溢れ、途切れなく聞こえてくるクラクションは心地の良いBGM。
これはもうテーマパークだ。美しい本物のテーマパークだと楽しさに心が震えました。
これと同じ感覚を私は知ってる…
そうだ ヴェネツィアだ
ヴェネツィアに次ぐ
私の心の中の大切なテーマパーク。
なんて素敵なハノイ。
思いがけずに訪れることになった初めてのハノイは、大人がカフェにしようかなビアホイにしようかな、それとも何か食べようかな、
と気分良く気軽に落ち着ける素晴らしい場所が驚くほどあり、この生活が普通であるというのは何て豊かな事なのだろうかと、
こういう世界もあるのだと、教えてくれました。
そしてそんな嬉しい選択を出来る日常が
いつか自分の生活のなかにも欲しいと、
これからの自分の人生を改めて考える旅にもしてくれました。
ありがとうございました ハノイ
また必ずきっと
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