オミクロン変異株?変異体?
kは臨床医かつ生物化学ヲタです。
まず、生物ヲタの視点から。仮に「オミクロン変異株は誤訳!正しくは変異体!」と主張するなら、きちんとオミクロン多様体と訂正すべきです。
というのは・・・日本人類遺伝学会がvariantの日本語訳も変異体から多様体に変えたからです。今は変異体を英訳するとmutantですから。混乱させるのは良くないかなと。
(´・ω・`)
遺伝学用語改訂のお知らせ
d5fdc84ae83d3a9a6627b7ac249e4db0.pdf (jshg.jp)
そして、臨床医の視点から。仮に「変異株と変異体の表現の違いで、診断と治療、命と健康に影響する」なら、一刻も早く訂正し統一をはかるべきと考えます。でも、そんなことはありません。そして厚労省も国立感染症研究所も日本感染症学会もオミクロン「変異株」だし、今更、鼻息荒く主張する必要も、変える必要性も無いと思うのですよ。公的機関がみんなで多様体や変異体に変えるって言うなら、kも逆らうこともしませんが。
んで、高校生物レベルの基本的な視点になると。
科>属>種>株
ヨーグルトでシロタ株とか有名ですが、あれは乳酸菌の中でもちょっと特殊な塊を株と言ってるのですね。
変異体(mutant)は、遺伝子に変異(mutation)が生じたその個体(生命体1個:ウイルスは生命ないので一粒?)の事を言います。遺伝子変異があればmutantなので、性質が変わるかどうかは本来は問いません(そうは言いつつ普通は性質が変わった時に言うし、SFのミュータントは異形の者って感じですが)。そして元とは異なる性質(variation)のある個体(variant)がわちゃわちゃ増えて確立してくると、その遺伝系統の塊を株(strain)、さらに先祖子孫との繋がりで系統(lineage)と表現します。
・変異体(mutant):変異(mutation)のある個体(ないし細胞)
・多様体(variant):多様性(variation)のある個体(ないし細胞)
・株(strain):ある多様体の塊→ある個性を持つ集団
・系統(lineage):時間軸に沿ったある個性を持つ集団
そういう意味で、変異株(mutation した結果生じたstrain)という表現は決して間違っているわけでもないです。むしろ変異体って表現は遺伝学的に言うとmutantだし、基本的に個体を意味するし、variantを変異体と訳すのは昔のやりかただし、で、いろいろおかしい(から遺伝学会が改訂したの)。
まあそんなことに拘って揉めるのは時間の無駄ですし、意味的にも間違ってない変異株で良いのではないでしょうか。