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感染経路の分類

プレコロナ時代からの感染症の教科書には、感染経路の種類について、以下のような記載があります。(COVID-19における重要性の順番とは異なります)

〔分類〕

1)接触感染
 物やヒト表面に付着した感染源が、直接ないし指などを介して対象に運ばれる。
2)飛沫感染
 直径5μmより大きな粒子(飛沫)を介し、直接、対象に付着する。通常1m以内程度にポトッと落ちる。
3)空気感染
 直径5μm以下の粒子(飛沫核)を介する。空中を長い間浮遊する粒子による。
4)媒介感染
 汚染された水、食品、蚊などが病原体を媒介する。

さて。1)-4)を順番に見ていきます。

1)接触感染

水虫のような皮膚科的な接触感染では皮膚→皮膚、皮膚→物→皮膚なので、共用スリッパなどの消毒は重要ですが、COVID-19の場合、目鼻口に入らないと感染成立しないので、最後のハブである手指さえキレイにすれば接触感染はほぼ防げます。これが環境消毒を頑張らなくて良い理由です。

2)飛沫感染

直径5μmより大きな感染性の液状粒子(液滴)による感染と定義されます。厚生労働省の公式PDFを貼っておきます。

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3)空気感染

まずはここに出てくる飛沫核という言葉……。実はこの言葉の解釈が「乾燥の有無」で割れてて、面倒くさい。(´・ω・`)

私が観察した範囲ですが、以下の3パターンあります。

1)乾燥の有無を問わずサイズだけで定義する分類
(医学的)エアロゾル=飛沫核

2)乾燥の有無を考慮する分類
A 乾燥してたら飛沫核・乾燥してないとエアロゾル
B 乾燥の有無を問わずエアロゾル・乾燥してたら飛沫核

ただ厚労省公式や(東京大学を含む)有名大学公式HPでは、乾燥の有無を問いません。なのでここでは一旦、直径5μm以下という大きさだけで定義します。

すると(医学的)エアロゾルと同義になります。

飛沫核=(医学的)エアロゾル

エアロゾルについて詳しくはこちらを。

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ここで疑問が生じます。先日書いたnoteのエアロゾルの定義を見ると、飛沫感染に分類される大きさのなかで小さいもの(5μmより大きくて100μm以下)は工学的なエアロゾルに入るので、空中を漂うはず。ポトッと落ちるは嘘では??

そういう目で富岳のシミュレーション動画を見直してみたら、案外嘘ではないようで。

実際見てみましょう。これは会話のシミュレーションです。相手の顔に届くのはほとんどが青い粒ですね。

右下のバーは粒子の半径です。エアロゾルの定義は直径なので倍にすればよいですね。で大事な色を書き出すと、

赤色:エアロゾルに含まれない飛沫 →定義上飛沫感染
ーーー直径100μmーーー
橙・黃・緑・水色:工学的エアロゾル(の飛沫)→定義上飛沫感染
ーーー直径5μmーーー
青色:医学的エアロゾル=飛沫核 → 定義上空気感染

ちょうど水色と青の間に直径5μmあたりが来てるので、医学的なエアロゾルは青、それ以外は他の色です。そして赤は工業的なエアロゾルにも入らない大きさ。

動画をよく見ると、放出される口の近くでは緑や黄色い粒も舞っていて、橙も少し舞っている。確かに工学的なエアロゾルとして矛盾しない挙動ですね。(なお赤はすぐ真下に落ちる。)

そして、気になるのは、相手の顔に届いているのはほとんどが青、すなわち(医学的)エアロゾルです。

おそらく粒が軽いから気流に乗りやすく、相手の顔に届きやすいのではないか、あと空気中の湿度が低いと途中で乾燥して青に変わる分もあるからだと考えます。

確かに5μmより大きな飛沫は、工学的なエアロゾルではあっても、相手の顔には届きにくい。

これを会食に当てはめると

A 青いエアロゾルを浴びて吸い込む
B テーブルの上の飲食物が飛沫で汚染される

この2つのパターンが考えられます。

しかし既に知られているように、インフルエンザでの実験では、下気道は上気道に比べて1/100程度のウイルス量で発症してしまいます。食品を介して肺に届くには、一度大量のウイルスで上気道で感染してから、誤嚥などで肺に吸い込まれないとなので、少なくとも肺炎については A がメインルートと考えるのが妥当でしょう。

4)媒介感染

COVID-19はマラリアのように蚊で運ばれたりはないのですが、食品を介した感染はありえます。とはいえそれは他の3つの感染経路の延長線上にありますので(例えば感染者の飛沫を浴びまくった料理を食べるとか)、3つの経路を遮断すれば良いですね。

で、経路がわかれば対策も立てられます。

〔対策〕

●接触感染:目口鼻を触る前の手指清潔。
●飛沫感染:離れる。感染性飛沫が飛ばないようにマスクをする。
●空気感染:換気する。感染性エアロゾルを減らすために日常的には不織布マスクをし、濃厚なエアロゾルの発生現場ではN95マスクをする。

ここで見てほしいのは飛沫感染対策には換気がないことで、換気と言えば空気感染対策であるということです。昔から感染症の教科書にはこうかいてありましたので、飛沫接触感染と言っている限り、換気が進みにくいという問題点が出てきます。さきほどの富岳シミュレーションでも、青い粒すなわちエアロゾルが大切なので、換気と不織布マスクが重要なのが分かると思います。

おまけとして、空気感染だとN95以外は無意味と勘違いしているヒトも多いので、不織布マスクが有効な理由をこちらに書きました。

まとめ

ということで、プレコロナ的な感染経路の定義と、各々の対策を見てきました。

富岳シミュレーションを見る限り、会食時も「青い粒」が危ない印象です。青い粒は5μm以下つまり(医学的)エアロゾルに相当し、プレコロナの定義上は空気感染に入ってしまうことが確認できたと思います。

分科会によるマイクロ飛沫感染や、先日の米国CDCによる吸入感染は、コロナのために生じてきた用語なので、今後取り上げます。もう少々お待ち下さい。

追記

例えば青にも信号の青(=緑)から空の青(水色)まであるように、同じ言葉が同じものを指すとは限りません。残念ながら沢山の定義が乱立しているのは事実です。だれかUSB-Cみたいな共通規格を作って欲しいです(泣)

ただ、何処を見ても共通してかいてあるのは「飛沫感染=5μmより大きい」「空気感染=5μm以下」です。なのでそこはfixで良いと考えてます。

飛沫感染=5μmより大きい飛沫、空気感染=5μm以下の乾燥粒子(飛沫核)としている分類もありますが、この場合、5μm以下の小さな飛沫(液滴)が分類上の行き場を失うので、不適切な分類と考えています。

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