【書評】明け方の若者たち
こんにちは、大人の課題図書です。
珍しく恋愛小説を読んでみましたので感想を書いてみました。
どんでん返し要素もあり、面白かったので是非読んでみてください。
【タイトル】明け方の若者たち
著書:カツセ マサヒコ
概要:明大前で開かれた退屈な飲み会。そこで出会った彼女に、一瞬で恋をした。本多劇場で観た舞台。「写ルンです」で撮った江の島。IKEAで買ったセミダブルベッド。フジロックに対抗するために旅をした7月の終わり。
世界が彼女で満たされる一方で、社会人になった僕は、”こんなハズじゃなかった人生”に打ちのめされていく。息の詰まる満員電車。夢見た未来とは異なる現在。深夜の高円寺の公園と親友だけが、救いだったあの頃。それでも、振り返れば全てが、美しい。人生のマジックアワーを描いた、20代の青春譚。(単行本帯のあらすじより)
感想:
読み終えて最初に感じたのが"恋愛に対する怖さ"だ。
20代前半を人生のマジックアワーと称し主人公の人生は進んでいく。私も20代なのでよくわかるが人生のピークに感じるときがある。恋愛は無自覚のうちに人生のピークに連れて行ってくれる。正しくは連れていかれる。
終盤彼女から音信普通になり、最終的に振られるわけだが絶対にひっくりかえすことのできない理由があった。理由は推理小説並みにどんでん返しがあるので本書を見てほしい。が、驚くことに初日から主人公は彼女の秘密を知っている。知ったうえで、人生のピークを味わっていたのだ。他人には見せないが、私は極端に失敗を避けたがる(≒びびり)性格だ。本書で主人公のような立場であれば人生のピークに向かうこともなければ最初から相手を好きになりたいとも思うことはないだろう。ただ、恋愛は自分の理性的な考えとは裏腹に動いてしまうことがある。本能的に相性が良い相手と出会ってしまうと、止まらないのだ。主人公自身確実にマジックアワーが終わることを知りながら3年の時を過ごす。
物語の終盤、マジックアワーが弾けて全てがうまくいかなくなる。仕事も休職し身なりもぼろぼろになっていく。年単位の時がすぎ、主人公は少し大人になったかのように描かれる。私には大人になったというより、妥協や諦めを覚えたおじさんになったようにも見えた。