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樹高図を眺めて③~ゴルフ場跡地~

前回はスキー場跡地の植生回復について、樹高図を眺めて考えてみました。
今回も人為的に樹木が失われた場所に着目をして、ゴルフ場を取り上げてみます。


栃木県の廃ゴルフ場

樹高図は栃木県のデータセットですので、栃木県の廃ゴルフ場を検索してみます。

いろいろ調べてみましたが、上記ページにあるように、廃ゴルフ場はそのまま放置されるというよりは、事業者が変わってゴルフ場が再生されるか、メガソーラーとして再利用されるケースが多いようです。スキー場はそのまま放置されてしまうのに対して、ゴルフ場は再利用されるのは、土地の特性としてゴルフ場が利用しやすいからでしょう。スキー場は急傾斜地を含む斜面で大部分が構成されているのに対して、ゴルフ場はこれに比べれば平坦地です。平坦地は土地利用しやすいですから、こういった地形特性の違いが、土地の再利用の可否にかかわってくるものと推察します。

メガソーラーの建設

さて、少し横道に逸れるのですが、ゴルフ場跡地の太陽光パネル建設について調べていたところ、興味深い記事があったので触れておきます。

パシフィコ・エナジーさんの記事ですが、ゴルフ場を太陽光発電所に転用し、そしてさらに太陽光パネルの下に畑地を作るという「営農型太陽光発電」というシステムです。恥ずかしながら、私は初めてこういったものがあることを知りました。

林野を無造作に切り開き建設されるメガソーラー、正直なところ私はこれを忌み嫌っているのですが、ゴルフ場跡地を利用した「営農型太陽光発電」という取り組みには可能性を感じます。

ゴルフ場として利用するため、森林を伐採し、地形を造成した土地。どうせならうまく活用したいところで、そのまま放棄地となってしまうよりかは、随分と良い土地の利用方法なのかなと思いました。ソーラーパネルが日光を遮断していて、植物は成長するのかなとか、足場が畑地にたくさん刺さっているので、重機を利用した耕作は難しそうだな、といった印象はありますが、このような条件の中でうまくいく取り組みが考え続けられているのでしょう。面白そうなので期待しています。

廃ゴルフ場の土砂崩れ

本題に戻ります。当初の目論見では、廃ゴルフ場が放棄され、時間の経過とともにどの程度植生が回復されているのか、調査したいと考えていました。しかしながら、先述したように、土地の条件が比較的良好なゴルフ場跡地は、なんらかの形で再利用されるケースが多く、放棄地となっている箇所は限られるようです。そんな中で、休業中となっているゴルフ場を見つけました。

平成27年9月関東・東北豪雨

平成27年(2015年)、関東や東北で大雨があり、栃木県でも日光市内では24時間雨量が500mmを超えるような記録的な豪雨となりました。鬼怒川が茨城県常総市付近で氾濫し、甚大な浸水害が発生したこと、とてもよく覚えています。
このときの大雨で被害を受けたゴルフ場(新バークレイCC)が、これを機に休業に追い込まれてしまいました。

新バークレイCCの場所(地理院地図より)

植生の状況

2015年以来、休業となっているとみられる新バークレイCCですが、樹高図で見る限りは隣接するサンレイクCCと同じような状況で、下草が繁茂したり樹木の侵入があるようなことは認められません。記事によれば、コース管理人はおり、手入れが続けられているためのようです(休業中に事件に巻き込まれてしまった模様)。

新バークレイCC周辺の樹高図(栃木県DCHMより)

土砂崩れと土砂堆積

さて、植生の面からは特段の意義のある考察はできませんでしたが、地形データを見ていて気になるところがありました。

下図の赤丸で示した箇所で、比較的最近に崩壊したとみられる土砂崩れの跡と、土砂の堆積が見られます。

陰影起伏図(栃木県0.5mDEMより作成)
地理院地図 空中写真に加筆

崩壊箇所を拡大して示します。ゴルフ場のコースの側崖が崩壊し、斜面下部に白色の土砂が流出・堆積している様子が確認できます。

空中写真・衛星画像_2004年~(簡易空中写真)

同じ場所について、過去の空中写真を示しますが、このような崩壊は発生していません。やはり、最近の大雨によって崩壊したものでしょう。

空中写真・衛星画像 1974年~1979年

小型扇状地の形成

さきほどの陰影起伏図に、等高線を重ねてみます。崩壊箇所から流出した土砂は、非常にきれいな扇型をした小型の扇状地を形成していることが確認できます。崩壊地を観察すると、複雑な形状をしており、いくつもの谷筋が存在しているように見えます。大雨が降り続ける中で、断続的に崩壊が進み、そのたびに比較的細粒の土砂が流出することで、形の整った扇状地が形成されたものと推察します。

陰影起伏図と等高線の重畳図
空中写真と等高線の重畳図

崩壊地の植生をピックアップします。崩壊地内は、コース上と比較すれば、背の低い植生がついているように見受けられます。まさにコースが管理されず放置され、植生が繁茂した姿と思います。言い換えれば、コース上はよく管理されているのかと想像されます。

崩壊地の植生の状況

なぜ崩壊が発生するのか

大雨が降れば、どこの急傾斜地も崩壊のリスクが高まるものですが、ゴルフ場には特有の原因があるものと推察します。ゴルフ場のコースは、比較的平坦な地形となるように、尾根を切り谷を埋め、造成されているものと思われます(下のサイトで指摘されています)。

谷を埋塞した箇所は、もとの地盤が強固であるのと異なり、土砂の締まりは悪いものでしょう。また、地下の水の流れを考えても、地盤は透水係数が低く水が流れにくいのに対し、土壌は透水係数が大きく水の流れが集中するものと考えます。

「今昔マップ on the web」より

今昔マップを確認すれば、新バークレイCCのある場所は、かつては平坦地ではなく、山塊の一部であったものと思われます。ゴルフ場建設のために造成された土地であり、切土・盛土の工事はされていたでしょう。
崩壊した箇所がどういった経緯で造成されたのか、細かいことはわかりませんが、地形を人為的に改変することは、土地利用の面からは有益であっても、表面的には見えない災害のリスクが高めている可能性はあるのではないか、そんなことを考えたところでした。

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