なぜ、「クリエイティブ」を重視すべきなのか。
弊社Insight scienceは「クリエイティブ」を軸に、事業をフォーカスしています。
なぜでしょうか。
最も大きな理由は、これからの経営やマーケティングにおける重要度の観点からです。
「クリエイティブ」は、「誰に、何を、どのように伝えるか」というコミュニケーションそのものであると考えています。
従って、クリエイティブ戦略は、マーケティング戦略(売れ続ける仕組みを作ること)そのものでもあると捉えているからです。
「クリエイティブ」は、商品の一部です。(Product)
「クリエイティブ」は、価格・価値決定要因の一因です。(Price)
「クリエイティブ」は、いつ・誰に、どのチャネルで見せるべきかの戦略を描かなければなりません。(Place)
「クリエイティブ」は、販売を促進させるものの中で、最も消費者とコンタクトを持つものです。(Promotion)
クリエイティブは、マーケティングの4Pを体現するものになるのです。
「おーい、お茶」の奇跡
では、クリエイティブがどこまで重要なのかについて、考えてみましょう。
例えば、みなさん。ペットボトル緑茶では、何が好きでしょうか?
出展:amazon.co.jp より
以下の記事によると、「おーい、お茶」だそうです。
「おーい、お茶」が一位なんですね。
(ちなみに、1位と2位は95%信頼度で統計的有意差があります。)
でも、私は、綾鷹や伊右衛門が、結構好きです。正直、その時の気分で飲み分けていて、あまりどれが好き、みたいなのはありません。
何れにしても明確な差別化を打ち出しづらい商材であると思います。
なのに、「おーい、お茶」が売れてるんですね。
でも、面白いのがここからです。実は、昔は売れない商品だった。
以前は、「缶入り煎茶」という名前で売り出したそうです。
でも売上が伸び悩んだそう。
それを、「おーい、お茶」にしたら、なんと爆発的に売れて売上17倍!
引用元:「商品名を変えただけで売り上げ17倍! すごいネーミングの秘密」
この奇跡は、まさに「クリエイティブ」の大事さを伝えてくれていると思います。
何をどう伝えるかを変えるだけで、商品の中核的機能(味や、お茶そのもの)が変わってないのに、売上が伸びるんです。
これこそ、「クリエイティブが売上を決めている」事例の1つだと思うのです。
「クリエイティブ」は、資本弱者を救い、強者を食う。
このように「誰に、何を、どのように伝えるか」は、とても重要なのです。
名もなき商品、知名度の低い商品でも、クリエイティブ1つで、大企業の商品を差し置いて、選ばれる確率を上げられるのです。
※参考:前回のnote「なぜ、インターネットに可能性を感じたのか」で書きましたが、私は中小企業などの弱者が、強者に勝てる可能性を「インターネット」に感じています。
でも、現実は資本力有利。
しかし、現実は、まだそうなっていません。
なぜかというと、「経験に基づく勘」がクリエイティブの急所を握っているから、です。
世界のクリエイティブでは、実は見せかけ「PDCA」サイクルが回っています。「C」では、本来は仮説検証をベースに、方向是正がされるべきですが、実は「勘」で乗り切っているのが、実態なのです。(*これをPD勘Aサイクルと呼んでいますが、詳細は別のnoteで。)
人に依存した「経験や勘」がベースとなっているということは、その経験と勘のある人が動いた分だけ、クリエイティブが強くなりやすいということです。
つまり、資本力の戦い、強者の土壌なわけです。
(その資本力が強い大企業ですら、疲弊するほどリソースが足りないのですが)
なので、この「経験や勘」に依存しない世界を構築すると、弱者も強者も関係ない、商品の魅力を引き出して伝えられた者が勝つ、のです。
これが、クリエイティブの力です。
GAFAMは素晴らしい事業を成し得てきたけど
広告のプラットフォームをシステム化を進めているのは、GAFAMが中心になっていると言えるでしょう。
GAFAMが起こしている世界は、とても素晴らしい世界です。
私もその恩恵を受けている一人ですし、Googleがなければ、こんなに効率的に仕事ができません。
Amazon(AWS)がなければ、私の想いを事業として実現するために、何百倍、何千倍ものサーバー投資が必要になり、とっくに破綻していたことでしょう。「夢」で終わっていたかもしれません。素晴らしい事業を起こした会社だと思っています。
GAFAMはその圧倒的支配力により敵視されやすいですが、それだけのことを成してきたからの現在であることは間違いありません。ここをリスペクトしていることは、記載しておきます。
でも、「クリエイティブ」は取り残されている。
ただし、です。頼りすぎは良くないのです。
プラットフォームは、良かれと思い、機械学習・AIを活用してクリエイティブのソリューションを少しずつ用意し出しています。
この「クリエイティブ」という領域においては、「AI」偏重が起き始めていると感じます。確かに、AIなら弱者にも知見が安価に利用でき、便益が行き届くという観点では、1つの素晴らしいソリューションです。
でも、1つ忘れていませんか?
申し上げた通り、「クリエイティブ」は商品の一部なのです。マーケティングそのもの、なのです。
社外のしかもAIに任せておけば良いもの、なんでしたっけ?
現在のクリエイティブのエコシステムは破綻方向へ。
AIは、データを食べて、自分たちしかわからないナレッジに変換し、そして働きます。排便をしないのです。
「商品」は、生産者(創った人)の「想い入れ、こだわり」からできたもの、です。そして、商品は、改良できる。
ユーザーの声を聞いて、使いやすく、わかりやすく、馴染みやすく、改良されていくのです。
そして、消費者に合わせて改良されない商品は、多くのケースで市場から消えていくことになります。良い商品やサービスですら、消えていくのです。
つまり、クリエイティブの改善活動は、「顧客の声を聞く」に等しい行為なのです。
インターネットにおいて「クリエイティブ」は、エンドユーザーにどのように伝わったかのデータを返すことができるのです。
これが如何に重要な情報であるか、分かりますでしょうか。それを、AIに任せてしまうと生産者に返せない、のです。
つまり、エコシステム(生態系)が止まるのです。
動物は、植物や他の動物を食べます。そして排便し、それが自然に返り、植物が育つというエコシステムを構成しています。
しかし、クリエイティブワークにおいて、AIはそのエコシステムの流れを変えてしまいます。
つまり、「AIが、ナレッジを食いつくしている ( AI is eating up knowledge. )」のです。
Adobeのphotoshop/illustratorも素晴らしいツールです。これだけ多くのデザイナーを1つのツールが虜にしたのは、驚くべき事実です。
しかし、データとは切り離されている、のです。
つまり、「クリエイティブは、ナレッジを食べていない ( Creative is not eating knowlege. )」のです。
食べなければ、成長しませんよね。
もちろん、全てのデータをAIに与えるな、というわけではありません。
少しでいいからちゃんとデータを流すのです。「人間の創造性という川」に流れる水を枯らしてはいけない、と思うのです。
「クリエイティブ」は、顧客とその状態を教えてくれる。
クリエイティブが、ナレッジを食べると、エコサイクルが回ります。
次の「打ち手」が見えるのです。勘ではなく、データに基づいて。
クリエイティブを開発する企業は、多くのナレッジを手に入れるでしょう。
誰が、いつ、何に興味を持っているか、
その市場のボリュームゾーンがどこにあるかがわかってくるわけです。
最近の若者は、「価格訴求がうけにくくなってきたな」、とか、
「こんな悩み訴求に反応する人が増えているんだな」、とかです。
広告を出しながら、一次情報を獲得し、それをベースに最適化していくと次のマーケティングの、経営の打ち手が見えてくると思うのです。
もう20代女性、30代男性とか、線型的(画一的)で机上の理論ベースの打ち手ではなく、提案と反応と改善を繰り返すべきなのです。
クリエイティブは、エコシステム型営業マン。
クリエイティブは、言ってみると、企業が消費者と最も多くの接点を持てる営業マンです。
では、以下のどちらの営業マンを雇いたいですか?
(A) とにかく「売ってくる」敏腕営業マン。でもその営業ノウハウは絶対に誰にも明かさない。
(B) そこそこ「売ってくる」敏腕営業マン。なぜ売れたか、顧客がどんなことを言っていたかをどんどん会社にフィードバックし、みんなんで売れるようになり、商品が良くなる働きをする、エコシステム型営業マン。
従来の4マスやノンデジタルな媒体は、データをほとんど返せませんでした。つまり、売るだけの営業マン(A)だったのです。
しかし、インターネットでは違います。売ることと、聞くこと、その声に合わせることができるのです。つまり、(B)なのです。
なのに、引き続き「売ること」しかさせていない、耳を傾けようとしない企業が多いのです。
だから、デジタルのクリエイティブは、まだ本領を発揮できていません。
クリエイティブに耳と目を傾けると、次のマーケティング・経営の打ち手が見える、と私は思います。
これが、私が「クリエイティブ」に期待する理由です。
日本がもう一度輝くために。
さて、現状のエコシステムで、日本はナレッジという栄養を取る側に回れていません。
もしかしたら、ある業界の、ある商品において、日本のユーザーに最も売れる商品、必要とされている商品は?と聞いて答えられるのが、日本のメーカーではなく、GoogleやAmazonだったりするかもしれません。
それぐらい重要なデータを、捨ててしまっていることに、多くの企業に早く気づいて欲しいと考えています。
ここに弊社は使命感を感じており、「クリエイティブ」にフォーカスした事業を行なっているのです。
なんとしてでも10年以内に、その大事なデータを取り戻し、あるべきエコシステムへ転換させたいのです。
もう一度、日本が輝くために。
頑張っている生産者が、報われるために。
世界でも同じように頑張っている、名もなき企業のために。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。