Unlocking the power of Google Ads 01
過去のデータからの未来予測
Google Adsに限らず、Googleが提供しているサービスに共通していることは、ユーザーが利用したことによって得られたデータから提供される情報やその提供方法に改良を加えることで、提供される情報の精度や利便性が上がり、利用するユーザー数を増やしていっているということです。例えばGoogle Mapに関しては、サービスのスタート時に比べ、ユーザー数の増加とともに渋滞予測や渋滞の回避ルートに関してのサジェストの精度は格段に上がりました。これはユーザーがGoogle Mapを利用した過去のデータが多く蓄積され、それらを分析することによって未来予測の精度を上げているためであると考えられます。
世の中に様々なモノやサービスが溢れている状況から、これまでの、モノやサービスの提供側がいいと思うものをユーザーがいいと思う時代は終わりを告げ、ユーザーとのあらゆる接触ポイントでのデータ収集とその分析を通じてユーザーがいいと思うモノやサービスとは何か、そのためにどのような改善が必要かを、根拠をもってスピーディに判断することが求められています。大量なデータの中から的確な情報を引き出すのに必要となるのが統計学であり、Googleに限らず多くのシステムにおいて統計学に基づいたデータ分析や機械学習やAIによる提供されるサービスの向上が実現されています。
では、広告プラットフォームであるGoogle Adsでは過去のデータによって何が予測されているのでしょうか?
Google Adsプラットフォームのはじまり
Google Adsは、Googleよりも先にクリック課金型の広告オークションシステムを開発、販売していた米Overture社からライセンスを買い取って開発されたシステムです。当時、米Overture社のオークションシステムは入札された1クリックあたりの上限単価のみによって順位が決定され、課金される金額は1つ下位に掲載された広告主の上限クリック単価に対して+$1の金額というモデルでした。加えて管理画面より他社が入札している金額が確認できる仕様であったために順位調整がしやすい反面、徐々に掲載順位争いは過熱し、クリック単価の過度な上昇につながっていきました。一方、Google Adsはクリック課金型の広告オークションシステムでしたが、広告ランクや品質スコアなど広告やキーワードの質に関する指標を加えた仕組みとなっていました。すなわち高い金額で入札したので1位に出るとは限らないし、他社よりも上位掲載だったとしてもクリック単価が高いとは限らない仕組みであり、広告の質を上げれば上げるほど他社よりも安く、上位に掲載できるというのがGoogle Adsの特徴でした。
広告ランク
広告ランクとは、広告ランクはユーザーの検索語句に対して予測されるクリック率(推定クリック率)、広告の関連性、ランディングページの利便性と1クリックあたりいくらまで出せるかを表す上限クリック単価によって決定されます。すなわち広告クリエーティブに関する"質"と"お金"によって算出されます。
広告ランクの役割としては、1.資格判定 2.掲載順位 3.価格 4.上位表示の閾値があります。
まず1番目の資格判定とは、ユーザーの検索語句に対して、広告のオークションに参加する資格があるかどうかを広告ランクによって判定しているということです。ユーザーにとって価値の高い広告とは、継続的に多くのユーザーからクリックを得ている広告であり、それらをシステムが識別できるのは多くの表示回数と多くのクリックを得ている広告です。価値が判定できない広告をユーザーに表示するわけにはいかないので、多くの広告主の広告から表示させる広告を選定するためにまずはオークションに参加する資格を有しているかどうか判定しています。
2番目に掲載順位です。広告ランクが高ければ高いほど、広告の掲載順位は高くなります。広告クリエーティブの表示方法やフォーマットの変更はたびたびありましたが、広告ランクが高ければ高いほど掲載順位が高くなるというアルゴリズムに関してはGoogle Adsが始まって以降、全く変わっていません。
3番目に価格です。Google Adsの入札では最大(許容)入札単価を入力します。実際に課金される金額は、広告ランクに応じて減額されます。
4番目が上位表示の閾値です。ユーザーからのクリックを得るために、検索結果ページの上部(4枠まで)に表示することは非常に重要なことですが、そのためには広告ランクがある程度高くなくてはならないということです。
検索連動型広告
ディスプレイ広告 (CPC配信の場合)
動画広告 (CPV配信の場合)
広告ランク = 広告の予測クリック率 × 上限クリック単価
広告の質は主に検索語句に対して予測されるクリック率が大部分を占めており、予測されるクリック率は過去の検索語句に対する実績クリック率から毎オークションごとに算出されます。ユーザーにとって有益な広告とは、ユーザーのクリックによって判断されるものであり、客観的かつ公平に判断するためにはそれ相応の広告のインプレッション量およびクリック量が必要となります。マーケティングリサーチなどのサンプル調査において複数の回答間における統計的な有意差を出すために必要なサンプル数は700〜1,000であり、Google Adsにおいて検索語句に対して複数のクリエーティブ間で統計的な有意差を出すために必要最低限のインプレッション数は1広告クリエーティブに対して1,000impです。しかしながらこの数字は必要最低限であり、統計学的にはインプレッション数が多ければ多いほど統計的な有意差は出やすく、かつ信頼性の高い予測クリック率となると考えられます。
広告の視認性
街を歩くといろんな看板が目に入ると思いますが、目に入りやすい=視認性の良い看板はタテとヨコが大きいものが多いと思います。看板に限らず、すべての広告は広告枠のタテとヨコの大きさによってその視認性は変わります。Google Adsにおいても広告枠が大きいほうがユーザーに対する視認性は良く、その効果は広告のクリック率に反映されるものです。
拡張テキスト広告 / 広告表示オプション
広告クリエーティブおよびクリック率を構成する要素としては、拡張テキスト広告と広告表示オプションに分けられます。
拡張テキスト広告のパーツは、見出し1・2/表示URL/ナビゲーションパス1・2/説明文で構成されています。
拡張テキスト広告は2015年に発表され、2016年から開始された広告フォーマットであり、以前のフォーマットとの違いとしてはタイトル2が追加されていること、説明文については文字数が増加し1つにまとめられたことです。その後、2018年には見出し3と説明文2も追加されることになりました。見出し3は文字数やデバイスによって表示される場合とされない場合がありますが、追加することによって見出し1、見出し2の文字数が短い場合でも見出し3が表示されることで見出しは長く表示されるようになりました。説明文については説明文1と広告表示オプション(コールアウト表示オプションや構造化スニペット表示オプション)が表示される場合もあれば説明文1と説明文2が表示される場合もあるなど様々なパターンが存在します。
広告表示オプションとは、Ad Extentions=広告を拡張させるパーツです。サイトリンク/コールアウト/構造化スニペット/電話番号表示/メッセージ表示/住所表示/アフィリエイト住所表示/価格表示/アプリリンク表示/プロモーション表示/レビュー表示/ホテルのコールアウト表示など非常に多くの種類が存在します。
各広告表示オプションは複数のパーツを登録できますが、先に述べた拡張テキスト広告のパーツと文言が重複した場合、広告表示オプションが表示されなくなります。各々の特性を考慮し、何の訴求内容をどの広告表示オプションで訴求するかを使い分ける必要があります。また登録されたパーツは、様々なパーツの集合体として生成された、パターンとしての広告クリエーティブの各指標が按分され、効果の高いパーツがより表示されるようになります。そのため、広告のタテ×ヨコを最大化させるために、各々、最大表示数の2倍の量を登録するのが推奨です。
掲載順位と目立ち度
Google Adsの検索連動型広告においては、広告の掲載順位が高ければ高いほど広告表示オプションの表示数は多くなる(このことを“目立ち度”と呼びます。)ため、広告枠のタテとヨコが最大化することとなり、高いクリック率を実現することによってクリック単価を安く抑えることが可能です。
掲載位置が上位であればあるほど広告表示オプションの表示数が多くなるため、広告掲載枠としてのタテ×ヨコが広がり、広告の視認性が上がった結果としてクリック率は上昇、上限単価内で広告の掲載順位が高くなる、もしくは実際のクリック単価が安くなります。(掲載順位に対する期待されるクリック率を超えている必要があります。)またユーザーのニーズは検索語句の文字列に表れるため、検索語句に多く含まれる文字列を広告内に含めることや広告がユーザーにとってどれだけメリットがあるかを数値で示すことで直感的に理解させ、視認性を上げることが可能です。
検索語句とキーワード
ここまではGoogle Adsにおいて最も重要な広告クリエーティブや広告ランクについて説明してきましたが、ここからはGoogle Adsにおける"ターゲティング”および"ターゲット"について説明します。まず検索連動型広告における"検索語句"とはユーザーが検索時に入力した文字列を指し、"キーワード"とはユーザーをターゲットするために広告グループに追加した文字列のことを指します。
Googleの検索エンジンは、“ユーザーのニーズにぴったり一致する検索結果を返す”というコンセプトのもとに構築され稼働しています。Google Adsにおける検索連動型広告もディスプレイ広告や動画広告でもコンセプトは同じですが、検索連動型広告においてはユーザーのインテント(=意図)が非常に強い、検索語句の文字列をキーにして広告を露出させています。ユーザーが入力した検索語句に対して関連性のある広告、その先のランディングページとは、少なからずユーザーの検索語句に一致もしくは一部が含まれる、または関連性の高い語句が含まれているものではないでしょうか?管理画面上で確認できる検索語句レポートでは、ユーザーが検索した検索語句とターゲットキーワード(ユーザーをターゲットするために追加されたキーワード)の紐付きを確認することができます。ユーザーは検索した際にキーワードをクリックしているわけではなく広告をクリックしていますので、管理画面上で確認できるキーワードレベルのデータは広告の結果をキーワードレベルに落とし込んだ値の集積値であり、検索語句が追加されていないアカウントにおいてはキーワードの文字列に対する結果だけではなく様々な検索語句の集積値であるということに注意が必要です。すなわちターゲットしているキーワードの文字列と実際にユーザーに検索されている検索語句の文字列にズレが生じているということです。このズレは検索語句と広告との関連性の低下につながるズレとなります。なぜなら、ユーザーの検索した文字列を広告クリエーティブに含めることで視認性を上げることがクリック率を上げるための基本であり、ズレがあるということはユーザーの検索した文字列と広告クリエーティブに含まれるべき文字列とのズレに繋がることになるからです。
管理画面においてこれらのズレがあるかないかを判断するための指標が、完全一致のインプレションシェア(検索連動型広告)という指標です。この指標は日本語訳の関係で非常に誤解されることが多い指標ですが、完全一致とはマッチタイプの完全一致ではなく、ユーザーの検索語句とターゲットキーワードの文字列が完全に一致の意味です。すなわち検索語句をターゲットキーワードとしてアカウントに追加することによりユーザーの検索トレンドにどれだけ対応できているかを確認するための指標です。
アカウントに追加された大量のターゲットキーワードにおいて、ユーザーの入力した検索語句に対する広告の結果はどのターゲットキーワードに数値として落とし込まれるかの優先順位が下記です。
・検索語句に対して文字配列の一致度合いが高いターゲットキーワード
候補となるターゲットキーワードが複数存在する場合、
・マッチタイプが完全一致に近いターゲットキーワード
一致度合いおよびマッチタイプが同一のターゲットキーワードが複数存在する場合、
・Ad Rankが高くなるターゲットキーワード
検索語句の追加と除外
運用業務の中で定常的に発生する業務として、検索語句の追加と除外があります。それらの業務の意義をどのように捉えられていますか?インプレッションを増加させるために検索語句を追加しますと提案されている方がいらっしゃいますが、それは間違いです。確かにターゲットキーワードはどのような検索語句に広告を露出させるかに関連しますが、アカウントの検索語句レポートで確認可能な検索語句はターゲットキーワードとして追加されなくても広告が出ていたということなのでそれらを追加することによってインプレッションが増えるということはありません。たとえ何らかの追加されたターゲットキーワードに含まれる語句が拡張したとしてもあまり多くのインプレッションの伸びは望めません。では何のために検索語句をターゲットキーワードとしてアカウントに追加するのか?それはGoogle Adsにおけるターゲティング、ビッディング、クリエーティブをコントロールするためです。また検索語句の文字配列に対して、意図的にターゲットとして追加するべきか除外するべきか、入札は的確な上限入札単価が設定されているか、クリエーティブにおいて視認性の悪い文字列とは何かを可視化し、改善の根拠とすることが重要です。
品質スコア
品質スコアはターゲットキーワードを主体として、それらと紐づく広告との関連性をアカウント内で相対的に判断するための指標であり、現状は広告の実績クリック率から掲載順位や広告表示オプションによる増分クリック率を正規化することで検索語句に対する広告の予測クリック率へと変換、検索語句とターゲットキーワードの文字列が合致した場合にのみ、ターゲットキーワードに対して品質スコアの値を戻します。検索語句と合致する文字列のターゲットキーワードが追加されていない状況では、その文字列に対する広告の結果を品質スコアとして管理画面上で確認することはできません。すなわちキーワードの品質スコアに加味されるクリック率とは、キーワードと検索語句の文字列が一致したときのクリック率のみということになるのです。
過去、広告ランクを構成する要素、また実際のクリック単価を決める要素として品質スコアが挙げられていましたが、オークションでのクリック単価の算出にはそもそも初めから利用されていません。広告ランクや品質スコアに広告の関連性やランディングページの利便性が考慮される前や広告表示オプションが利用可能となる前は、広告の予測されたクリック率が検索語句における予測されたクリック率となり、検索語句とターゲットキーワードの文字列が合致している場合においてターゲットキーワードの予測クリック率が品質スコアを構成する要素だったため、擬似的に品質スコアを用いてクリック単価の算出をしていると説明していたに過ぎません。
上記に述べた通り、品質スコアは現状のアカウント内においてターゲットキーワードを主体として広告効果を指標化したものなので、他社のデータと比較したり、アカウント構造を大幅に変更した後に前後比較したりするためのものではありません。無論、広告の改善業務については品質スコアの時系列データを出すことが可能となったため、品質スコアの変化によって広告クリエーティブの変更による
効果の推移を確認することができます。他社との比較を実施する場合は、オークションインサイトを利用することが可能です。
to be continued…
株式会社アンノウンとは、”葉隠” 葉陰に隠れて見えない=まだ知られていない、”はやい、うまい、やすい”を生み出していくために設立した会社です。
アカウントのコンサルティング業務、Google広告、Yahoo!広告をはじめ、SNS広告など各種アドプラットフォームの運用業務、アカウントデータ分析に基づくクリエーティブ制作やデジタル人材の育成業務を行っております。
当社では、採用は随時行っておりますが、未経験の人材の方のみ対象としております。デジタルマーケティングに興味関心があり、学ぶ意欲がある方であれば、是非、お問い合わせください。
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・サークルを作成しました。
クリエーティブ主体の広告運用を考える会https://note.com/adplatform_tiger/circle