【歌詞翻訳・解説】Besoin d'amour(1979)【フランス・ギャル】
※ヘッダーはgetty imageより
ご無沙汰しております。
最近生活が忙しくなってしまったので、なかなか記事が書けず放置してしまっておりました。もう書くことはないかな…と思っていたのですが、先日放送されたパリ五輪の開会式を見たところ、なんとフランス・ギャルの曲がBGMとしてかかっているではありませんか!もしかしたら何かは使用されるかもしれない…と密かに思ってはいたのですが、日本のTVで「アイドル時代」以降のギャルの曲を耳にする機会は皆無と言っていいので、とても新鮮な気分を味わうことができました。しかし、残念ながら全く話題になっておらず…。悲しくなってしまったので、簡単なものになってしまいますが紹介記事を書きたいと思います。
こちらはテレビ朝日で放送されたダイジェスト版ですが、1時間19分あたり、スイス〜台湾の入場にかけてギャルの曲"Besoin d'amour"(愛が必要、1979)がBGMとして使用されています。開会式の内容に関してはいろいろと物議を醸しているそうですが、今回は内容には触れずこの曲の紹介をしたいと思います。
こちらが使用された楽曲。動画は79年7月に放送されたTV番組からの映像とのことです(歌唱は口パク)ちなみにこの頃のギャルは第一子ポーリーヌの産後すぐです。それでこの美しさ、若々しさはさすがギャル様です。
①概要
"Besoin d'amour"は1979年、ギャルの夫でシンガーソングライターのミシェル・ベルジェが手がけるオペラロック"STARMANIA"(スターマニア)の劇中歌として発表されました。劇中でギャルはヒロインのクリスタル役を演じています。"STARMANIA"の初演は大成功を収め、79年の公演の後も、演者やスタッフを入れ替えながら2024年の現在まで何度も繰り返し上演される大ヒット作となっているそうです。日本でいう劇団四季の〇〇…みたいな作品といったところでしょうか。
"STARMANIA"のオリジナルバージョンの楽曲は各種配信サービスやYouTubeなどに存在するサウンドトラックで聴くことができますが、今の日本では残念ながら映像を見る手段が全くありません。(一部の映像の切り抜きや、TVで劇中歌を歌う様子などはYouTubeの動画でも見ることができます)ですので、私のSTARMANIAに関する知識は相当浅いことを予めお詫び申し上げます。
②歌詞翻訳
Besoin d'amour(愛が必要)
彼の視線が私の視線とぶつかった
レーザー光線みたいに
どこか別の場所に飛ばされたような気分よ
地球以外の星に
助けて
愛が必要なの
助けて
愛が必要なの
彼といると踊りたくなるの
光の中を裸足で
海の上を歩きたくなるの
空中に浮かびたくなるの
助けて
愛が必要なの
助けて
愛が必要なの
地球が太陽を必要としているように
(愛が必要)
星には星が必要であるように
(愛が必要)
空が海を必要としているように
(愛が必要)
夏が来るためには冬が必要であるように
(愛が必要)
私には愛が必要なの…
音楽が必要なのと同じ
光が必要なのと同じ
水が必要なのと同じ
空気が必要なのと同じよ
ほんの少しだけ愛が
愛が必要なの
ほんの少しだけ愛が
愛が必要なの
鳥が飛ぶためには翼が必要であるように
(愛が必要)
月が輝くためには夜が必要であるように
(愛が必要)
私には愛が必要なの
③解説
"STARMANIA"に関して
"Besoin d'amour"を解説するにあたって、"STARMANIA"の内容について触れることは必須だと思います。しかしながら私は公演の映像を見たことがないので、大変心苦しいのですが仏語版のwikipediaおよびギャルの伝記からの情報を簡単にまとめるに留めたいと思います。
"STARMANIA"はもともと1975年頃にミシェル・ベルジェがギャルと共に計画していた"アンジェリナ・デュマ"というミュージカルが元ネタのようです。当時世界中を騒がせた実際の事件「パトリシア・ハースト誘拐事件」からインスピレーションを得ています。"アンジェリナ・デュマ"はほぼ完成していたそうですが、結局ベルジェとギャルはこの計画を中断してしまいました。
しかしベルジェはオリジナル歌劇制作の夢を諦めきれなかったのか、カナダのケベック州出身の作詞家、リュック・プラモンドン氏と共にこの企画を再構築することにしました。そうして出来上がったのが"STARMANIA"で、「ミュージカル」ではなく「オペラロック」という形式を取っています。(簡単にいうと現代的な楽曲で構成されたオペラ。日本で有名なのは「ジーザス・クライスト・スーパースター」等)
しかしながら「自国オリジナル制作のオペラロックを上演する」ということは、1979年当時のフランスでは前例がありませんでした。キャスティングも難航し、フランス・ギャルも本来は出演する予定はなかったのに舞台に立たざるを得なくなったようです。製作チームはなんとか観客に足を運んでもらおうと、「公演開始前にサウンドトラックアルバムを発売する」「TV番組で楽曲を披露する」等の策を立てました。その甲斐あってか初演は見事成功し、フランス演劇史・音楽史に名を残す作品となったのでした。
"STARMANIA"の大筋は、ギャング組織のリーダーである若者「ジョニー・ロックフォール」とTVアナウンサーの女性「クリスタル」との悲劇的な恋物語ですが、他にもさまざまな立場の人物が登場し、群像劇が展開されていきます。また、作詞担当のリュック・プラモンドン氏は元々のモチーフの上に名作「ロミオとジュリエット」のエッセンスを追加したそうです。曲は今聴いても古さを感じないものばかりですし、お話としてもとても面白そうなのですが…いつか日本に来ませんかね…。
"Besoin d'amour"に関して
この曲は劇中ではクリスタルの「決意表明」のような形で使われているようです。クリスタルは話題の人物としてジョニーにインタビューをした際、彼に一目惚れをします。そして「誘拐された」と装って彼の率いるギャング集団に入り、ジョニーと共にテロ活動に身を投じていくことになります。そんな場面で歌われるのがこの曲で、「愛が必要」というよりはむしろ「愛以外何もいらない」という印象を受けます。
パリオリンピックの開会式のテーマは「愛」だったようで、まさにぴったりの選曲といえます。また、開会式の芸術監督を務めた方が2022年に上演された"STARMANIA"の演出に関わっていたそうです。ちょうど初演から45周年ということもあり、オリジナルのフランス・ギャルバージョンをピックアップしたのではないでしょうか。(フランス人は何かにつけて「◯◯周年」を祝うのがとても好きなようです)
④余談
"STARMANIA"の劇中歌で最も有名なのは、以前もご紹介したことのある"SOS d'un terrien en détresse"(悩める地球人のSOS)だと思います。数年前に人気フィギュアスケーターが演目にしたことで、日本でも知名度が上がりました。主役ジョニーの独白曲です。
この曲も素晴らしいのですが、個人的にはこちら↓の曲がイチオシです。
物語の後半、追い詰められたジョニーとクリスタルの2人が半ばやけっぱちで歌う…というような感じの曲かと思います。(違ったらすみません)曲もカッコいいのですが、歌詞がまた良いんです。"Je serai avec toi contre la terre entière"(世界中を敵にしても、私はあなたのそばにいる)とか…ちょっと今時のアニソンみたいじゃないでしょうか?繰り返しますが45年前の曲です。
今後記事を書ける余裕がある気がしないので、一旦こちらで休止とさせていただきます。今回のようにまた何かあれば書くかもしれません。いろいろと心残りはあるのですが、申し訳ありません。ギャルの音楽はずっと好きですし、note自体は見ているので、何かあればお気軽にコメントいただければと思います。今まで拙い記事を読んでくださった方々、本当にありがとうございました。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?