『パークライフ』 吉田修一
adomiと申します。
4回目の投稿では、吉田修一さんの『パークライフ』について触れていこうと思います。
吉田修一さんの小説を読んだのは今回が初めてではなく、以前『パレード』というこちらも『パークライフ』と同様に恐らくかなり有名な作品を読ませていただいたことがあります。『パレード』も面白い作品だったと記憶しています。読んでいない方は是非読んでみてください!!
話は戻りまして、当書にはお話が二つ収録されており、一つが表題作であるパークライフ、もう一つにはflowersという題がつけられています。
今回は、表題作のパークライフに焦点を当てて、感想を述べていこうと思っています。
パークライフでは、日比谷公園を舞台として主人公である「ぼく」と地下鉄の中で出会う「女」の二人を中心にお話が進んでいきます。緩やかな日常がその出会いと共に動き出していくという旨の作品であり、このお話で芥川賞を受賞したとのことです。
感想 (ネタバレありますのでお気を付け下さい)
まず、「ぼく」と「女」の出会わせ方が面白くて、電車内から見えた広告に『死んでからも生き続けるものがあります。それはあなたの意思です』と書かれてあり、それを読んだ「ぼく」が背後に立っていると思っていた先輩社員に声を掛けるんですが、そこにいたのが「女」で全くの他人であるのにも関わらず、「ぼく」のかけた言葉に対して平然と答えを送るのです。その口ぶりはまるで十年来の知り合いに話すようなものであったという一文が後付けされており、これによって「女」の魅力的な部分というか、どういう人物なんだろうという期待感が持てる気がしました。
その後、描かれていく「ぼく」の生き方、常日頃から考えていることや行動の変な感じはもちろん面白いのですが、それ以上に「ぼく」の会話やその周りにある描写とともに描かれる「女」の魅力を引き出す表現が良いなと感じました。地下鉄で声を掛けてしまった後、初めて日比谷公園で「女」と出会った場面では、実は「女」は既に日比谷公園にて「ぼく」を見たことがあり、「ぼく」に対しての印象から、公園の中で気になっていた人物の二人のうちの一人として「ぼく」を挙げていたりします。その「女」の声は不思議で声域に魅力があったと記されており、この後も「ぼく」は公園にて「女」と様々な会話を交わしていきます。
最後まで、「女」のこれまでの人生や今の職業だったり、身の回りの情報は明かされることなく話が進んでいくのですが、ふと写真館に行こうと「女」が言い出します。そこで見られる写真は「ぼく」にとっては何を想起させるでもない作品の数々なのですが、「女」は一枚の作品の前で私はここで生まれたのだと言います。他の写真に映る風景もすべて「女」の出身地のものであり、どの写真にも病院が写っています。
会話の中で「ぼく」は「女」に場所を聞き、そこなら言ったことがあると答え、それに対し、彼女は嬉しそうに言葉を発します。作品を見終わり、写真館から出るための階段を登る途中で、彼女はふと「よし。……私ね、決めた」と呟き、呆気にとられた「ぼく」は最後に呼び止める言葉をかけるも、そこで別れることになるという所でお話は終わります。
この終わり方に対して率直に良い…!!と思いました。彼女は何に向けて覚悟を決め、これからどういった未来に向けて行動を取っていくのかとっても気になりますし、そこは読み手がそれぞれに頭の中で想像をしていくことができるし、それがいいんだろうと思います。
初めて、小説について感想を書いてみて、映画やドラマに対して書いた時もそうでしたが、書く際にあまりにも内容を一緒に書いてしまうとどこまでが内容でどこからが感想なんだとかが、自分でもよくわからなくなってしまい、読者のついている人が文章を書く際にはどれだけのことを注意しながら書いているんだろうというその大変さの一部がわかってきたような気がします。笑
ここまで読んでくださった方、本当にありがとうございます!
また次回!