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ADOCセミナーでの質問(2)

セミナーからひと月半過ぎてしまいましたが,質問にお答えしていきたいと思います.

ADOCの基準

Q.ADOCを活用するIQの基準はあるか(軽度精神発達遅滞などのCL)

特にございません.CLの症状や反応に合わせてご活用ください.

Q.失行・失認に対して、面接を行える対象者の基準はあるか?

特にございません.CLの症状に合わせてご活用ください.失認のCLの場合には,イラストの提示枚数,提示する位置(縦に並べるなど)に気をつけてください.

Q.患者様だけではなく、ご家族の方から見た患者様に必要な能力(優先度、現在の満足度)を聴取する際もADOCは使用可能か

可能です.特に,認知症や高次脳機能障害を有するCLのご家族への使用は有用だと感じています.

ADOCと他の評価

Q.MTDLP と比較してのADOC 使用においてのメリット、デメリットはありますか?

MTDLPは面接から介入計画,再評価までのOTプロセスを全て網羅したツールであり,ADOCは目標設定・意思共有に特化した1部分のツールです.両者を比較というより,MTDLPを実践する上でADOCを活用する,という位置づけになると思います.またMTDLPの中に興味関心チェックシートがありますが,特にADOCを使ってはいけないという制限はなく,クライエントに合わせて使い分けていくのが良いでしょう.目標設定だけで見ると,ADOCのほうがSDMの過程が分かりやすく,合意形成を図りやすいと感じています.


Q.ADOC とMTDLP を同時に使うことはありますか?

私はMTDLPのインテーク面接はADOCを用いて行っています.MTDLPの合意目標は2項目に絞られていますので,5項目絞る手順で「この中で最も達成したい2つ」を相談して決めています.事例登録等に拘らなければ,無理に2項目に絞らなくてもいいと考えています.満足度・実行度に関しては,どちらに主軸を置くかで10段階評価 or 5段階評価を選択していきましょう.

Q.うつ・不安・アパシーはどのような評価を使用されていますか?

当院ではうつの評価としてSelf-rating Depression Scale(SDS)を用いています.主に臨床心理士が評価し,抑うつ傾向のある方は臨床心理士が定期的に介入しています.

Q.CAODとSTODの点数で乖離があった場合はどう解釈したらいいですか?

ケースバイケースなので一概には言えませんが,その乖離がある点について,CLと話し合ってみるといいかと思います.それは乖離を埋めるというより,CLなりの視点を理解するという目的ですね.


ADOCとスタッフ教育

Q.スタッフ間の目標設定に対する意識統一を図る工夫はありますか?

特効薬的な工夫はありません.ご自身が真摯にCLと目標設定し介入する姿を見せる,事例報告をする,といった地道な努力を通し,少しずつ仲間を増やしていきましょう!また,ADOCは深い知識がなくてもSDMが実践できるツールのため,そういったツールを導入するのも一つの方法かもしれません.


Q.目標をCLや多職種と共有する際に工夫する点はありますか?

多職種と共有する際には,「自分の想い」が強く出すぎないように注意しましょう.あくまでも,CLの希望・目標が話題の中心です.また,多職種と協力すること・依頼することを具体的に話し合いましょう.CLとの共有では,CLが目標や期間を忘れないように日々の介入中に反芻したり,CLが見やすい位置に目標設定シートを掲示していくと良いですね.また,CLに目標に対して気持ちの変化が生じたら教えてもらうように伝えておくのもいいでしょう.


Q.面接について後輩に教えるときは、どんなポイントを伝えるようにしているか?

面接はニーズを聞く場ではなくCLの心情や考え方を理解する場であること,話してくれることをは当たり前のことではないこと,話してくださった情報は責任を持って最大限臨床に活用していくことをポイントとして伝えています.一度,被験者をやってもらうと自分のプライベートな事を突然話すことがどれほど難しいのか体感していただけるかもしれませんね.


ADOCと連携

Q. ADOCで得た目標をどのように次の施設につなげていますか?

CL了承のもと…サマリーに記載,目標設定シートの添付,サービス担当者会議で伝達



Q. 訪問リハビリでADOCを利用してケアマネと連携する方法はありますか?

株式会社geneさんの季刊誌,「脳卒中リハビリテーション 第4号.2019.2」に掲載されている「訪問リハビリテーションを進める上での目標設定 澤田辰徳先生」をご覧ください!この雑誌は脳卒中リハにおける目標設定が特集で,その他にも当セミナーでご講演いただいた先生方の記事がたくさん掲載されています!

Q.急性期から回復期への目標設定連携での工夫点はなんですか?

目標は常に変化しますし,急性期は発症間もなくCLの気持ちも揺れ動きやすい時期です.それを加味しても伝えるべきと判断した情報はサマリーやパスへ記載し伝えましょう.そのとき大切なのは連携について「CLの了承が得られているか」という点です.よりプライベートな情報のため,扱いには注意が必要です.また,目標設定の連携も大切ですが,発症時の様子や回復の経過など予後に関係する事項を詳しく伝えましょう!


ADOC-H

Q.手外科疾患CLは,“活動・参加”の項目(園芸、ゴルフ、車の運転など)を希望されることが多いです.その際,ADOC-Hはどう活用していけばいいですか?

遠い将来的な目標はADOC,受傷から日が浅く,生活で出来なくて困っていることが多いと予測される場合にはADOC-Hと使い分けるのが良いかと思います.ADOC-Hは,麻痺手や損傷手の生活での使用頻度を高めるために,セルフケア項目を中心に構成されています.


Q.ハンドセラピィ領域でのADOC-Hの実践について、現在進行中の研究テーマや今後実施してほしい研究テーマ等あれば教えてほしい

現在,橈骨遠位端骨折患者用のADOC-DRFの紙面版を開発して,臨床有用性のチェックをしている段階です.今後はそれを基盤にRCTなんかできればと思っていますので,よろしければご協力ください.大野先生の研究です.


Q.今後、ADOC-Hを使用した学会発表するときに許可は必要でしょうか?

必要ありません.学術発表においては,引用元を明記していただければ,ご自由にご活用いただいてかまいません.


Q.CLによってADOC -H を導入する時期に配慮していますか?

配慮しています.CLの性格や心理状態,また上肢機能に関してはCI療法においてtransfer packageの導入が可能になると報告されているFMA24点(※)を目安に導入を行っています.

※参考文献

瀧野貴裕ら:亜急性期脳卒中患者に対し,課題指向型練習とADOC-Hを用いた麻痺手を生活で使用する為の行動戦略を行なった一例


Q.ADOC-Hのアプリを使用していることを病院のHPに掲載するのに許可は必要でしょうか?

許可は必要ございませんが,必ず引用を示してください.

Q.ADOC-Hは手の使用を促す以外にまずどんな場面で使っていきたいか希望を聞くために使ってもいいですか?

いいと思います.CLの状況に合わせて柔軟に活用しましょう.また,第一段階として,希望を聞くためにADOC-Hの画面を見ていたら,次のステップに進む際も促しやすくなるかもしれませんね.


アプリについて

Q.セキュリティー面で気を付けることはありますか?

iPad使用時のパスコードの設定し,ADOC使用時には毎回ログインしてから使用するようにすれば良いかと思います.ADOC実施後にPDFを作成した場合には,「ファイル」のフォルダに格納されます.そちらもご注意ください.


Q.オフラインでの使用方法はどこかに記載されいていますか?

丁寧には記載されていなかったかもしれません.申し訳ございません.ADOC,ADOC-S,ADOC−Hは,全てオフラインで使用できます.インストール時とアップデート時にはネットに接続してください.


Q.iPhone版アプリのADOC-Hの活動選択画面において、左側のバーに、顔のケアより上が表示されていません。サイトの画像を見させて頂く限り、食事と手のケアの項目が抜けていると思われます。アプリの改善予定はあるのでしょうか?

こちら大変申し訳ございません.現在ADOC-2の開発にリソースをさいているので,現在対応が後回しになっております.一旦「クライエント一覧」まで戻ってからだと食事の項目も表示されるので,大変申し訳ございませんが,そちらで対応いただけますと幸いです.


Q.今後のアップデートでADOC-Hの方にもADOCのように満足度を段階付けしたり、MALのようにAOU(使用頻度)やQOM(動作の質)を段階付けしたり出来るようになりませんか?

満足度とかは検討させていただきます.MALは版権の問題もあるので追加は難しいかなと思います.


以上です.多数ご質問いただきありがとうございました.

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