若宮正子さんら、円熟世代の方々に生成AIをデモしたら、質問がガチすぎた件について。【Adobe Firefly】【AI画像生成】
どーも、未来デジラルラボ研究員の鈴木です。
アドビの画像生成AI「Adobe Firefly」、今更説明の必要はないかと思いますが、これは「ベータ版」という試作の段階です。つまり、「こんな感じで使い勝手とかどうっすか?」と試していただき、そのフィードバックを本社の開発チームに戻しています。
そこで、わが未来デジタルラボでもその試作に一役かうべく、色々な人にFireflyを見てもらう、という活動をやっています。
今回はこの未来ラボの協力者でもあり、ITエバンジェリストとして知られる若宮正子さんに協力いただき、円熟世代の方々の交流と情報発信をおこなっている「一般社団法人メロウ倶楽部」のメンバーの皆さんに Adobe Fireflyを見ていただくオンラインイベントを開催しました。
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若宮正子さんら、円熟世代の方々に生成AIデモを振り返る
当日はAdobe Fireflyの日本でのスペシャリストの西山が説明しましたので、西山と鈴木の対話形式でイベントの様子を振り返ります。
鈴木:西山さん、メロウ倶楽部さんへの説明、面白かったですね。
西山:そうですね、70歳以上の会員の方が80%というから、ITにはあまりお詳しくないのかと勝手に思っていましたが、、、
鈴木:めちゃくちゃ詳しかったんですね。プロンプトの書き方のコツはあるんか、とか。
西山:いや、そんなぞんざいな口のきき方はされてないですが、質問内容はそんな感じです。みなさん礼儀正しい方ばかりで。
鈴木:そうですか。見習いたいです。
鈴木:で、実際みなさんの反応を見てどうでした
西山:正直、もっと驚かれるのかなと思ったんですけど。割ともう慣れていらっしゃると言うか。で、これから使うのにどうしたらいいんですか?とか、超実践的な質問でしたね。
鈴木:メロウ倶楽部すごいレベル高いんですね。で、実際どんな質問だったんですか?
質問1:英語版のFireflyのプロンプトが英語だけで使いにくい!どうにかならない?
西山:『英語版のFireflyを使い始めました。プロンプトが英語だけで使いにくい。日本語をつかえるようにしてもらいたい。』とか。
鈴木:おー、もう使っている前提ですね。それってどう回答しました?
西山:これは、ベータなんでとりあえず今は英語です、と。日本語含む多言語対応を計画しているので、おいおいやっていきます、というのが答えですね。そうしたら、その答えに対して、まだなんですね、、、って少しがっかりされていましたね。
鈴木:ガチで期待していただいているんでしょうね。
西山:ただ、これって本質を突いていると思うんです。AIって楽をするための技術なのに、外国語のプロンプトとか、なにか特別なことを覚えなきゃいけないって、本当は違うんじゃないかな、と。
質問2:プロンプトは箇条書きで入力できるようにならないの?
西山:プロンプトについては他にもコメントがありました。『できたら箇条書きで1番2番3番4番みたいな感じで入力できるようになれば、子ども達も使えるのではないか』と。
鈴木:それもなんか示唆に富む感じがしますね
西山:はい。生成AIを使うために、また特殊技能が必要になってしまったら、AIで人に便利なものを届けたいという思いが何か変な方にいってしまうので、これは貴重なご意見でした。
鈴木:このあたりのリアクションはUSの開発にも伝えたいですねー。
質問3:Photoshopを使うとき、FireflyがPhotoshopの画像を読み込むの?Photoshopの中にFireflyのアイコンがあるような形になるの?
西山:あと別な方からあったのは、『Photoshopを使う場合、FireflyがPhotoshopの画像を読み込むのか、Photoshopの中にFireflyのアイコンがあるような形になるんですかね?』みたいな質問ですね。
鈴木:これもPhotoshop使っている前提の質問。Photoshopガチ勢も知りたいと思います。
西山:これについては、具体的な実装はまだ決まっていない(2023年5月9日時点)という前提で、たとえばPhotoshopの中で『富士山を写真の背景にもってきて』みたいな命令をするようになるイメージです、と。
質問4:例えば、自分の作風が望んでいない形で使われた場合、著作者の人格が傷つけられるんじゃない?
西山:ほかには、著作人格権について質問がありました。
鈴木:ほう、それは?
西山:要は、『トレーニングに自分の作品が使われた結果、例えば自分の作風が望んでいない形で使われた場合、著作者の人格が傷つけられるのではないか』、という懸念ですね。
鈴木:これもごもっともな質問ですね。
西山:Fireflyは、Do Not Train、と言うタグをつけることができて、作者の側が望まないのに学習されてしまった、ということがないように考えていますね。
鈴木:チョイスは著作権者側にある、と。
西山:画像そのものじゃなくても、作風を真似されたくない、っていう作者もいると思うんです。アドビではそういう声があることも考えています。
鈴木:なるほど、他に質問は?
質問5:Fireflyお値段は?
西山:お値段ですね(笑)
鈴木:もう買う気満々ですね(笑)ありがたいです。
西山:結局これも、まだ製品化の発表がされていないので、どういう形になるかは回答できなかったので、もう少しお待ちいただきたいです。Photoshop Elementsには対応するのか、という質問もあって、同じく製品化まで回答は待っていただきました。
質問6:コマンドがうまくFirefly側に理解されなくて、プロンプトの入れ方にコツはある?
鈴木:ほかには?
西山:すでにFireflyを使っている方から、『コマンドがうまくFirefly側に理解されなくて、プロンプトの入れ方にコツはありますか?』というのが。
鈴木:えーと、確認ですけど、これって80%が70歳以上のメロウ倶楽部の方たちですよね?普通にアドビユーザーの会みたいですね。
西山:みなさん好奇心旺盛なんです。そして写真とかも楽しまれているようですね。
鈴木:カッコイイですねー。で、回答は?
西山:実はFireflyのベータサイトに、ユーザー同士が情報交換するDiscordへのリンクがあるんです。日本語のコミュニティもあるので、そこをご案内しました。
質問7:Fireflyは子どもの教育に使えるんじゃない?
西山:後半になって、ちょっと興味深い質問というか、コメントをいただきました。これは教育にいいね、と。
鈴木:はて、教育とは?
西山:Fireflyは有名キャラクターの名前を入れても、あえてそれを生成しない仕組みになっているじゃないですか。著作権に触れてしまわないように。
鈴木:はいはい
西山:その方が言うには、キャラクターの画像が出ないのはなぜか、著作権的になにが問題なのか、有料で使わないといけないケースもあるとか。そういうものを学ぶのにも使えそうだ、と。
鈴木:あー、著作権教育みたいな。確かに他人の作ったコンテンツを正しく利用する勉強になるかもですね。
質問8:人間は何をもって、それが猫であると認識しているの?
西山:最後に一個すごい質問がありました。
鈴木:まだなんかあったんですか?
西山:生成AIが(これは猫だ)と認識している話から、『人間は何をもってそれが猫であると認識しているんだろう』、と言う質問です。
鈴木: ・・・ちょっと哲学的な話。
西山:確かに、葛飾北斎が書いた猫と、写真の猫は、実際のデータとしての情報は全然違うものなんですよね。ただ、人間は結構デフォルメされているものも猫と認識できる。そこが理解できないとAIが猫らしきものを生成することもできないだろう、というご指摘だと思います。
鈴木:私そんなこと考えたこともありませんでした。
西山:その流れで、ネズミの絵を描くプロンプトにpainted by Picassoって入れてみたんです。
鈴木:ほう。ピカソが書いた風にして、と。その結果は?
西山:これをキュビズムと呼ぶのかというと、ちょっとわからない結果でした。これも、ピカソの絵ってこうだよね、と人間が思うときに、どこを見てそう思うかをAIが理解する必要があるんです。
鈴木:ピカソと言っても青の時代とか、どの時代のピカソを言っているかは人によりますからね。
西山:なかなか興味深いご指摘をいただき、こちらも刺激をいただいた会でした。
Adobe Fireflyについて貴重な意見をくださったメロウ倶楽部の皆さん。 ITとかテクノロジーはとかく若い人がやること、というイメージが強いですが、それは勝手な思い込みであると今回改めて学びました。ご年齢にかかわらずテクノロジーに好奇心を持つ姿勢と的確なご指摘は、どのような人生のステージでも社会に参加し、貢献できることを体現されていたように思います。誰もが参加できる優しい社会、そこに我々テック企業はどう貢献できるのか、あらためて未来についてもっと考えてみたいと思いました。
アドビ未来ラボ研究員
鈴木 正義
▼アドビ未来デジタルラボとは何?そんな風に、気になった方は、こちらをご覧ください。
▼記事の中で、イベントの振り返りを行った西山・鈴木も参加するアドビ未来デジタルラボ初回の様子はこちらから