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年甲斐もなく


「年甲斐もなく」という言い方は、あまり好きじゃない。

年齢を基準に、その人の可能性を奪うように聞こえるから。

「あなたはもういい歳なんだから、そんなことしない方がいい」

と、暗に言われているようで気分が悪い。

私は、普段そんなこと考えたことがないから、

改めてその言葉にドキッとした。



それを言ったのは私の友人で、私とは同世代だ。

彼女には着たい服があったが、

そのデザインが若作りに思えるので

「この年齢で、年甲斐もなく若い子が着るような服を

着るのはおかしくない?」と私に相談してきたのだ。

スマホの画面をスクロールして、その気に入った服を

見せながら「一応相談してから、買うべきかどうか

決めようと思って」と彼女は話した。

そこに写っていた服は、シンプルで機能的で、いかにも

彼女に似合いそうな色とデザイン。


「似合うと思うよ~。これは絶対買うべき」

そう言ったら

「あ~!やっぱり、相談してよかった」と、安心したように笑った。


彼女の背中を押せたのは良かったが、

「年甲斐もなく」というのが引っかかる。


日本人には、昔からそういう年齢の縛りがあるのか

なんでも年相応がいいとされている。


でも、年相応って一体誰が決めるの?

人それぞれ年齢に対する感覚や歳の取り方

似合う服だってひとり一人違うのに、

「この年齢ならこの服装」と一括りにするのは

どう考えても無理がある。

というか、何歳でも着たい服を着ればいいのに。

いい歳だから、この服は似合わないなんて、

誰に決める権利があるのだろう。



不思議なことに、彼女は誰に言われた訳でもなく

勝手にそう思い込んでいた。

それでも、人が着ているのが素敵に見えたので

誰かのお墨付きが欲しかったようだ。

私に相談したら、たぶん「大丈夫」と

言ってくれそうだから相談したのだ。



こんなふうに、見えない誰か、たぶん世間の目を気にして

自分の行動に制限をかける人は多い。

それでは、まるで世間の為に生きているみたいだ。

そんなに気を使った所で、世間が一体なにをしてくれるのだろう。


どこまで行っても自己責任だから、自分の為に生きればいいのに。


限られた時間を自分の好きなことで

埋めていけたらいいと思う。


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