ティーレッガー先生の語源を追って
1.前置き
noteではツイッターで書き切らないフロムゲー考察を載せていく予定ですが、まずは自己紹介がてらこんな考察アプローチをしていますって話をします。
2.ティーレッガー先生(Mr. Tyr-Egger)
中学生時代、ティーレッガー先生という英語教師の授業に当たりました。太陽のようにまっきん金髪、筋骨隆々でピチピチTシャツとジーンズがトレードマーク。今思い返すと歌手のスティングに激似で、おまけに声もハスキーさが似ていました。
スティング本人だとさすがにハンサム過ぎるので↑画像をもう少しずんぐりむっくりさせてください。
この先生、厚顔無恥が半端なく、小テストで生徒が鉛筆カリカリやってる間にリュックから食パンを取り出してベジマイト(オージーだから)を塗ったくって、机に脚をのっけながら食べ始めるような人です。デザートにリンゴ丸ごと一個かじって、シャクシャクいうたびに生徒の笑いを誘っていました。日々ある小テストなので大したことないですが後で怒られるんだろうな、と思いながら一緒に笑っていました。
ティーレッガーは"Tyr-Egger"とつづります。分割すればティール-エッガーなのですが、リエゾンしてレッガーと発音していました。御多分に漏れず中二病全開の私は、Tyr-Eggerの字を見た時、「名前にハイフン?!」とその特殊性にときめいてすぐさま辞書で調べました。
辞書いわく、
・ティール(Tyr)「①北欧神話の戦神 ②フェニキアの古代都市 ③暴君(タイラント)という意味の頭3文字」
舞い上がりましたね。①ガン推しで、戦神が自分の名前に入るなんてなんて素敵かよ、と。おそらく染めていないナチュラルなまっきん金髪と桃色の肌と鍛え上げた体なだけに、単純脳の私はやはりエスニシティ(民族)は北欧なのだろうと決めつけて一人勝手にバイキングへの思いを馳せていました。
(あとヴァルキリープロファイルとかにも馳せてました)
・エッガー(Egger)は日英辞書には出てきませんでしたが、図書館で見た英英辞書には「①姓名 ②鶏。卵を産むもの」といった事が書かれていた記憶があります。
こちらは少々残念で(失礼)ただの名前かぁ、と。ですが②を無理くり持ってくる事で「戦神ティールの卵を産むもの」とか、わけのわからない解釈をしていましたね。
3.時はくだり…
結局、何も解決はしませんでしたが、名前の由来について考える癖がちょいちょいつきつつも、その思いを眠らせていました。
先月から、何年も止めていたツイッターを再開する事にしました(というかアカウントを作り直し)。前回とは違い、本当にフロムゲーを考える為だけに使いたかったのです。そこで、他の人のフロム脳を垣間見たときに、「同じツールでも、角度を変えればここまで詳細を調べられるのか」といたく感心しました。
こりゃ面白い、ツイッター再開して正解だ!
さて、私のフロム脳の角度は何かというと、英語の情報⇔日本語の情報を裏付けし合う…というアプローチです。言い換えればフロムゲーが英語版・日本語版とで異なる世界線だとするならば、その中でも重なり合った部分が全世界のユーザーにとって普遍性を帯びるだろう、という事です(なんのこっちゃだと思いますが、それを今後記事にしていくのかなと思います)
この方法にメリットを感じるのは、先月あたりから本当に感じていますが「英語のネットの海の方がはるかに深く広い」という事です。英語‐日本語だけでなく、英語はあらゆる言語と繋がっています。既にウェールズ語、ドイツ語、ラテン語系の文献の英翻訳に当たることができました。日本語訳はなかなか落ちていない、探そうと思っても少なくともネット上では難しい。
フロムゲー自体も、この広大な海に対応する懐の深さを持っていますし、いろんな考察があってなお底が見えません。
とりあえず、考察する人の界隈ではやや隙間産業的ですが、まだ主だって英語⇔日本語の情報を裏付けし合うアプローチがメジャーじゃないならやってみようと思った次第です。
4.アプローチを得た先で…
フロムゲーについて考える癖をつけていた最中、これまた違う角度からですが、私はイングランドサッカー=プレミアリーグが好きなんですが、注目している選手にこういう人がいます。
トレント・アレクサンダー=アーノルド(Trent Alexander-Arnold)
リバプールFC生え抜きの選手で、2019-2020シーズン首位独走を支えるサイドバックです。この記事を書いている今日、まだ21歳という若さで世界一にも輝いたチームのスタメンを張っています。
サッカーの事も語りたいですがここでは置いておき、もちろん着目すべきは彼のハイフンがついた苗字です。
数年前から知っている選手ではあるのですが、フロム脳で過ごしているこのタイミングでようやくティーレッガー先生の事を思い出しました。あの頃思った「名前にハイフン?!」が再び頭によぎります。
答えは、プレミアリーグの試合をよく実況されるスポーツ実況者の下田恒幸さんがご存知でした。
こちらはアーセナル所属のアレックス・オクスレイド=チェンバレンの呼び方問題に対する言及。「長いから実況時はチェンバレンだけで呼べばいいじゃん」ってリプに反応したものです。
そして続けて、
出てきましたね、アレクサンダー=アーノルド。
そうなのです、彼は父方・母方のどちらかがアレクサンダー家でどちらかがアーノルド家、という事なのです。(私が追えた情報では、彼の叔父が同じ元プロサッカー選手のジョン・アレクサンダーなのですがどっち方の親戚かまではわかりませんでした)
では、話をさかのぼり、Tyr-Egger。これはかつて私が唱えた「戦神ティールの卵を産むもの」からは程遠い話。苗字にハイフンをつけるという事は、先生自身の文化的な選択であり、またティール家とエッガー家の子、という証左なのでした。
答えはこれですが、もちろん未だ終わりません。ここからがフロム脳の要素になるわけです。
5.ティーレッガー考
ハイフンの仕組はわかった。では次はフロム脳に基づき、Tyrという苗字、Eggerという苗字についていくつか仮説を立ててみました。
ちなみに、「戦神ティール」と「卵を産むもの」は除きます。我ながら安直過ぎるので。うずく腕を抑えて中二病を捨て置くのだ…。
Tyr仮説①:ウェールズ語由来説(Welsh)
・動詞"torri"(壊す、刈り取る)の三人称単数未来/現在形
※ 英語ならbreak→breaksとなる形が、ウェールズ語ではtorri→tyrとなる
たとえば、Adamという名が、苗字になるとAdamsと成るように英語圏では、"S"をつけて複数形(=家族)を表すパターンがウェールズ語にも当てはまるならtorri→tyrも有り得るか。
Tyr仮説②:ノルウェー語の「書き言葉」由来説(Bokmål/Nynorsk)
・ノルウェーには2種類の「書き言葉」があります。日常会話ではあまり使われず、主として文章を書くときに使われる語句や語法のことだそう。日本語でいうところの「~奉り候」みたいなものでしょうか、いや使わないんですが。
・Tyrとは ①Bull(雄牛) ②Taurus(おうし座)
雄牛は良い線なのですが、はたして書き言葉が苗字になるものか…。
Tyr仮説③:チェコ人名由来説(Dynastie Přemyslovců/Czech)
・11世紀チェコ人によってボヘミア地方に築かれたプシェミスル朝の歴史書の中に、ネクランという王子が登場しますが、下記のような物語が記されています。
ネクラン(Neklan)は紛争の末、相手方のレヴィフラデツ城を包囲した。 平和主義者のネクランはこれ以上の戦いを望まず、城の主ヴラスチスラフ(Vlastislav)と和解しようとした。 しかし、彼の従者であり、ボヘミアの陣営で2番目に強いティール(Tyr)と呼ばれる戦士は、主君ネクランの鎧を貸すよう説得した。 ティールは鎧を纏い、ネクランに成り代わって戦争へ向かった。彼はかつてのアキレスのように奮戦した末に戦死したが、最終的には自陣が勝利し、城は彼の犠牲によって落ちたのだ。
大事なのは、北欧神話の戦神ティールとは違い、こちらは「歴史書」に記される実在した(かもしれない)話に登場する実在のティールである事。本当にこのような物語があったかは諸説あるそうですが、神ではなく現実世界の名が登場するのは非常に信ぴょう性が増すものです。
—―——以上が、『ティール』に纏わる仮説でした。この時点で結構息切れしています…。気が途切れる前に『エッガー』に移ります。
と、思ったのですがEggerについてはかなりわかりやすい情報がありました。
Egger仮説:低地ドイツ語由来説(Plattdüütsch)
記事そのものが非常に面白いのですが、注目していただきたいのは「アーノルド・アロイス・シュワルツェネッガー(Arnold Alois Schwarzenegger)」の項。
(ってかここにも出るのかアーノルド…!)
低地ドイツ語で「Schwarz」とは「黒」の意味で「Egger」とは「耕す人」の意味があります。
卵じゃなく野菜系の方だった…!Schwarz-en-eggerのenは形容詞的属格ですね。ドイツ語は素地がまったくないのですが、直訳すると「黒い(土地の/服の/肌の)耕す人」でしょうか。
確かに独-英翻訳サイトにも、
1.Egger, der ~
・harrower (=鍬で耕す人)
なるほど、かなり腑に落ちました。
もちろん現代英語による鶏の線も0になったわけではないです。でも、シュワちゃんの苗字についている実績は果てしなく大きい。
6.ティーレッガー解
ようやく材料が出そろいました。まとめてみます。
Tyr仮説①:〔ウェールズ語由来〕壊す、刈り取る(動詞の変化形)
Tyr仮説②:〔ノルウェー語由来〕雄牛、おうし座(書き言葉)
Tyr仮説③:〔チェコ語由来〕チェコの王朝に係った人の名前(語源的な言葉の意味は不明)
Egger仮説:〔低地ドイツ語由来〕鍬で耕す人
実質はTyrの説を決めるだけとなりました。
この中で個人的には③を選択します。歴史書のなかに登場するという実績は代えがたいのかなぁと考えています。
結論、こうなりました。
『ティーレッガー先生は、Tyr家[チェコ人系]/Egger家[ドイツ人系]の間に生まれ、自身の選択によって両方の姓を表記することに決めた』
※ こういう姓のつけ方をダブルバレルドネーム(Double-barrelled name)と言い、どちらの家系にも誇りを持ちたいという意味で人口が増えているそう。たしかにサッカー選手でも特に若手の間でこういう方々が今かなり多い印象です。
結果的にはドイツとチェコの隣国同士に収まりましたし、その点においても私は非常に納得感があります。なんだかカタルシスを得られました。
今考えれば「戦神ティールの卵を産むもの」ってまじでなにwwはずかしいわ
7.最後に
万一、ここまで読んでくださった方がいたなら本当に感謝です。
前置きで言ったように、こんな事をフロムゲー考察で今後やっていけたらよいなぁと考えています。この話をするよりも前に先立ってアイディアがいくつかあり、全部こなせたらようやくスッキリのかなと。
あと、本当にこのタイミングでとってもとっても重大な考えが浮かんでしまったのですが・・・あの時、先生に聞けばよかったんじゃね?
心が震えています。以上、お粗末様でした。
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