ショートエッセイ:グンマ―の生活 (14)ぐんまちゃん家というアンテナショップがあった
どうして、現在のグンマ―にはアンテナショップがないのだ。実に寂しいぞ。
あの、東銀座にあった「ぐんまちゃん家」だよ。のちに銀座の裏通りに移転した後の「ぐんまちゃん家」ではないよ。勿論銀座七丁目にあるという高級料亭「銀座つる」のことでもないよ。
東銀座の、歌舞伎座のお向かいにあった「ぐんまちゃん家」だよ…。
あんまり洗練されたショップではなかったけど、居心地が良かった。見ていて飽きなかった。グンマー発の野菜、漬物、様々なぐんまちゃんグッズ、グンマーに関する書籍など。レジでは神津牧場で作られた甘くて濃くて実に美味しいソフトクリームを売っていた。ソフトクリームを買って、階段を昇って二階に行き、並んでいるテーブルで銀座の街を見下ろしながら食べた。
そうこうしている内に、ぐんまちゃんの登場だ。1日に3回店舗前の歩道に出て、撮影会をやったり、お客さんと一緒にカメラに収まったりしてくれるのである。ぐんまちゃんはくるくる回ったりポーズを取ったり、子供と触れ合ったり、中の人は大丈夫なんだろうかと心配になるくらい、サービス満点であった。あんなに親しみやすいゆるキャラが当時いたろうか。今でもいないような気がするんだよなぁ…。
ぐんまちゃん家に行くとぐんまちゃんに会えた幸福な日々は長くは続かなかった。
ぶんまちゃん家の店舗は地の利が良すぎた。家賃が上がってしまったのである。
引っ越しを余儀なくされたぐんまちゃん家は、経営も見直しを迫られた。
銀座の一等地とはいえメイン・ストリートから一本入ったところに引っ越しを余儀なくされたぐんまちゃん家は、前よりオシャレな店構えになったものの、上品なたたずまいはどうもグンマーには似合わん(笑)。前の雑な賑わいが懐かしいなぁ、と思っていたら、コロナ渦のグンマー県の現知事、山本一太様の決定でぐんまちゃん家の銀座からの撤収が決まってしまったのである。
そういう訳で群馬県のアンテナショップは東京になくなってしまい、NHKのニュースサイトに「“家”をなくした ぐんまちゃん」などと書かれる羽目になってしまった。
勿論ぐんまちゃんにはそう簡単に会えなくなってしまった。
いろんな事情があるよね。でも、自分の県のアンテナショップがなくなることは、故郷の風が届かなくなるようで哀しい。
ぐんまちゃん家をおつぶしになった山本知事は、あろうことかぐんまちゃんをアニメにしてしまった。大きく口を開けて笑うぐんまちゃんのポスターはなんか違う。
ぐんまちゃんってのは、ぐんまちゃんをデザインした"ぐんまちゃんのお母さん"こと中嶋史子さんが「うれしい時にも悲しい時にもそっと寄り添える、みんなに愛されるキャラクター」とインタビューで仰っていた。そういうふわっとしたキャラだと思うんだよね。
おっと、ぐんまちゃんの話題になると、どうしても知事の悪口を言いたくなるのでこの辺にしておこう。
でも、今でも寂しい。