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ショートエッセイ:京都最強縁切り神社

京都は祇園、八坂通の南側に、ひっそりと不思議なエリアがある。
祇園の外れまで行くと場外馬券売り場があったり、ラブホ街だったり、小さな神社があったり、果ては小さな崇徳天皇御廟までもあり、何となく神秘的というか、うかつに足を踏み入れるのがためらわれるような雰囲気もあった。
ある時、高台寺へ行こうと思って東山安井のバス停を降りた。
振り返ると例の小さい神社がある。どういう神社かは解らないまでも、前から不思議な神社だと思っていたので、たまには一寸寄ってお参りしていこうかと境内に入った。

拝殿の手前に大きな石が鎮座している。白いお札が表面にびっしり貼られている。石の真ん中には奈良の大仏の鼻の穴くらいのサイズの丸い穴が開いている。
しかし私の目はたくさんぶら下がって風に揺れている絵馬にくぎ付けだった。私は絵馬を読みに走った。
「趣味が悪い」と言われそうだが、「今更何を」と言い返す他はない。
ワクワクしながら絵馬の一枚に触れると…。

「気に食わない嫁を追い出して下さい」

うわ、何じゃこりゃ!!

「隣人がアマチュア無線をやめますように」

この絵馬は、数枚連続して長々と隣人のアマチュア無線への不満が書き綴られていて、最早シリーズ化していた。

他にも、こういった濃ゆい願いが綿々と書かれた絵馬が、読み飽きるほど果てしなく吊り下げられているではないか。
(さすが京都、これが縁切り神社か…)
しかし私はこの神社が妙に好きになり、京都に友達が遊びに来ると良くここに案内したものだった。実に人間味のある神社じゃないか。

最後に訪れたとき、私は悩みを抱えていた。
酷いいじめに遭っていたのである。
神社に参拝して、ふと思いつき、初めてここでお守りを買った。
縁切りのお守りである。妙に可愛らしい。

途端にスーッとした。

絵馬も買い、恨みのたけを書き尽くした。
ますますスッキリして、これでもう大丈夫だとすら思えた。
事実、それからもいじめは続いたが、私自身が受け流せるようになり、無視できるようになった。

神に祈ることは、頭を一度空っぽにしてから再度働かせること。
絵馬に悩み事を書くことは、悩みを整理すること。
お守りは、ミニ神社。神社の清涼な空気を持ち帰るもの。

そしてこの神社の祭神が崇徳天皇というのも良い。
実の父親である鳥羽天皇、同母弟の後白河天皇と、確執に次ぐ確執の一生だった。最後は、讃岐の国に流されてそこで崩御した。
長いこと日本一の大怨霊扱いされていたが、彼は流罪地においても弟や朝廷を恨むことはなかった。本当は心やさしい苦労人だったのではないだろうか。

この神社の名を東山安井金比羅宮という。
ググると「京都最強の縁切り神社」として出てくる。
東山安井のバス停から本当にすぐのところにあって行きやすいので、お近くに来られた際は是非一度お訪ねを。
縁切り神社だけど癒し系です。

新しいパソコンが欲しいです…。今のパソコンはもう13年使っております…。何卒よろしくお願い申し上げます…。