部長様に願いを込めて
弊社は8月末が期末で、なんとか8月中に営業利益を上げるためにありとあらゆる施策を使って契約をもらえるように走り回っている最中である。
コロナのせいもあって、今期は最悪も最悪。営業利益なんて塵ほど出ていない。
ゆえに、弊社の我が部長様は焦っているとも見受けられる。
毎日毎日叱咤激励のお言葉が我々のメールリストに届いている。私たちはそれを開くこともなく、そっと左にスワイプして「既読」にしてしる。部長様、私たちはもう疲れているのです。営業どころではないのです。
◇◇◇
さて、皆様の職場に一人か二人はいらっしゃるであろう、「かまっておじさん」のお話をしましょう。
弊社にもたくさんこの「かまっておじさん」はいるのですが、私のいるフロア、いやむしろ私の課にいるおじさんには大変困っているのです。
かまっておじさんの特徴としては、
・同じ話を何度もする
・過去の栄光を引きずる
・昔の会社は…が口癖
・セクハラレッドカード経験済み
・声が大きい
ことが特徴に上げられる。とくにこのおじさん、困ったことに仕事ができる。できなければもっとやりようはあったのに…!
とかくこのおじさんに私たちは困っているのです。
一つ一つお話ししていくとするならば、まずこのおじさんはとにかくおしゃべりが大好きで大好きで。特に若い女の子を捕まえては何時間も話すもんだから、新卒で女の子が入ったらさっさと帰らせるために必死になっていました。
私自身、このおじさんと働いて3年目になるわけですが入社直後はまぁひどかった。全く定時に帰れない。なぜかこの人のおしゃべりのせいで2時間も会社にいる。おかしい。それが3か月ほど続きました。
3カ月もたつと、心が薄汚れてきたといいますか、新卒の金メッキがはがれたといいますか、「流す」ことを覚え始める。
「あーなるほどっすね」「あーね」「わかりますわぁ」これしかいわない。はたから見れば、おじさん社員VSモンスター新卒の会話かもしれない。しかし、こうでもしないと仕事もできずさらに言えば帰ることもできないのです……。
さて、私自身は特に問題もなく、何かあればすぐにおじさん本人に直訴するのですが、後輩たちがまだおじさんに慣れず、2年目に上がったものの仕事を押し付けられ謎の残業時間が増えているのです。
先輩に守られ逃げられていた新卒時代から、「流す」ことを覚えないといけないと教えてきたものの、気の弱さからなのかなかなか流せず、今現在も仕事を押し付けられているし、いつまでもおしゃべりに付き合わされている。
見方を変えれば、「世渡り下手な子」ではあるが、だからと言って不必要な仕事をしなければならない理由にはならないし、この状況が続けば最悪この子が退職することだって考えられる。
課長にも部長にも言ってはみたが反応はいまいち。
理由は、「成績がいいから」だそうだ。やりきれない。
◇◇◇
後輩は、「成績がいいから」を理由におじさんに一方的に仕事を押し付けられて、無駄な残業をさせられている。
やりきれない。本当に。やりきれない。
じゃあなにか、成績が良ければ何でもしていいのか。このおじさんは成績がいい課らを理由に2度もセクハラで厳重注意を受けており、さらにはほんの2カ月ほど前に、取引先の若い女性従業員に個人的にラインのアカウントを聞いた上にプライベートなことを送り、大クレームにもなった。
しかし、いずれも無罪放免だ。やりきれない。なぜなら、「成績がいいから」らしい。意味が分からない。
課長は、取引先の件についてはすべて内々で終わらせようと部長にすら報告をしなかったらしい。残念ながらわたしが勝手に報告させてもらった。
部長は寝耳に水だったようで、しばらく黙ったまま「その件に関しては直接聞く」といってそれ以上の話はしたくないようだった。(そもそも3年目のペーペーにそんな話されると思わないだろう)
もっと掘り下げればさらに出てくるが、なによりも私はこの人と働きたくないし、後輩にも働かせたくはない。できればどこかに飛んでいってほしい。本当に、すごく遠くに。
しかし、何を言っても多分この人はいつまでもこの場所で営業を続けるんだろう。
未来ある人材を育てるよりも目先の利益を優先させた結果、この会社の中間層がいなくなっていることにも気づかずそのままでいてくれと祈るばかりです。あーめん。
◇◇◇
お盆前には、後輩がほとんど事務所に来なくなった。
お声が大きく、話が長く、仕事を押し付けられることがわかっている人と働きたくないらしく、ついに完全テレワークに切り替えたらしい。
わたしも、彼がいない間は出社し、彼が来た瞬間に外へ出てお客様の様子伺いか自宅で作業に切り替えるようになりました。
今月末、私たちの会社は期末を迎えます。
期末前に、大きな人事異動があるようです。
お願いです、部長様。
静かで、落ち着いて、安心して、仕事ができる環境を私たちにお与えください。