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何の練習やりたい?
僕はある師に言われたことがある。「目の前の選手が『今、何を練習したい』と思っているのかをわからなアカン」と。
ただこちらがさせたい練習を「させる」だけなのか、それとも、選手が「今、したい」練習をさせてあげるのか。もちろん、後者の方がいいに決まってる。
「◯◯の練習がやりたい」ということは「◯◯がうまくなりたい」ということ。もちろんそれだけでなく、ただそれが楽しいから、という理由もあるとは思うけれど、、それはそれで大切な理由だよね。きっとそこにヒントも隠されてる。
チームやスクールで生まれるギャップ
でも、例えばチームやスクールで練習するとなると、当然そこは違う者同士が複数集まる場所な訳だから、どうしても「やりたい練習」にも個人差が生まれ、「やらなければいけない練習」にも個人差が生まれ、みんなが同じ練習をしたいと思ってることも、まずないはず。
それでも「何の練習やりたい?」と聞けば「◯◯やりたい!」とか答えは返ってくるだろうけど、皆が答えを返すわけでもない。そうなると答えたもん勝ち、もしくは声の大きい子の意見を採用したり。
もちろんその前に、そんな意見すら聞かずに指導者がただ自身のさせたい練習をさせる、というケースの方が圧倒的に多いのかもしれないけれど。
僕は、そこで生まれる「ギャップ」がとてももったいないと思います。
同じチームで同じ学年で同じ練習場所に集まってる同士だって、その時点でのレベル差もあるし成長発達具合も当然違う。サッカーへの理解度も違うでしょう。それなのに、全員同じ練習をやること自体がもう、大きなギャップを生んでしまう。
もちろんレベルの高い子はより高いチームへステップしていき、多くの子がなるべく同じレベル同士で普段からトレーニングできる環境が一番いい。でも草の根の街クラブや少年団ではそうでない環境のままプレーしている子が格段に多いし、上のステージへ行けるエリート選手のことは、僕は正直どうでもいい。そこはもう、Jクラブさん頑張ってよと言うしかない。
そうではない「普通」の子ども達をどう支えていき、成長させていき、サッカーを嫌いにさせず、負荷を与えすぎずに楽しませながらサッカーをしていってもらうかということに、きっと皆さん普段から苦悩しながら、子ども達とサッカーしているんだと思います。
もちろんチームでは皆で一緒に練習しなければならないし、そこで生まれるレベル差、ある子にとっては必要でも一方のある子にとっては必要ない練習となってしまうギャップ、その時点でその子にはまだ難しい練習をやらされる負荷というものを、指導者はしっかりと理解しながらやっていくしかないわけです。
なので冒頭に帰るけれど、上述した理由で、何の練習やりたい? という質問をチームやスクールで活かすのは、正直なかなか難しい。
でも 専属コーチならば、それができる。
高校生たちのこと
僕は『君だけのコーチ』という専属コーチの仕事を、6月から始めました。
まず連絡があったのが、悩みを抱える複数の高校生からの相談だった。
彼らの悩み、迷い、ニーズは当然一人一人違う。でもそれぞれに寄り添って話を聞いてあげて、君には今何が必要か、こういう意識に切り替えて、こういう考え方をして、こういう取り組み方をしてみたらどう?というアドバイスが、専属コーチならばじっくりとできる わけです。
もちろんチームの指導者でも一人一人にそういうふうに接してるよ、という方もいるでしょう。でも少なくとも、残念ながら彼らが所属するチームではそれが成されていない。だからこそ、僕のところに相談してきてくれたわけです。連絡をくれた高校生は地方の子ばかりだったから、実際に会って一緒に練習しているわけではなく、まだzoomで話すだけなのだけれど。でも近いうちに必ず、会いに行きたいと思ってる。
やりたいことが明確な7歳
先週から実際に会ってマンツーマンで一緒に練習し始めた小学一年生の子の例。
練習できるわけだから、彼には当然、まずあの質問をしました。
「何の練習やりたい?」と。
まだ7歳の彼は、横にいたお父さんの顔も見ず、ちゃんと自分で「ドリブル!」と答えてくれた。3月までは園児同士でサッカーしてて自分が断トツで上手かった環境にいたけれど、小学生になった今は一つ上の2年生とも一緒に練習してるから、2年生に負けて悔しいらしい。
現状とニーズがわかれば、あとはこちらがそれに応えてあげるだけだ。
彼の癖や現時点での体の使い方がどういう感じなのかは掴んでるから、もっとスムーズに体を動かせる方法と足の運びをトレーニングして、あとは目線や頭の中のこととリンクさせてあげるだけで、たった60分だけでも、彼のドリブルはガラリと変わった。
これからも一回一回、飽きないように手を変え品を変えながら、ワクワクさせながらレベルアップさせてあげたいと思ってるところです。
まとめ
「何の練習やりたい?」は、コーチの腕が試される最強の質問だし、専属コーチならば、それを実際に体現させてあげられる。
いろんな子の「やりたいこと」に応えてあげるために、自分もさらに自身の感性を磨き、知識や見地もアップデートしていかなければ。
もちろん、ただやりたいことだけをいつも練習すればいいというものでもない。やりたいことだけでなく、「今、君がどうしてもやらなければならないこと」も、一人一人に応じてちゃんと伝えられるように。それがセットで備わってこそ、専属コーチのアドバンテージだと思ってます。