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エンタメは非合理性を含めて楽しむもの

僕は某大手の小売店で働いていますが、何故こんなものが売れるのだろうという商品が結構あります。

代表的なものがチェキというインスタントカメラです。
昔で言うポラロイドですね。
これが非常によく売れまして、フィルムはいつもほぼ売り切れで
たまに入荷してもすぐ売り切れます。

スマホ全盛期の時代に何故こんなレトロなものが売れるのかというのが
不思議で調べてみたところ、取った瞬間印刷されて、それに対して
デコレーションを施すことで唯一無二の体験として物が残ることが
人気の理由だそうです。
携帯型のプリクラみたいな位置づけなのでしょう。
ホストクラブでも良く使われているらしいです。
スマホで取って携帯用のプリンターでも同じような事が出来ますが、
ボタン一つで印刷まで行くチェキと違って、工程が多く煩雑ですので
スマホ用プリンターはチェキほど人気がありません。

売り切れが頻発しているほど需要があるのだから、
メーカーはたくさん作れば良いじゃんと思うかもしれませんが、
多分メーカーはこういう不合理なものに生産ラインを増やすことに
ビビっていると思います。
というのも、機械メーカーというものは生活を便利にするために
機械というものを考えて作ってきたわけで、合理性を追求して
物を作ってきた歴史があります。
なので、今では非合理で過去の遺物となったインスタントカメラを
増産するという行為は今まで培ってきた合理性に反する事なので
及び腰になるのも無理もないかと思います。
今需要があるからと言って、生産ラインを増やしたら
飽きられてパタッと売れなくなったなんて事になったなんてことが
あり得るわけです。
日本は流行り廃りが激しい国でもありますので尚更で
非常にリスキーに思えます。
その点合理性を突き詰めた商品であれば最先端であるというだけで
売れる可能性があるわけで、そちらに注力したほうが合理的かつ
安全だと思えます。

ですが、よくよく考えると、僕らの世界は合理的なものだけ重宝されて
古い非合理的なものは駆逐されていっているでしょうか?
確かにそろばんという文化はもう確実に廃れていて、消えるのは時間の問題だと思います。これは合理性追求のための教育だったからです。
電卓がある以上もはや合理性が必要とされる場面では出る幕はありません。
しかし、書道や華道、絵画、スポーツなど、趣味やエンタメのありとあらゆるものが今だアナログで残り続けています。
銃がある現代で弓道が残り続けているのは、合理性のためにやっているからではないからです。
登山は登頂すること自体が目的ならばヘリコプターで行けばいいだけの話ですが、人は歩いて登頂することに意義を見出します。
歩いて登頂することが目的なので、ヘリで行くなんて論外なわけです。
そんな訳で人はコスパや合理性だけで生きているわけではありません。

人は生き残る事、仕事や競争においては合理性を重視しますが、
趣味において合理性は重視されません。

合理的見地から小売業は将来性が無いと言われています。
AMAZONが台頭してきて合理的な買い物ができるようになっていますし、
実際かなりの売り上げや需要を持っていかれていると思います。

いつAMAZONに淘汰されてもおかしくはないですが、僕が所属する店は売り上げがとても良いですしお客さんも多いです。
それは僕の店がAMAZONでは得られない体験を売りにしてるからだと
思います。
買い物における体験性、エンタメ性を重視していて、
それが買い物を一つのエンタメとしてみている消費者に
需要があるわけですね。

要は僕のお店は先に例に上げたチェキそのものなのです。
正直言って僕のお店は生きる上で必要なものはそれほど多くないです。
別に絶対必要ではないけど、あると人生に彩がでて楽しくなれるよね的な
ものばかりです。
なので売り場を歩いているだけでも楽しいし、
AMAZONでは得られない体験があります。
実物を見てみないと購入に踏み切れないような商品を揃えているので
来店する気になるし、じゃあ実物みたから買うのはAMAZONで買おうとなるほど大きなものは置いてないので、見てその場で買ったほうが良いものばかりです。
必要なものを安く買ったという節約感で満足を得るのではなく、
自分の人生を楽しくするためにお金を払う満足感を得られるような
商品とサービス内容です。
そこら辺の塩梅が上手くいってるので、売り上げが良いのだと思います。
実際、100円で機能的に満足できる文房具があるのに、
高級筆記用具もかなり需要があって売れています。
中高生の文房具へのこだわりは我々大人から見て理解不能なほど強く、
何千円もする文房具を我先にと買っていきます。
高級筆記は学校におけるステータスでもあるようです。
買い物はコスパばかりが重要視されているようで、趣味的な分野では
まだまだ合理性以上の価値が重視されているようです。

ただ、生活家電はコスパ重視が多く家電量販店はそこら辺が厳しくて、
値段が高いものになるほど店頭でものを見て、
買うのはAMAZONにしようみたいなことが起きやすいです。
スペックや機能だけである程度の満足が保証されているわけですから
わざわざ店に行く必要が無いものも多いです。
なので家電量販店を見てると、価格の面でものすごくAMAZONを監視していて、AMAZONと値段を揃えているものが殆どです。
店舗を展示場扱いされないようにかなり気を使ってるのを感じます。
それでも、僕は家電量販店でほとんど物を買わなくなりましたので、
家電量販店はそれだけで生き延びるのはかなり難しいだろうと思います。
家電というカテゴリ自体が合理性重視のアイテムですので
価格だけで勝負していたら生き残れず、お店でしか体験できないような
エンタメ性、店員によるガイド、サポートの充実などが必要だと思います。
合理性で考えたら絶対AMAZONには勝てません。

音楽もCDは売れなくなりましたし、音源そのものはYOUTUBEで無料で聞くことができるものが殆どです。
じゃあ、音楽産業はオワコンかと言われたらそうでもなく、
逆にライブやトークイベントなど、体験型のほうに需要がシフトしていて
グッズ販売などの売り上げのほうが利益が大きいなんて話も聞きます。

何が言いたいか要約すると。
人は生きるための買い物には合理性を追求するが、
人生を豊かにするための思い出作りにはお金を惜しまないという事です。
食べ物は1円でも安い所で買う事に固執しますが、
お気に入りのアーティストのライブにはいくらでも払うという事です。

労働も自動化されて、AIに仕事が奪われて労働者が必要なくなってしまうなんて心配がされていますが、AIで代替できないものはいくらでもあるし
事実YOUTUBEというその人にしか作れないコンテンツに人気が集中し
生計を立てている人が増えていることがその証左でもあります。
人間的な魅力が必要とされるコンテンツはAIに代替されることが無く
一定の需要を維持し続けるでしょう。
AIなどが制作過程をサポートすることはあっても、内容や企画そのものは
AIに代替されることは今のところないでしょう。
逆に言うとAIで大体できてしまうと思える分野、職種に関しては
早期に撤退するか、人件費をかけずにAIを最大利用して利益率を
あげるかの二択になると思います。

僕のお店は今のところ大丈夫ですが、正直この先どうなるかは
想像もつきません。
僕自身こういう業界に身を置いて会社員として収入を一か所に依存するのは危険ではないかと思っていて、リスク分散の一つとしてインデックス投資を始めています。
人が生き残るための労働は機械がやってくれる時代です。
そこを理解していないと生き残れないという時代です。
面白いですね。

でも、生き残るための戦略は必要ですが、生きる為だけに人は生きているわけではなく、人生を楽しむために生きているので、
人生を楽しむための出費は惜しむ必要はないと思います。
そしてこれからの需要は人が人生を楽しむための手伝いをする仕事に
人間的魅力がある人間が必要な時代になるでしょう。
趣味の時代の到来です。
SFで夢想していたような時代が現実となってきてますね。
現実化した夢は機械に任せて我々は次の夢を作っていくのでしょう。
何を求めてどこに向かっていくのか?
合理性と不合理を両方必要としている辺りが人間の面白い所です。
そういう事を観察し、考察し、予測することが楽しいです。
それでは、

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