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スケボーのお兄ちゃんは不良少年なのか?Z世代のスポーツPart-2
前回は、スノーボード、”スノボ”のことを書いたので、今回は、スケートボード、”スケボー”について書いてみた。
スケボー、やったことありますか?
筆者はあります。少しだけ。
きっかけは、
映画【バック・トゥ・ザ・フューチャー】
そう、マイケル・J・フォックス演じる主人公マーティが通学時に車から車をわたって、さっそうと街を駆け抜けていくあのシーン。
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団塊ジュニアの同世代なら、共感していただけるだろう。あの頃、テレビや映画で見るアメリカの情景には、誰もが”憧れ”を抱いていた。
すっかり感化された、当時、中1の筆者は、
ディスカウントストアで1番安いスケボーを3千円で買った。
さっそくマーティのマネをして、車につかまってみたが、田舎の軽トラではあの雰囲気が出ない。
しまいには、坂道の勢い余って転倒し、肘と頭をアスファルトに打ちつけてリタイア。
こうしてスケボー歴は早々に幕を閉じた。
イタイのはキライなのだ。
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あれから35年。
今年は、東京五輪2020の開幕から約1年にわたるオリンピックイヤー。
五輪初開催となったスケートボードで、
堀米雄斗選手(22)、四十住さくら選手(19)、西谷椛選手(13)らがキラ星の如く現れ、ゴールドメダリストに輝いた。
年が明けての北京冬季五輪スノーボードでは、
平野歩夢選手(23)が新王者になった。
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彼らに共通するのは、スケボー、スノボに代表されるアーバンスポーツ、エクストリームスポーツに幼いころから慣れ親しんだZ世代であること。
スポーツ競技というより、遊びで続けてきた要素の方が強い。お母さんやお父さんの世代も影響しているだろうか。我々、団塊ジュニア世代もそれに当てはまるかもしれない。
しかし、我々より上の世代から見れば、
小学生ならいざ知らず、中学・高校、20代になっても街でスケボーしている輩は、おしなべて
”不良”のレッテルを貼るだろう。
スケボー初心者で脱落した筆者でも、
少なからずそのイメージを持っていた。
そう、3年前あの光景を見るまでは...
筆者の住む街は再開発エリアで工事現場が多い。
その周りを散歩するのが日課なのだが、
早朝、スケボーを抱えたストリート系の10代によく遭遇した。
彼らが去ったその道の端っこには、
見慣れないものがひっそりと置いてあった。
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関心した。いや、感動した。
ここで、夜な夜な朝まで、スケボーを楽しむ少年たちの大切な練習道具だった。
しっかりした文面に、熱意も伝わってきた。
そう、彼らは、ただ、
スケボーの練習をしたいだけなのだ。
その場所が何とか見つかった。
それも、大人が認めてくれた場所だ。
もちろん、工事現場であっても私有地。
現場のおっちゃんたちは、黙認してくれているに過ぎない。それでも嬉しかった。
自分たちの居場所がある。
のび太やカツオが毎日遊んでいた
昭和の空き地を思い出した。
あの時代、大人たちは寛容だったのだ。
その1年後、工事は着々と進み、やがて商業施設が建ち、人と車の往来が生まれた。もうその頃には、彼らの姿も、あの練習台もなかった。
たまに道路で練習している姿も見かけたが、直後に決まってパトカーが駆け付け、それに気付くや、一斉にスケボーで立ち去るイタチごっこ。
それでもなぜか、逃げる彼らの表情は、
なんだか楽しそうだった。
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今年の夏。東京オリンピック。
耳にAirpodsを付けて、"ゴン攻め"
”ビッタビタ”に躍動する若きアスリートたち。
そこにはもちろん、
五輪二刀流”の平野歩夢選手もいた。
仲間の果敢なトライに、
惜しげもなく駆け寄って称賛する姿。
素晴らしい会場を準備してくれた大人へ、笑顔で感謝を述べる素直さ。
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もはや、見習うべきなのは、
我々オトナなのかもしれない。
スポーツといえど戦い。
目の前の敵は倒すべき存在。と教えられてきた。
でも彼らは違う。
ライバルたちと一緒に戦っている。
それは幼い頃から、多様性やボーダレスを享受し、勝利や名声を自分だけではなく、共に分かち合う共感性(シェア)を当たり前に持ち合わせた、Z世代特有のものかもしれない。
パトカーから逃げるスケボーキッズたちも、
オリンピックのメダリストたちも、
みんな同じ価値観で育っているのだ。
単一民族で永きにわたって
平和と発展を遂げてきた日本。
太古の昔から日本人は、
共に助け合い、分け合って生きてきた。
高度経済成長を経て、”共創”が”競争”に変わった。
所有することが価値の最優先に変わった。
1年間で2度のオリンピック。
スケボーやスノボーで彼らが見せてくれた空気は、令和のスタンダードになると確信している。
本日48歳、もう一度スケボー始めてみようかな。
Z世代が、おっちゃんの背中を押してくれた。
2022.2.22
Hacasse
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