見出し画像

【年齢と日本人: Part1】アメリカのおばあちゃん vs 日本のおばあちゃん

私は今、50歳です。年齢を気にすることはあまりありません。それは私は人生をずいぶん遅れてからスタートさせたからです。

私の人生は、一般の日本人のレールとは大きく外れています。
問題児だったADHDの子供時代を経て、
生まれて初めて真剣に勉強し始めたのは、結婚後の20代半ば。
30歳を過ぎてから公立中学の教諭となり、
40歳を過ぎてから、アメリカに駐在した際に米国大学院で特別支援教育の修士を取得し、帰国してから再び米国大学院で応用行動分析学(ABA)を学び、BCBAという認定行動分析士になりました。
いろんな新しい仕事やボランティアをしたり、ホームステイ、フィンランド&エストニア一人旅行をしたのも40代の時です。

日本の年齢中央値は48.4歳

日本の年齢中央値は48.4歳(worldometer, 2020)。まさに同世代です。世界の年齢中央値は30.9歳。と言うことは、世界基準で言えば、私はまだ30代そこそこってことです。人生100年だと考えると、50歳は折り返し点、一生を1日と考えれば、まだお昼になったばかり。楽しいのはこれからですよね。

今回は、私がアメリカで体験した「年齢を気にしない生き方」について、日本人と比較しながら書いてみたいと思います。そして国民性の違いを応用行動分析ABAで説明してみたいと思います。


【私が出会った】カリフォルニアのおばあちゃんたち

息子達が高校2年の夏休み、スタンフォード大学のサマーキャンプに2週間行くことになりました。彼らがカリフォルニアで夏を過ごすのが羨ましくて「私も!」と思い、生まれて初めてホームステイをすることにしました。

私がお世話になったのは、カリフォルニア州サンフランシスコに住むパトリシアというおばあちゃん。第一印象は、優しいおばあちゃんという感じでした。年齢を聞いてびっくり。84歳!
一軒家で一人暮らしをしていることにも驚きましたが、ホームステイを受け入れる元気があることにも驚きました。

パトリシアとともこ

パトリシアはよくソファでテレビを見ていました。そして
「私はインドア派だから、こうして家でテレビを見たり、編み物をしているのが好きなのよ」と。

私は「あ〜ぁ、こんなところで一人でずっとテレビを見てるなんてかわいそうだな。寂しいからホームステイを受け入れることにしたのかな?」なんて勝手な想像していました。

ところが、彼女はとんでもなくアクティブだったのです!

昼間はコミュニティセンターでポーカーをしています。
「私はギャンブルが大好きなの!」ととっても楽しそう。

しかも、来客が頻繁にあるのです。
それは日本でよくある「安否確認」のような行政の見守りサービスではなく、友達や家族がやってくるのです。
私が滞在中、パトリシアは友達と一緒に自宅で大きなパッチワークキルトを作成中でした。そして「これはコミュニティセンターのバザーに出すつもりなの。毎年すごく高く売れるのよ!」と大張り切りでした。

そして毎週末、小旅行に出かけていました。
「トモコ、私、金曜日から息子たちとネバダのカジノに行くことになったの。あなたを一人、家に残しておくのは申し訳ないから、ご近所さんを紹介するわ!何かあったら彼を頼ってね」と言って、隣のおじさんを紹介してくれました。「彼はとってもいい人なのよ!先日もうちの庭に大きな木の枝が落ちてきた時も、片付けてくれたの。」彼は「何かあったらボクに電話して」と言って、自分の携帯の番号をくれました。

「うわっ!すごいな…。息子さんたちとカジノ旅行に行くだけでも驚きなのに、ご近所さんとも何かあったら頼れる仲なんて…。」

また、私の滞在中に彼女は、ご家族全員を招いてのホームパーティも開催しました。ひ孫ちゃんも来て、とっても賑やかなパーティでした。
私が「何かお手伝いしますよ」と言うと、
「いいのよ、あなたも私のお客さんなんだから。それに孫たちは私のミートボールスパゲッティが大好きなの!だから自分で作りたいのよ!」というので、本当にお言葉に甘えて、ゲストとして参加させてもらいました。

翌週も、パトリシアはまた小旅行に出かけることになりました。
その時「実は、近所に私のSisterが住んでいるの。 私が留守の間、彼女があなたの面倒を見るって言っているわ。」「Sisterはアウトドア派で、今もテニスをしているのよ。私とは正反対なの」と言って、スポーティな元気なおばあさんを紹介してくれました。
Sisterは、
「まかせておいて!トモコ!一緒に楽しみましょう!
当日は車で迎えに行くわ。ちょっとドライブをして名所を巡ったら、あなたをうちに招待するわ。私たちはイギリス移民だから、あなたにイギリス式のアフタヌーンティを振る舞ってあげるわね」と。

わぁ、パトリシアのSisterは明るくて元気だなー。
近所に一人暮らしなんて、パトリシアと一緒には住まないんだな。
今でも車を運転したり、テニスをしたり、私を招待してくれたり、ドライブで遊びに連れて行ってくれるなんて!

この元気なSister をみて、私はてっきり「パトリシアの妹」だと思っていました。実は彼女は「姉」で、なんと87歳!
87歳のおばあちゃんが、一人暮らしで、車を乗り回し、テニスをするって??

パトリシアのシスターとともこ

当日は約束通り、彼女が車で私を迎えに来てくれました。そしていろんなところを案内してくれました。
車で走りながらいろいろ話してくれます。
「トモコ、見て!私、ここのネイルサロンに通っているの。ベトナム人がやっているんだけど、とっても丁寧なのよ」とか
「ここのネイルサロンは安いけど質が悪いの。とっても不潔で。もう行かないわ!」などなど。
とても87歳の会話じゃないな、と感じました。

家に到着すると、まずは素敵な家の中を案内してくれました。素敵なインテリアと古い写真、骨董品などが飾られていて、全く生活感のない、雑誌から切り抜いたような素敵なお家でした。
そうかと思えば、ずらーっと蔵書が並ぶ図書室のような部屋もありました。「私はアウトドア派だけど、読書も大好きなの。今でも2、3日に1冊は本を読んでいるの。図書館にも頻繁に通っているのよ。」

アフタヌーンティをいただきながら彼女が話します。
「20年前に夫が他界して、それからずっと独りよ。私たちには子供がいなかったから。トモコ、あなたは異性の友達がいる?これだけは言っておくわ!異性の友達は絶対に持っておくべきよ!私は異性の友達が多いの。たまに奥さんがヤキモチを焼くみたいだけど。そんな関係じゃなくて、ただの友達なのにね」と笑います。

そして「そうそう、私のテニス仲間に日本人がいるの。彼女も呼びましょう。仕事が終わればきっと来るわ」と言い、電話をかけ始めました。
その日本人の女性は高校生の娘さんと一緒にやってきました。
私はその女性と日本語でお話しをしている間、娘さんはおばあさんと英語で談笑しています。娘は爆笑しながら、”She is so funny (彼女はとっても面白いわ)!”と楽しんでいる様子。

「日本にこんなに気が若くて、社交的で、アクティブな80代後半のおばあちゃんがいるだろうか?」
パトリシアとシスターには、全く高齢者っぽいところが感じられないのです。

唯一おばあさんらしいところといえば、パトリシアはテレビで古いドラマを見るのが好きなことくらい。
ある日、
「トモコ、ちょっとこっちに来て。あなたにもこのドラマを見せたいの。
これは私の子供時代のイギリスが舞台なの。こんな感じだったのよ。ほら、この人が持っているバッグ、みんなこういうのを持っていたのよ」
などと懐かしそうに解説してくれました。
「あ〜、気が若いとはいえ、やっぱり昔を懐かしむんだなぁ」
と思いながら一緒に見ていました。

ドラマが終わり、天気予報になりました。
若いイケメン気象予報士が登場するなり、
”I think he is gay.” (私、この人ゲイだと思うわ)。
もぉ大笑いしてしまいました。

とにかく二人とも、感覚が若者と同じなのです。
日本にも80歳過ぎたおばあさんで、一人暮らしで、テニスをしたり、ホームパーティを開いたり、カジノ旅行に行ったり、どこのネイルサロンが良いとか悪いとか、この人はゲイかそうじゃないのかなど、そんなことを普段の会話で話す人はどれだけいるのかしら?


日本人のおばあちゃんたち

そんな体験をして、日本に帰国してすぐに、義理の母を訪ねました。

母は会話の節々で「もう歳だから…」を連発。
そして「体のどこが悪い、ここが痛い」「この前はOOの病院に行ってきて…」と体の不調の話ばかり。
そんな義母はアメリカのおばあちゃん達より10歳も若いのです。
こんなに違うのかー!でも、日本では、これが普通なんだよね。
私の母も義母と同じ感じです。
以前、テレビばかり見ている母に「本でも読んだら」というと、
「老眼で文字が見にくいから、読みたくてももう読めないの」なんて言っていたけど、確かあの頃はまだ60代だったような。パトリシアのシスターは87歳だけどね。

日本はアメリカに比べても長寿国で、これからも高齢者はどんどん増えていくというのに、この違いはなんだろう?
これで超高齢化時代を迎えて大丈夫なのだろうか?
将来を悲観し、自分の歳を嘆き、「もう歳だから」と言い訳の印籠をかざし、なんでも歳のせいにしてあきらめてしまう年寄りだらけの世の中になったら、日本はどうなってしまうのだろう?

次回:ABAで検証「なぜ日米のおばあちゃんはこんなに違うのか?」

日本とアメリカのお年寄りの違いを目の当たりにして「高齢化社会、人生100年時代を生きるには、日本人もアメリカのお年寄りのようにポジティブに生きるべし!」と言いたいところですが、言ったところでそう簡単に変われるモノでもありません。なぜ日本人は年齢を気にするのか? なぜこのような違いが生まれたのか?
次回Part 2では、応用行動分析学(ABA)を用いて、「なぜ日米のおばあちゃんの行動やメンタリティはこんなに違うのか?」を検証していきます。もしご興味あれば、そちらもどうぞ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?